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シマリス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
しまりすから転送)
シマリス
シマリス Tamias sibiricus
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネズミ目(齧歯目) Rodentia
亜目 : リス亜目 Sciuromorpha
: リス科 Sciuridae
亜科 : ジリス亜科 Xerinae
: マーモット族 Marmotini
: シマリス属 Tamias
学名
Tamias
Illiger1811
和名
シマリス
英名
Chipmunk

シマリス(縞栗鼠、Tamias)は、哺乳綱ネズミ目リス科シマリス属に分類されるリスの総称。

日本では、その中でも特にアジアに分布し、亜種が日本国内にも生息するシベリアシマリス英語版を指してシマリスと呼ぶ。

体の背側と顔部分に縞があり、頬袋をもつ小型のリスである。シマリス属には24-25種が属しており、アジアのシベリアシマリスを除き、すべての北アメリカに分布する[1]

分布

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シマリス属の大部分が北米大陸に分布し、シベリアシマリス(亜種チョウセンシマリスエゾシマリス)だけが、ユーラシア大陸から東アジアにかけて分布する[2]

形態

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頭胴長12-19センチメートル、尾長8-11.5センチメートル、体重70-120グラム[3]。 背中と顔に縞がある[2]。頬の内側には頬袋があり、木の実などたくさんの食糧を詰めて巣穴に運ぶことができる[4]

生態

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昼行性で、単独生活を営む。樹上性リスと地上性リス(ジリス)の中間のタイプで、樹上と地上の両方で生活する。木の上も地面の上も行動範囲で、樹洞や地下に巣を作る[1]。樹木に登る際も地上を走る際も、動きは機敏であり、運動量は多い。巣穴の中では周囲に警戒する必要がないため、睡眠時間は1日平均15時間になると言われている[5]

さまざまな捕食性の爬虫類や鳥類、哺乳類に捕食される。威嚇や警戒、緊張の際に、尻尾の毛を立てて膨らませて振る動作(モビング)を行うときがあり、これには体を大きく見せ、威嚇する意味もある[6]

冬になると、トウブシマリスは冬眠するが、北アメリカ西部のシマリスは冬眠せず、巣穴の中の蓄えに頼る[7]。エゾシマリスは1年の半分近くを地下の巣穴で冬眠して過ごす[8]

人工飼育下ではペットのシマリス(体重約90 - 95グラム)が飼育小屋の境を齧ってキタリスの領域へ侵入し、自分より大柄なキタリス(体重約280グラム)に重傷を負わせた例がある[9]

食性

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手でつかんでナッツを食べている姿や、頬袋を餌でふくらませている姿などが有名であるが、実際には幅広い種類のものを食べている。 雑食性で、主に種子、ナッツ、果実を食べる[10][4]。ほかにも、草、根などの植物、キノコ昆虫、その他の節足動物イモムシ、小型のカエルなども食べる[10][4][11][12][13][14]

食物はほとんど地上で探すが、ヘーゼルナッツドングリなどの木の実を得るために木にも登る[10][15]。人間の周囲では、耕作された穀物や野菜、農地や庭の植物も食べるため、害獣とみなされることもある[10][16]

になると、多くの種がのための蓄えとしてこれらの食料を巣穴に集め始める。巣穴の中の1か所の食糧置き場に食料を集める種は、たいていになるまで巣の中で過ごす[10]。その他の種は、多数の小さな食料貯蔵庫を造る。

シマリスの木の実を収穫し貯蔵する習性は、苗木の定着に不可欠であり、生態系に重要な役割を果たしている。木と共生関係にある菌根を含むさまざまな種類のキノコを消費し、地下の胞子嚢果トリュフ)の胞子の分散のための重要な媒介動物となっている[17]

繁殖

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トウブシマリスは、年2回、春の初めと夏の初めに繁殖し、1回の出産で4-5子を生む[10]。 北アメリカ西部のシマリスは年1回繁殖する。子どもは生後6週間ほどで巣穴から出てきて、その後2週間以内に自立する[18]

分類

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通常シマリス属1属に分類されるが、Tamiasトウブシマリス)、Eutamiasシベリアシマリス)、Neotamias(残りのシマリス23種すべて)の3属、または3亜属に分類されることもある。これらの分類は任意のもので、20世紀のほとんどの分類学はシマリスを1属と位置付けてきたが、ミトコンドリアDNAの研究によって、3つのシマリスのグループ間の分岐が、マーモットジリスの遺伝的不同性に匹敵することが示されている[19][20][21][22]

属名のTamiasは、ギリシャ語の会計係や執事、家政婦を意味しており[23]、これは、冬に使用するために食糧を集めて貯蔵しておく習性による、植物の分散におけるリスの役割を指している[24]

日本のシマリス

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シマリス 滋賀県東近江市御池岳にて
鈴鹿山脈御池岳に定着したチョウセンシマリス Tamias sibiricus barberi

日本では、シベリアシマリス (Tamias sibiricus) の亜種であるエゾシマリス北海道に生息している。 また、大陸から移入したチョウセンシマリス (T. s. barberi) が本州から北海道にかけて定着し、とりわけ北海道においては固有種のエゾシマリスと交雑する恐れが出ており、外来生物法生態系被害防止外来種に指定されている[26]

飼育

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飼育ケージは十分な高さと底面積が必要で、最低でも50センチ四方、海外の文献には高さ1.2メートル以上のケージを推奨するものがある[27]。安心して寝る、危険を察した際に隠れる、餌を隠す、巣作りをするなどの本能的な行動のために巣箱を用意する[1]。後方回転や反復運動など、同じ動きを繰り返し行うのは、ストレスが過度にかかっている際の異常行動のひとつ(常同行動)で、飼育環境を見直し、ストレスの原因を取り除くことが必要である[1]

生後2か月以上の、離乳を終え十分に成長した子リスを迎える方が望ましい[1]。大人のリスも時間をかけて根気よく接することでそれなりに慣れてくるが、もとは野生動物で、慣れやすさには個体差がある[1]。性格も個体差が大きく、どちらの性別だから飼いやすい、飼いにくいとは一概には言えない[1]

寿命は、野生下ではおよそ3年ほどであるが、飼育下では9歳まで生きることが観察されている[28]

秋から冬にかけては、繁殖期や冬眠期の縄張り意識のために気が荒くなり、噛みつくなど攻撃的になるリスが多く[29]、この状態のシマリスはよく「噛みリス」と呼ばれる。それまでとても慣れていたシマリスが、ケージにぶつかるような攻撃をしてきたらそれは噛みリス状態である。噛みリス状態のシマリスがケージ外に出てしまった時は、軍手などではなく、溶接用の耐熱革手袋やスキー用のグローブで対応しないと噛みつかれて怪我をすることがあるので注意がいる。繁殖に関わるホルモンは光の周期に関係があるため、室内飼いでは繁殖期のタイミングが合わないことがある[1]

日本では、1960年代から広く飼育されるようになった[1]。北海道に生息しているエゾシマリスは、鳥獣保護管理法により、1994年から一切の捕獲および飼育が禁止されており[30][31]、ペットとして飼育されているのは輸入されたチョウセンシマリスである。

2005年感染症予防法第56条の2として「動物の輸入届出制度」が規定され、齧歯類の輸入規制が始まった[32]狂犬病皮膚糸状菌症などの感染症人獣共通感染症)を防ぐためにも、節度ある接し方を心がける、手洗いをする、飼育環境を衛生的に保つなどに気をつける[1]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j 大野瑞絵、曽我玲子 監修『ザ・リス―最新の飼育(エサ・住まい・接し方・医学)が全てわかる』誠文堂新光社、2005年。 
  2. ^ a b 大野瑞絵 2005, pp. 12.
  3. ^ 大野瑞絵 2005, p. 138.
  4. ^ a b c West Virginia Wildlife Magazine: Wildlife Diversity Notebook. Eastern chipmunk”. Wvdnr.gov. 2012年12月7日閲覧。
  5. ^ Jennifer S. Holland (2011年7月). “"40 Winks?" National Geographic Vol. 220, No. 1.”. National Geographic. 2014年4月11日閲覧。
  6. ^ 大野瑞絵 2005, p. 94.
  7. ^ Kays, R. W.; Wilson, Don E. (2009). Mammals of North America (2nd ed.). Princeton University Press. p. 72. ISBN 978-0-691-14092-6 
  8. ^ 大野瑞絵 2005, p. 16.
  9. ^ 鈴木 2005, p. 203.
  10. ^ a b c d e f Hazard, Evan B. (1982). The Mammals of Minnesota. University of Minnesota Press. pp. 52–54. ISBN 0-8166-0952-7. https://books.google.co.uk/books?id=sjoQK1bedB0C&pg=PA53&dq=eastern+chipmunk+mate&hl=en#PPA54,M1 
  11. ^ Eastern Chipmunk - Tamias striatus - NatureWorks”. Nhptv.org. 2012年12月7日閲覧。
  12. ^ Linzey, A.V.; NatureServe (2008年). “Tamias minimus”. IUCN Red List of Threatened Species. IUCN 2013. 29 August 2012閲覧。
  13. ^ Linzey, A.V.; NatureServe (2008年). “Tamias sibiricus”. IUCN Red List of Threatened Species. IUCN 2013. 29 August 2012閲覧。
  14. ^ Linzey, A.V.; NatureServe (2008年). “Tamias townsendi”. IUCN Red List of Threatened Species. IUCN 2013. 29 August 2012閲覧。
  15. ^ Chipmunk at Animal Corner”. Animalcorner.co.uk (2004年1月1日). 2012年12月7日閲覧。
  16. ^ Chipmunks | Living With Wildlife”. Mass Audubon. 2012年12月7日閲覧。
  17. ^ Apostol, Dean; Marcia Sinclair (2006). Restoring the Pacific Northwest: The Art and Science of Ecological Restoration in Cascadia. Island Press. p. 112. ISBN 1-55963-078-7. https://books.google.co.uk/books?id=CsGyhzFBjyAC&pg=PA112&dq=chipmunk+sporocarps&hl=en  トリュフは、シマリスや他の菌食性の哺乳類共進化した結果、空気中に胞子を分散させる能力を失った。
  18. ^ Schwartz, Charles Walsh; Elizabeth Reeder Schwartz, Jerry J. Conley (2001). The Wild Mammals of Missouri. University of Missouri Press. pp. 135–140. ISBN 0-8262-1359-6. https://books.google.co.uk/books?id=uEWl0ZM6DfUC&pg=PA140&dq=eastern+chipmunk+young&hl=en#PPA140,M1 
  19. ^ Wilson, D. E.; D. M. Reeder (2005年). “Mammal Species of the World”. 2007年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年6月27日閲覧。
  20. ^ Piaggio, A. J.; Spicer, G. S. (2001). “Molecular phylogeny of the chipmunks inferred from mitochondrial cytochrome b and cytochrome oxidase II gene sequences” (PDF). Molecular Phylogenetics and Evolution 20: 335–350. doi:10.1006/mpev.2001.0975. http://online.sfsu.edu/~gs/spicer/pages/spicerpdf/piaggio01.pdf. 
  21. ^ Piaggio, Antoinette J.; Spicer, Greg S. (2000). “Molecular Phylogeny of the Chipmunk Genus Tamias Based on the Mitochondrial Cytochrome Oxidase Subunit II Gene” (PDF). Journal of Mammalian Evolution 7 (3). http://userwww.sfsu.edu/~gs/spicer/pages/spicerpdf/piaggio00.pdf. 
  22. ^ Musser, G. G.; Durden, L. A.; Holden, M. E.; Light, J. E. (2010). “Systematic review of endemic Sulawesi squirrels (Rodentia, Sciuridae), with descriptions of new species of associated sucking lice (Insecta, Anoplura), and phylogenetic and zoogeographic assessments of sciurid lice”. Bulletin of the American Museum of Natural History (339). https://hdl.handle.net/2246/6067. 
  23. ^ Henry George Liddell; Robert Scott. (1940). A Greek-English Lexicon, revised and augmented throughout by Sir Henry Stuart Jones with the assistance of Roderick McKenzie. Oxford: Clarendon Press 
  24. ^ Snyder, D.P. (1982年). “Tamias striatus”. 2013年3月5日閲覧。
  25. ^ 大野瑞絵 2005, p. 13.
  26. ^ 要注意外来生物リスト:哺乳類・鳥類(詳細)- シマリス (Tamias sibiricus)に関する情報”. 環境省. 2014年4月11日閲覧。
  27. ^ 大野瑞絵 2005, p. 40.
  28. ^ Information on Chipmunks”. Essortment.com (1986年5月16日). 2012年12月7日閲覧。
  29. ^ 大野瑞絵 2005, pp. 89–90.
  30. ^ 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則(対象狩猟鳥獣の捕獲等の禁止又は制限)第十条”. e-Gov. 2020年1月10日閲覧。
  31. ^ 資料3-3 対象狩猟鳥獣の捕獲等の禁止の期間延長(規則第10条第1項)” (PDF). 環境省. 2014年4月10日閲覧。
  32. ^ 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 第56条の2 動物の輸入届出制度について”. 厚生労働省. 2014年4月10日閲覧。

参考文献

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  • Baack, Jessica K. and Paul V. Switzer. "Alarm Calls Affect Foraging Behavior in Eastern Chipmunks (Tamias Striatus, Rodentia: Sciuridae)." Ethology. Vol. 106. Dec. 2003. 1057–1066.
  • Gordon, Kenneth Llewellyn. The Natural History and Behavior of the Western Chipmunk and the Mantled Ground Squirrel. Oregon: 1943
  • 鈴木欣司『日本外来哺乳類フィールド図鑑』(初版発行)旺文社、2005年7月20日、202-209頁。ISBN 978-4010718674 

関連項目

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外部リンク

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