時雨蛤
時雨蛤(しぐれはまぐり)は、むき身にした蛤の佃煮の一種。蛤の時雨煮。「志ぐれ蛤」と表記されることもある。三重県桑名市の名産とされる[1]。
概要
[編集]時雨蛤はボイルした蛤のむき身を、生引溜(きびきたまり)を沸騰させたハソリ(大鍋)に入れ、「浮かし煮」と呼ばれる独特な方法で煮て作られる[2]。その際、風味付けに刻んだ生姜を加える[2]。
もとは「煮蛤(にはまぐり)」と呼ばれたが、松尾芭蕉の高弟、各務支考が「時雨蛤」と名付けたと言われている[3]。蛤業者の初代・貝屋新左衛門が、近くに住む俳人の佐々部岱山(ささべたいざん)に煮蛤の命名を依頼したが、佐々部から相談を受けた師匠の各務支考が、10月の時雨の降り始める頃から煮蛤が製造されるため、時雨蛤と命名したとされる[4][5]。
時雨蛤の発祥は揖斐川河口の赤須賀漁港(桑名市)近辺で[4]、江戸時代の元禄年間(1690年頃)から製造されるようになった[6]。時雨蛤にすることで蛤の風味とともに保存性が高まり、土産物として全国的に高い人気を誇った[6][7]。日本各地の名産の製造方法等を調査した『日本山海名産図会』(1799年刊)や、諸国の名物珍味を紹介した料理書『料理山海郷』(1749年刊)に桑名の名産として時雨蛤が紹介されている。
民謡
[編集]桑名の殿様の中で、『桑名の殿さん、時雨で茶々漬け~』と唄われている。
製造業者
[編集]現在桑名市には貝新を名乗る製造業者5社(貝新新左衛門・貝新水谷新九郎・新之助貝新・貝新新七・貝新フーズ)の他に、貝藤・貝増・貝繁・貝順・伊勢志ぐれ・瑞宝しぐれ等の製造業者があり、東海や関西の百貨店やスーパーに出店している。
四日市市には、喜多八時雨本舗・貝義本舗・村上時雨店・貝増支店・貝新商店がある。 また、貝新商店は2015年1月に名古屋市中区錦に『天然はまぐりしゃぶしゃぶ・貝新商店』を出店している。
また桑名から東京へ進出して、現在では東京に本店がある製造業者(銀座新之助貝新・日本橋貝新)もある。
そのまま食べる事もあるが、ご飯の上に時雨蛤を乗せ、出汁で煮出した番茶を掛けて食べる料理が、桑名の俗謡「桑名の殿さん」にも謳われている茶々漬けであろうと言われ、人気の調理法である。
備考
[編集]時雨蛤を生産している業者は同じ製法により、あさり時雨、しじみ時雨も生産している。また白魚紅梅煮も桑名名物として有名である。
関連リンク
[編集]【桑名市】
【四日市市】
【川越町】
【東京都中央区】
脚注
[編集]- ^ “桑名の特産品”. 桑名市物産振興協会. 2010年4月25日閲覧。
- ^ a b “時雨蛤の製法”. 総本家貝新. 2010年2月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年5月9日閲覧。
- ^ “コピーライターは松尾芭蕉の弟子だった!”. 総本家新之助貝新. 2009年6月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月27日閲覧。
- ^ a b “美し国 みえの食文化” (PDF). 三重県. p. 82. 2010年4月25日閲覧。
- ^ “桑名名産志ぐれ煮について”. 伊勢志ぐれ. 2022年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月25日閲覧。
- ^ a b “時雨蛤”. 三重北勢地域地場産業振興センター. 2010年4月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月25日閲覧。
- ^ “志ぐれの誕生秘話”. 総本家新之助貝新. 2009年6月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月27日閲覧。