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フタリシズカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ふたりしずかから転送)
フタリシズカ
1. フタリシズカ
(神奈川県丹沢山地、2007年5月)
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
: センリョウ目 Chloranthales
: センリョウ科 Chloranthaceae
: チャラン属 Chloranthus
: フタリシズカ C. serratus
学名
Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. & Schult. (1818)[1][2]
シノニム
和名
フタリシズカ (二人静)[5]、キツネグサ (狐草)[6]、サオトメバナ (早乙女花)[7]、ツギネグサ[8]、をにのまゆはき[4]、及己[9][注 2]

フタリシズカ (二人静、学名: Chloranthus serratus) は、センリョウ科チャラン属に属する多年草の1種である。の上部に鋸歯をもつ2–3対の対生し、1–5本 (ふつう2本) の花序をつける (図1)。花は花被を欠き、雌しべは白色の雄しべで包まれている。日本を含む東アジアに分布する。有毒であるが、中国では薬用ともされる[4][10]

和名の「二人静」は、2本の花序を能楽二人静』における静御前とその亡霊の舞姿にたとえたものである[12][13]

特徴

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横に這う短い地下茎 (直径約3ミリメートル (mm)) から直立が単生または数本叢生する多年草であり、高さ30–60センチメートル (cm)、茎は緑色で無毛[3][4][5]対生し、下部の3–4対は小型で三角形の鱗片葉であるが、上部の2–3対は大型の普通葉であり、節間は近接して 0.5–2 cm[3][4][5] (下図2)。普通葉の葉柄は長さ 0.5–1.5 cm、葉身は楕円形〜卵状楕円形、5–17 × 2-8 cm、表裏とも無毛で光沢はなく紙質、先端は尖り、基部は鋭形またはやや鈍形、葉縁には鋭い鋸歯がある[3][4][5] (下図2)。葉脈は羽状、側脈は6–8対[4]

2. 花序をつけたフタリシズカ
3. 花序
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3. 花序

ふつうの花 (開放花) の花期は4–6月、穂状花序がふつう頂生、ときに腋生する[3][5]。花序は長さ 2–6 cm、ふつう1–2回分枝する (その名のようにふつう2本であるが、ときに1本や3–5本)[3][4][5] (上図2)。特に花序が多数に分岐するものは、品種エダウチフタリシズカ (Chloranthus serratus f. prosperus Honda) とされることがある[4]両性花、先が尖った長さ 0.5–1 mm の三角状広卵形のに腋生し、花被を欠く[3][4]雌しべ子房の背側 (背軸側) に雄しべがついている。雄しべは白色、3個が合着し (1個の雄しべが3裂したともされる[14])、長さ 2–4 mm、半球状長楕円形で雌しべ上部を包んでおり (図3)、は黄色であり、中央裂片内側に2個の葯、左右の裂片にそれぞれ1個の葯がある[3][4][5]。雌しべの子房は卵形、長さ約 1 mm、柱頭は短い[3][4]。夏に、茎の下部の鱗片葉の葉腋から、数個の閉鎖花をつけた細い花序を伸ばすことがある[3]。果期は6–8月、果実は淡緑色、球形から倒広卵形、長さ 2.5–3 mm[3][4][5]染色体数は 2n = 28, 30[10]

花は蜜腺を欠き、アザミウマ類、ハナアブ類、甲虫類が花粉を採餌するために訪花することが報告されている[4]。また自家和合性であることも報告されている[4]

分布

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南千島北海道本州四国九州朝鮮半島南部、中国中南部に分布している[1][3]。低山、丘陵地の林床に生育する[4]

脚注

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注釈

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  1. ^ この学名は、長い間誤ってヒトリシズカに充てられていた[3][4][5]
  2. ^ フタリシズカの漢名であるが[10]、同属のヒトリシズカを指すこともある[11]

出典

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  1. ^ a b c d e f Chloranthus serratus”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年8月14日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “フタリシズカ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年4月4日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 米倉浩司 (2015). “センリョウ科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 52–53. ISBN 978-4582535310 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 大森雄治 (1999). “日本のドクダミ科・コショウ科・センリョウ科植物”. 横須賀市博物館研究報告 自然科学 46: 9-21. NAID 40003710131. 
  5. ^ a b c d e f g h i 林弥栄 & 門田裕一 (監修) (2013). “フタリシズカ”. 野に咲く花 増補改訂新版. 山と渓谷社. p. 22. ISBN 978-4635070195 
  6. ^ 狐草」『動植物名よみかた辞典 普及版』https://kotobank.jp/word/%E7%8B%90%E8%8D%89コトバンクより2021年8月13日閲覧 
  7. ^ 早乙女花」『動植物名よみかた辞典 普及版』https://kotobank.jp/word/%E6%97%A9%E4%B9%99%E5%A5%B3%E8%8A%B1コトバンクより2021年8月13日閲覧 
  8. ^ ふたりしずか (二人静)”. 跡見群芳譜. 2021年8月14日閲覧。
  9. ^ 及己」『動植物名よみかた辞典 普及版』https://kotobank.jp/word/%E5%8F%8A%E5%B7%B1コトバンクより2021年8月13日閲覧 
  10. ^ a b c Flora of China Editorial Committee (2008年). “Chloranthus serratus”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年8月15日閲覧。
  11. ^ はかなくも可憐な花「ヒトリシズカ」”. 養命酒製造株式会社 (2019年4月). 2021年8月14日閲覧。
  12. ^ フタリシズカ」『日本大百科全書(ニッポニカ)』https://kotobank.jp/word/%E3%83%95%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%82%BA%E3%82%ABコトバンクより2021年8月14日閲覧 
  13. ^ 岩槻秀明 (2006). 街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本. 秀和システム. p. 197. ISBN 4-7980-1485-0 
  14. ^ Kong, H. Z., Chen, Z. D. & Lu, A. M. (2002). “Phylogeny of Chloranthus (Chloranthaceae) based on nuclear ribosomal ITS and plastid trnL‐F sequence data”. American Journal of Botany 89 (6): 940-946. doi:10.3732/ajb.89.6.940. 

外部リンク

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