かんなみ新地
かんなみ新地(かんなみしんち)は、かつて兵庫県尼崎市神田南通3丁目に存在した風俗街[2][3][4][5][6][7]。かんなみ街[8][1]とも呼ばれ、古くはパーク飲食街[9]、パーク街[9]、尼崎パーク[10][11]などとも呼ばれた。1950年頃から存在し[5]、2021年11月に全店舗が一斉廃業した[2][3][4][5]。
概要
[編集]青線[2]として1950年頃から[5]存在していた。名称の「かんなみ」は住所の「神田南通」(かんだみなみどおり)の転訛とされる[5][9]。また旧称の「パーク」は、かつて隣にあった映画館[9]あるいは芝居小屋[12]の「パーク座」に由来する[9][12]。
680平方メートルの敷地に実質2棟の長屋が建っており[4]、30店を超える性風俗店がそこで営業していた[4][5]。性風俗店の業態は飛田新地や松島新地などと同様の「ちょんの間」[3][5]と呼ばれるもので、飲食店の体裁を取って女性従業員による性的サービスを提供するものであった[2][13][14]。
廃業
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ニュース動画(現地映像あり) | |
尼崎市の「かんなみ新地」に営業中止の警告 - 2021年11月8日、サンテレビニュース公式YouTube |
2021年11月1日、尼崎市と兵庫県警尼崎南署が連名で風営法に基づいて「違法な営業をしているのであれば、直ちに中止するよう警告いたします」との警告書を出し、これを受けて各店舗は一斉に閉店した[13][14][3][2][5]。 その後11月16日・17日にはほぼ全店が布団や冷蔵庫などの備品を一斉に粗大ごみとして廃棄し、同地の飲食店組合であった「かんなみ新地組合」も11月23日までに解散したことにより、70年間に渡るかんなみ新地の歴史は幕を閉じた[3][15]。
長年の黙認状態を経てこの時期に廃業に追い込まれた要因としては、以下の事柄が指摘されている。
- 近年SNSや動画サイトによってかんなみ新地での売春の実態が広く世間に知られるようになり、市当局にとって黙認しがたい存在となったこと[16][17][18]。
- 尼崎市の掲げる都市整備や暴力団排除の方針[17]に反する存在であったこと[16]。
- 新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言の期間中に営業を再開し、近隣住民からの苦情が集まっていたこと[5][18]。
廃業後の動向
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ニュース動画(現地映像あり) | |
【いわくつき物件】市が次々購入『かんなみ新地一帯』『銃撃された暴力団幹部の家』...買い取る理由 - 2022年6月2日、MBS NEWS公式YouTube | |
【かんなみ新地】『二度とああいう街に戻さないために』違法店あった「かんなみ新地」を市が更地にして民間に売却へ...変わり続ける「尼崎の街」 - 2023年2月16日、MBS NEWS公式YouTube | |
尼崎市の違法風俗街「かんなみ新地」で解体工事始まる - 2024年1月23日、サンテレビニュース公式YouTube |
土地建物
[編集]廃業後に多くの店舗は退去したが、一部の店舗は合法な飲食店として営業を続けている[17]。
2022年5月末、尼崎市は跡地の土地建物を取得した上で、建物を解体して更地として売却する方針を明らかにした[4][5][6]。建物の多くが空き家となって治安上の懸念がある[4][5][6]ことに加えて、過去にかんなみ新地は摘発による閉店と後日の営業再開を繰り返しており、今後の復活を防ぐためには根本的な対策が必要だと市が判断したことによる[4]。
その後2022年7月の報道では、権利関係が複雑であるため、市による土地建物の買収計画が難航しているとも報じられた[19]。しかし2023年2月の報道では、買収計画が進み、地権者の8割が既に売却に合意したとも報じられた[7]。2023年11月には、全体の83%を市が取得済で2024年1月から一部区画の解体工事に着手すること[20]、および一部の区画については起業者向けに期間限定で無償貸与する予定であること[20]が発表された。解体工事は2024年1月18日に開始されている[21]。
従業員
[編集]廃業後、かんなみ新地の従業員の多くは近隣に存在する同業態の松島新地に移ったとされる[22]。
治安
[編集]2022年9月29日に、かんなみ新地の閉業以降に周辺の治安が悪化したと主張するネット記事が掲載された[23]。これに対して尼崎市は、市内の犯罪件数は減少しているとする反論コメントを10月1日に発表した[23][24]。
関連項目
[編集]- 遊廓
- 尼崎中央・三和・出屋敷商店街 - 近隣の商店街
- 稲村和美 - 同地が閉鎖された当時の尼崎市長
脚注
[編集]- ^ a b 「第32図」『ゼンリン住宅地図 兵庫県 尼崎市① [南部]202109』ゼンリン、2021年9月。ISBN 978-4-432-51487-8。
- ^ a b c d e 中塚久美子 (2021年12月28日). “尼崎の歓楽街「かんなみ新地」70年の歴史に幕 「無法地帯」に何が”. 朝日新聞デジタル. 2022年9月10日閲覧。
- ^ a b c d e 神戸新聞阪神総局 (2022年2月1日). “「直ちに中止せよ」戦後70年続いた街が、紙切れ一枚で消えた 兵庫「かんなみ新地」の最期を追った(1)”. まいどなニュース. 2022年9月10日閲覧。
- ^ a b c d e f g 広畑千春 (2022年5月31日). “旧「かんなみ新地」一帯、尼崎市が購入へ 風俗街の「復活」封じ、更地にして売却”. 神戸新聞NEXT. 2022年9月10日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 稲本千晴 (2022年6月4日). “【「かんなみ新地」尼崎市が土地取得へ】「飛田新地とは対照的…」尼崎の色街“かんなみ新地”で70年続いた「警察の黙認」が終わった“ウラの事情”《遊郭が一斉閉店》”. 文春オンライン. 2022年9月10日閲覧。
- ^ a b c 亀田早苗「旧かんなみ新地:旧かんなみ新地、再生へ 尼崎市 土地建物買い取り方針 /兵庫」『毎日新聞地方版/兵庫』2022年6月6日、19面。
- ^ a b “旧「かんなみ新地」2.7億円で取得、更地にして売却へ 残るバーやそば店に補償 尼崎市補正予算案”. 神戸新聞NEXT (2023年2月15日). 2023年2月19日閲覧。
- ^ 大沢瑞季「火災:兵庫・尼崎の飲食店街、2店舗が焼ける」『毎日新聞大阪朝刊』2010年8月23日、25面。
- ^ a b c d e 神戸新聞阪神総局 (2022年2月2日). “いたちごっこを続けながら、なぜ70年間も営業を続けられたのか 兵庫「かんなみ新地」の最期を追った(2)”. まいどなニュース. 2022年9月10日閲覧。
- ^ ヨシダヨシエ「暗血(あんち)万博絢爛火焔図」『映画評論』第26巻第6号、新映画、1969年6月、32頁、doi:10.11501/2255973。(オンライン版当該ページ、国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 「(関西レポート)阪神の赤い灯青い灯」『新評』第16巻第14号、新評社、1969年12月、130頁、doi:10.11501/1808088。(オンライン版当該ページ、国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ a b 井上 理津子 (2021年12月5日). “(2ページ目)「昔、現役やってんで」かんなみ新地で“営業”を続けるシャネル風ジャケットの知的ママの“身の上”と“妖艶な電気が灯っていた時代”《現地ルポ》”. 文春オンライン. 2022年9月25日閲覧。
- ^ a b “昭和の遊郭一斉閉店 尼崎「かんなみ新地」 営業70年で初の警告”. 神戸新聞NEXT (2021年11月3日). 2022年9月10日閲覧。
- ^ a b “営業70年 昭和の色街「かんなみ新地」消滅の舞台裏”. 産経ニュース (2022年1月3日). 2022年12月10日閲覧。
- ^ “戦後から70年、尼崎の色街「かんなみ新地」に幕 組合解散し風俗店廃業”. 神戸新聞NEXT (2021年11月23日). 2022年9月10日閲覧。
- ^ a b 神戸新聞阪神総局 (2022年2月3日). “一日にして消えた街、取材で見えた三つの背景 兵庫「かんなみ新地」の最期を追った(3)”. まいどなニュース. 2022年9月10日閲覧。
- ^ a b c 「「こんなに一斉に閉めるとは」市長、かんなみ廃業に手応え 「おにぎり屋さん、まっとうにやっている」」『神戸新聞NEXT』2021年11月25日。2021年11月25日閲覧。
- ^ a b 灯倫太郎 (2021年11月14日). “尼崎の色街「かんなみ新地」に営業中止警告!「70年続いたのにナゼ」の声”. アサ芸ビズ. 2024年2月2日閲覧。
- ^ 古野英明「尼崎の旧色街・かんなみ新地、再生多難 市が買収計画、複雑権利関係に足踏み」『産経新聞大阪夕刊』2022年7月5日、7面。
- ^ a b 広畑千春、中川恵 (2023年11月29日). “違法風俗街「旧かんなみ新地」1月に解体着手 警告受け21年一斉閉店 土地と建物、全区画の8割取得 尼崎”. 神戸新聞NEXT. 2023年12月7日閲覧。
- ^ “旧かんなみ新地 解体開始”. 読売新聞オンライン (2024年1月23日). 2024年2月2日閲覧。
- ^ 文春オンライン編集部 (2022年1月23日). “(2ページ目)料金は20分1万1000円 飛田新地に次ぐ規模の「ちょんの間街」大阪・松島新地に起きた2つの変化とは 近隣の「かんなみ新地」では一斉閉店も”. 文春オンライン. 2024年6月19日閲覧。
- ^ a b 浮田志保 (2022年11月4日). “違法風俗街「かんなみ新地」閉鎖1年 ネットを騒がせた「考察」記事に尼崎市が異例の反論コメント”. 神戸新聞NEXT. 2022年11月5日閲覧。
- ^ “かんなみ新地閉業後の本市の治安について”. 尼崎市 (2022年10月1日). 2022年11月5日閲覧。
外部リンク
[編集]- 廃業前の報道
- 秋山謙一郎 (2017年3月25日). “飛田新地より地味ながら“通”が熱視線「かんなみ新地」の猥雑”. ダイヤモンド・オンライン. JAPAN Another Face. 2021年10月23日閲覧。
- 大田将之、竹本拓也、村上貴浩 (2021年3月8日). “阪神間コロナ1年、影響ここにも【スポット編】かんなみ新地”. 神戸新聞NEXT. 2021年10月23日閲覧。
- 一斉廃業に関する報道
- 神戸新聞阪神総局「兵庫『かんなみ新地』の最期を追った」、まいどなニュース
- “「直ちに中止せよ」戦後70年続いた街が、紙切れ一枚で消えた 兵庫「かんなみ新地」の最期を追った(1)” (2022年2月1日). 2022年9月10日閲覧。
- “いたちごっこを続けながら、なぜ70年間も営業を続けられたのか 兵庫「かんなみ新地」の最期を追った(2)” (2022年2月2日). 2022年9月10日閲覧。
- “一日にして消えた街、取材で見えた三つの背景 兵庫「かんなみ新地」の最期を追った(3)” (2022年2月3日). 2022年9月10日閲覧。
座標: 北緯34度43分15.6秒 東経135度24分28.1秒 / 北緯34.721000度 東経135.407806度