さらば愛しき女よ
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『さらば愛しき女よ』(さらばいとしきひとよ、Farewell, My Lovely)は、アメリカの作家レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説。1940年刊。私立探偵フィリップ・マーロウを主人公とする長編シリーズの第2作目。
あらすじ
[編集]この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
刑務所から出てきたばかりの大男、通称、大鹿(ムース)マロイは、別れた踊り子の恋人ヴェルマを探しに酒場フロリアンを訪ねるが、酒場の主が何も答えようとしないので逆上して、再び殺人を犯し逃亡する。仕事で現場に居合わせてマロイと話しこんでいた私立探偵フィリップ・マーロウは警察に尋問されるが、マロイを捕まえたいならまずヴェルマを見つけろという自身の勧告を警察が受け入れないので、自らヴェルマとマロイを探し始める。その折に怪しげな用心棒の仕事がマーロウの元に舞い込む。マーロウもまたなぜか命を狙われる中、その依頼人や、ヴェルマがかつて居た酒場の元女主人などが殺されていく。事件が紛糾するなか、ついにマロイの居場所を突き止めたマーロウは、ヴェルマに会わせると言付けて、マロイを自宅に呼び出すと、彼を別室に隠す。そのとき現れたのは意外な人物で、真相が暴かれていく。
登場人物
[編集]- フィリップ・マーロウ
- ムース・マロイ
- 身長2メートル近い大男で、腕っ節が強い。ムース (moose) はヘラジカを意味する。銀行強盗で8年間オレゴン州立刑務所に服役する。恋人のヴェルマ・ヴァレントを探してセントラル・アヴェニューの黒人専用のレストラン兼賭博場「フロリアンズ」に立ち寄り、殺人を犯す。
- ヴェルマ・ヴァレント
- 踊り子。マロイの昔の恋人だった。
- ジェシー・フロリアン
- 白人専用のナイトクラブ「フロリアンズ」の元経営者マイク・フロリアンの妻。マーロウはヴェルマの情報を求めて彼女の元を訪れる。不潔で自堕落な生活を送り、アルコール依存症でもある。
- リンゼイ・マリオット
- マーロウの依頼人。モンテマー・ヴィスタに住む。盗まれた翡翠のネックレスを買い戻す一件で、マーロウに護衛を依頼する。
- アン・リオーダン
- 元ベイ・シティー警察署長の一人娘。フリーライター。
- グレイル夫人
- 富豪の若き未亡人
- ジェームズ・アムサー
- 霊能力者。
- セカンド・プランティング
- 体臭の強いインディアン。
- ソンダボーグ
- レアード・ブルーネット
- ナルティー
- 七十七番通り分署の刑事部長。
- ランドール
- ロサンゼルス中央警察署殺人課の警部補
- ジョン・ワックス
日本語訳
[編集]- 「別冊宝石43号 世界探偵小説全集10 チャンドラー篇」1954年12月に、『さらば愛しき女よ』収録。[日本語訳 1]
出版年 | タイトル | 出版社 | 文庫名等 | 訳者 | 巻末 | ページ数 | ISBNコード | カバーデザイン | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1956年3月 | さらば愛しき女よ | 早川書房 | 世界探偵小説全集 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)247 |
清水俊二 | 229 | ||||
1972年6月 | レイモンド・チャンドラー | 早川書房 | 世界ミステリ全集5 | 清水俊二 | 748 | 清水訳で他に 『長いお別れ』 『プレイバック』を収録 | |||
1976年4月 | さらば愛しき女よ | 早川書房 | ハヤカワ・ミステリ文庫HM 7-2 | 清水俊二 | 解説 稲葉明雄 | 365 | 978-4150704520 | カバーフォーマット:辰巳四郎、 カバーデザイン:ハヤカワ・デザイン |
電子書籍も刊、2012年9月より |
2009年4月15日 | さよなら、愛しい人[日本語訳 2] | 早川書房 | 単行判 | 村上春樹 | 375 | 978-4152090232 | |||
2011年6月5日 | さよなら、愛しい人 | 早川書房 | ハヤカワ・ミステリ文庫HM 7-12 | 村上春樹 | 訳者あとがき | 477 | 978-4150704629 | 坂川栄治+永井亜矢子 (坂川事務所) |
電子書籍も刊 |
映画化
[編集]- The Falcon Takes Over
- (RKO、1942年)日本未公開。監督=アーヴィング・ライス、脚本=リン・ルート、フランク・フェントン、主演=ジョージ・サンダーズ。
- マイクル・アーレンのキャラクター、冒険家のファルコン(本名はゲイ・ローレンス)を主人公とする映画シリーズの3作目であるが、そのプロットはこの小説に基づいている。
- ブロンドの殺人者 (Murder, My Sweet)
- (RKO、1944年)監督=エドワード・ドミトリク、脚本=ジョン・パクストン、フランク・フェントン、主演=ディック・パウエル。
- タイトルが小説の原題から変更されたのは、恋愛映画と間違われないようにするためとされる(結果を暗示しているタイトルになった)。TV放映邦題「欲望の果て」。
- さらば愛しき女よ (1975年の映画)
- (アヴォコ、1975年)原題通りに2度目の映画化。監督=ディック・リチャーズ、脚本=デイヴィッド・ゼラグ・グッドマン、出演=ロバート・ミッチャム、シャーロット・ランプリング。「ロッキー」でブレイクする前のシルヴェスター・スタローンが端役で出ている。1976年日本公開、「キネマ旬報」外国映画14位、読者選出で10位に入った。
ゲーム
[編集]- 超名作推理アドベンチャーDS レイモンド・チャンドラー原作 さらば愛しき女よ
- 2009年5月28日にフリューよりニンテンドーDS用として発売された。途中の選択によっては、本筋と異なるストーリーを見ることも可能。フィリップ・マーロウの声はものまねタレントの山本高広が担当。
注釈
[編集]- ^ 『さらば愛しき女よ』、『スマート=アレック・キル』、『大いなる眠り』収録。
- ^ 村上春樹は「訳者あとがき」でチャンドラーのベスト3を選べといわれたら、多くの人が『ロング・グッドバイ』『大いなる眠り』『さよなら、愛しい人』を選ぶのではないかといい、チャンドラーのほかの小説にもいえる「作家としての懐の深さと、圧倒的な文章力」に加え、「人物の描き方の鮮やかさも、この小説の魅力のひとつである」と書いている。
関連項目
[編集]- 清水義範 - 『主な登場人物』でこの作品の「主な登場人物」一覧から勝手にストーリーを作ろうとした。