ねずみ返し
ねずみ返し(ねずみがえし、ラットガード、英: rat guard)とは、穀物などの食糧をねずみの被害から守るために、船舶の舫い綱や、倉庫などの貯蔵施設に取り付ける、ねずみ侵入防止用の器具のことである。
船舶のねずみ返し
[編集]船舶においては係留中、舫い綱を伝ってねずみが侵入する事を防ぐために、途中にねずみ返しを装着する。多くの場合円盤ないしは円錐型の金属製で、舫い綱に挟み込むように装着するための切れ目が設けられている。
-
船舶のねずみ返し
-
船舶のねずみ返し
電柱・送電塔のねずみ返し
[編集]電柱では、支線を伝ってヘビやつる植物が登り地絡事故(停電)が発生する場合があるため、ねずみ返し状のカバーが装着される例がある[1]。また送電塔の脚部に「ヘビ返し」として、ねずみ返し状の網を設置する例がある[2]。
-
電柱の支線に装着された、ねずみ返し状のカバー(写真中央、傘状のもの)
建物のねずみ返し
[編集]高床倉庫では、床を支える柱からのネズミの侵入を防ぐために、オーバーハング状のはい上がり防止の部材を付けた。この種のねずみ返しはヨーロッパや東南アジアなど世界各地の穀物倉庫に見られ[3]、日本では東京都の有形文化財である高倉(六脚倉)など、八丈島に現存する高床建物でも、同様のねずみ返しが見られる。
また、ネズミの爪が立たないように陶器などの部材を使用する場合もあり、奄美地方の高倉では柱に金属板を巻く工夫が見られる[4]。
高床ではない土蔵などでは、戸口に網戸を入れたり、板を立ててネズミの侵入を防いだ[3]。 新潟県では、梁などから縄で下げて食料を保存する場合、縄の中途に板を通して鼠害を避けた[3]。
考古資料では、高床倉庫の床下直下の柱の上方や倉の入り口に設けられ、方形、円形、楕円形の厚い板をはめ込む事例がみられる。弥生時代の登呂遺跡(静岡県静岡市駿河区)で初めて発見された円盤状の板が著名であり、静岡県伊豆の国市の山木遺跡では、その使用方法が明らかにされた[5]。民俗資料では、板材のみならず樹皮や土器などさまざまなものをねずみ返しとして使用している事例が確認されている[5]。
脚注
[編集]- ^ “鳥獣害防止用品”. 近畿電機. 2022年5月4日閲覧。
- ^ “停電防げ!ヘビ・カラス対策品 中電PG、送電鉄塔や電柱に設置”. 中日新聞 (中日新聞社). (2021年7月14日) 2022年5月4日閲覧。
- ^ a b c 宮崎玲子『オールカラー 世界台所博物館』柏書房 2009年 ISBN 9784760133895 pp.172-174.
- ^ (12)沖永良部の高倉(市重歴) - 川崎市立日本民家園、2017年5月26日閲覧
- ^ a b 田村・合田監修(2000)P.108
出典
[編集]- 大塚初重・戸沢充則編『最新日本考古学用語辞典』柏書房、1996年6月。ISBN 4-7601-1302-9
- 田村晃一・合田芳正監修『考古学探訪の基礎用語』山川出版社、2000年7月。ISBN 4-634-60880-4