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みずがめ座ラムダ星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
みずがめ座λ星
λ Aquarii
星座 みずがめ座
見かけの等級 (mv) 3.75[1]
(3.57 - 3.80[2]
変光星型 LB[2]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  22h 52m 36.8772324702s[3]
赤緯 (Dec, δ) −07° 34′ 46.582981294″[3]
視線速度 (Rv) -10.46 ± 0.53 km/s[3]
固有運動 (μ) 赤経: 11.806 ミリ秒/[3]
赤緯: 34.967 ミリ秒/年[3]
年周視差 (π) 10.6766 ± 0.5672ミリ秒[3]
(誤差5.3%)
距離 310 ± 20 光年[注 1]
(94 ± 5 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -1.1[注 2]
みずがめ座λ星の位置(丸印)
物理的性質
半径 72 R[4][注 3]
質量 3.5 M[4]
スペクトル分類 M2.5 III Fe-0.5[5]
光度 269 L[6][注 4]
表面温度 3,639 K[6]
色指数 (B-V) 1.64[7]
色指数 (V-R) 1.42[6]
他のカタログでの名称
みずがめ座73番星, BD-08 968, FK5 864, HD 216386, HIP 112961, HR 8698, IRC -10588, SAO 146362[3]
Template (ノート 解説) ■Project

みずがめ座λ星(みずがめざラムダせい、λ Aquarii、λ Aqr)は、みずがめ座にある恒星である。黄道にとても近い位置にあるので、による星食惑星との接近が度々起こっている[8][9][10][11]視等級は3.8で、肉眼でみることができる。地球からの距離は、およそ305光年である[3]

特徴

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みずがめ座λ星は赤色巨星で、スペクトル型はM2.5 III Fe-0.5とされ、光度階級の後に続く指数は、軽度の金属欠乏を示す種族IIの恒星であることを意味する[5][12]

みずがめ座λ星は、ヒッパルコス衛星によって明るさの変化が確認されており、変光星総合カタログにも収録される変光星である。変光星としての分類は、不規則変光星のLB型であり、これは不規則変光星の中ではゆっくり変光する巨星が該当する[2]。変光のしくみは脈動と考えられ、光度曲線の分析から、変光には24.5日、32.0日、49.5日と3通りの周期があるとみられる[1]

みずがめ座λ星は、漸近巨星枝星とみられており、放射エネルギー源は炭素酸素からなると、それを取り巻くヘリウム水素の燃焼が起こる同心殻、という構造だと考えられる[13][14]

月による掩蔽の利用や、スペックル・イメージングによって、みずがめ座λ星は繰り返し視直径の測定が行われているが、その際に、0.53離れた位置に暗い恒星がみつかった。その恒星は、異なる波長でのみずがめ座λ星との等級差の比較から、質量太陽の1.2倍程度、スペクトル型がF5 VのF型主系列星と予想され、みずがめ座λ星と物理的に結びついた伴星である可能性もある[4]

名称

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みずがめ座λ星には、ヒュドル(Hydor)という固有名があるとする者もあり、この名前はアメリカのアマチュア博物学者アレンによれば、ギリシャ語で「」を意味するὝδωρに由来するものである[15][16]

アレンはまた、インド占星術における星宿ナクシャトラにおいて、ヴァルナを守護神とするシャタビシャーが、みずがめ座λ星を中心とする星々であるとしている[16]

中国では、みずがめ座λ星は、防壁線を意味する塁壁陣拼音: Lěi Bì Zhèn)という星官を、やぎ座κ星英語版やぎ座ε星やぎ座γ星やぎ座δ星みずがめ座ι星英語版みずがめ座σ星英語版みずがめ座φ星英語版うお座27番星英語版うお座29番星うお座33番星英語版うお座30番星英語版と共に形成する[17]。みずがめ座λ星自身は、塁壁陣七(拼音: Lěi Bì Zhèn qī)つまり塁壁陣の7番星として知られる[18]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ 出典で示されているのは、角直径7.11ミリ秒であり、半径の数値は、年周視差10.6766ミリ秒を採用して計算した結果である。
  4. ^ 出典で示されているのは、光束3.92nW/m2であり、年周視差10.6766ミリ秒を採用して光度に変換している。

出典

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  1. ^ a b Tabur, V.; et al. (2009-12), “Long-term photometry and periods for 261 nearby pulsating M giants”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 400 (4): 1945-1961, Bibcode2009MNRAS.400.1945T, doi:10.1111/j.1365-2966.2009.15588.x 
  2. ^ a b c Samus, N. N.; et al. (2009-01), “General Catalogue of Variable Stars”, VizieR On-line Data Catalog:B/gcvs, Bibcode2009yCat....102025S 
  3. ^ a b c d e f g h lam Aqr -- Long-period variable star”. SIMBAD. CDS. 2018年12月6日閲覧。
  4. ^ a b c Dyachenko, V.; et al. (2017-06), “Lunar Occultation and Speckle Interferomerty of λ Aquarii with the SAO RAS 6-Meter Telescope”, Proceedings of ASP Conference 510: 336-339, Bibcode2017ASPC..510..336D 
  5. ^ a b Keenan, Philip C.; McNeil, Raymond C. (1989-10), “The Perkins catalog of revised MK types for the cooler stars”, Astrophysical Journal Supplement Series 71: 245-266, Bibcode1989ApJS...71..245K, doi:10.1086/191373 
  6. ^ a b c Mozurkewich, D.; et al. (2003-11), “Angular Diameters of Stars from the Mark III Optical Interferometer”, Astronomical Journal 126 (5): 2502-2520, Bibcode2003AJ....126.2502M, doi:10.1086/378596 
  7. ^ White, Nathaniel M.; Feierman, Barry H. (1987-09), A Catalog of Stellar Angular Diameters Measured by Lunar Occultation, 94, pp. 751-770, Bibcode1987AJ.....94..751W, doi:10.1086/114513 
  8. ^ 2007年の主な天文現象”. せんだい宇宙館 (2006年7月27日). 2018年12月7日閲覧。
  9. ^ 2016年の主な天文現象”. せんだい宇宙館 (2015年5月15日). 2018年12月7日閲覧。
  10. ^ 田中, 千尋 (2017年1月22日). “太陽系を撮る (8) ~海王星~” (PDF). 日々の理科. 2018年12月7日閲覧。
  11. ^ 2017年9月5日 海王星がみずがめ座で衝”. AstroArts (2017年9月1日). 2018年12月7日閲覧。
  12. ^ Keenan, Philip C. (1987-08), “Spectral types and their uses”, Publications of the Astronomical Society of the Pacific 99: 713-723, Bibcode1987PASP...99..713K, doi:10.1086/132036 
  13. ^ Eggen, Olin J. (1992-07), “Asymptotic Giant Branch stars near the Sun”, Astronomical Journal 104 (1): 275-313, Bibcode1992AJ....104..275E, doi:10.1086/116239 
  14. ^ Lattanzio, John C.; Boothroyd, Arnold I. (1997-03), “Nucleosynthesis of elements in low to intermediate mass stars through the AGB phase”, AIP Conference Proceedings 402: 85-114, Bibcode1997AIPC..402...85L, doi:10.1063/1.53325 
  15. ^ Kaler, Jim. “HYDOR (Lambda Aquarii)”. 2018年12月7日閲覧。
  16. ^ a b Allen, Richard Hinckey (1963), Star Names - Their Lore and Meaning, Dover, pp. 45-54, https://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Gazetteer/Topics/astronomy/_Texts/secondary/ALLSTA/Aquarius*.html 2018年12月7日閲覧。 
  17. ^ 陳, 久金 (2005), 中國星座神話, 台灣書房出版有限公司, ISBN 978-986-7332-25-7 
  18. ^ 中國古代的星象系統 (68): 室宿天區”. AEEA 天文教育資訊網. 國立自然科學博物館 (2006年7月7日). 2018年12月7日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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座標: 星図 22h 52m 36.8772324702s, −07° 34′ 46.582981294″