やけくそ天使
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『やけくそ天使』(やけくそてんし)は、吾妻ひでおによる日本のギャグ漫画作品。『プレイコミック』(秋田書店)誌上で1975年(昭和50年)1月11日号から1980年(昭和55年)1月10日号まで連載された。
続編として『やけくそ黙示録』がある(『マンガ少年』(朝日ソノラマ)1981年(昭和56年)2月号から5月号まで連載)。
解説
[編集]吾妻ひでおの代表作の1つで、全体的にパロディーネタやエロティックな雰囲気など、様々な要素を詰め込んだギャグ漫画でもある。
登場人物
[編集]- 阿素湖素子(あそこ そこ)
- 本作のヒロインでもあり主人公。作中では姓の「阿素湖」で呼ばれることが多い。初登場時は看護婦(白衣の天使)だったが、第一話で勤務先の病院をクビになり、以後、スチュワーデス、教師、専業主婦、家政婦、アイドル歌手、会社社長など、さまざまな職業を転々とする。連載中盤で結婚するが(ただし、三重婚の上入籍していなかった)、うやむやのうちに離縁している。とてつもないスケベ[1]で、徹底的に自由奔放、かつ自己中心的な性格のトラブルメーカー。傍若無人で天下無敵だが、なぜか相棒の進也にだけは頭が上がらない。女性でありながらエロ本を読んだり、股間で話す[2]等の習性がある。話が進むにつれて超能力者のような活躍をしたり、果ては不老不死になってしまう。分裂したりサイボーグ化を遂げたりなど、人外の能力をもつ、吾妻作品最強のキャラクター。終盤になると、虚無感に囚われて一度「うつ状態」になってしまった事がある。
- 最終回では往生際の悪さを発揮し、テレポーテーション能力を使って、『月刊プレイコミック』[3]に連載されていた『贋作ひでお八犬伝』(1979 - 80年)の世界に乱入、吾妻ひでお率いる「阿素湖討伐隊」と戦いを繰り広げた。また、『メチル・メタフィジーク』(1979 - 80年)には、本作のプロローグ的なエピソードがある[4]。他に『どろろん忍者』(1979 - 80年)、『チョコレート・デリンジャー』(1980 - 82年)などにも登場。
- 『やけくそ黙示録』では何の脈絡もなく若返り、女子中学生として登場した。血液型はO型。連載中に掲載誌が休刊したため、ファンからは、自分の掲載誌にすら容赦のない「まことに恐ろしいキャラクター」と(冗談で)評されている[5]。
- 作者は「このキャラあまりにも無敵なんで制御できなくなった」と評している[6]。
- 進也(しんや)
- 第4話から登場。素子の養子。初登場時は小学生で、途中で中学校に進学。素子とは違いしっかりしているが、トラブルに巻き込まれてしまう事も少なくなく、主にツッコミ役を担当。以前は両親と一緒に暮らしていたのだが、両親が駆け落ちしたため[7]孤児になってしまい、同じアパートの隣室に住んでいた素子に養子として引き取られる。素子とは親子というより姉弟のような関係で、素子のことを「おねーちゃん」と呼ぶ。名前の元ネタはあいざき進也。
- 『やけくそ黙示録』では中学校教師として登場。
- 吾妻ひでお(あづま ひでお)
- この漫画の作者。しばしば作中に登場して話をひっかきまわす。当時、アグネス・チャンの熱狂的なファンだったため、何度かアグネス・チャンを強引に作中に登場させている。
- 連載終了後はアシスタントと「阿素湖討伐隊」を組織し、他作品に逃亡した阿素湖を追跡している。
評価
[編集]みなもと太郎はエッセイ『お楽しみはこれもなのじゃ《漫画の名セリフ》』で、本作の名ゼリフとして、吾妻ひでおの「とーとつですが アルジャーノンに はなたばをあげてやってください」というセリフを取り上げ、「「とーとつですが」の前置きで科白の価値を見事に崩壊させている」と評している。当時、みなもとの仲間うちではこの科白が流行したという。[8]
サブタイトル
[編集]タイトル順、タイトル表記は秋田漫画文庫版に準拠。
- 白衣の天使
- どーしました?
- こげめがおいしいチン○焼き
- 誰ぞ進也に愛の手を
- 小学生もなかなか
- インラン1番 電話は2番
- 太めの恋のお話
- ウーワンワン キャウン
- 虹の彼方へ行ったきり
- ああ〜 野性が呼んでる
- ドキュメンタリー 麻雀大会
- 眠られぬ夜のために
- 海は広いけどシマリいいのよ
- くくく… 苦節25年
- ヒダ呼吸困難
- 銀行はお金持ち、して〜
- 空飛ぶ阿素湖 - 前編 -
- 空飛ぶ阿素湖 - 後編 -
- ドロン 今い、いくわ
- 大空の雀鬼
- つけものも生ものも好き!
- プッシーヘラヘラトーク
- チュチュチュ チュ〜
- 天翔るチン○追う阿素湖
- 天使の羽はどどめ色
- チン相みるならナメながら
- またまた天使
- 阿素湖 悶絶空手編
- あなたも闘魂 プロレス編
- みんな幻 ボクシング
- ヌルヌル星のプリンセス
- 今日もいくいく教育者
- 青春のタンパク質 しかも濃いめ
- 200号記念の夜はふけて
- 迷え! 子羊
- ちょっと売春
- やけくそ全部日記
- くくく…アグネス
- 美しき赤貝の歌
- 人類死すとも 阿素湖は死せず
- 台風 淫風 とりまぜて
- 脈路なき秋
- 運動するから運動会
- 文化なくとも文化祭
- スローモーション
- 夜と朝に摑まれ
- スキーもよいけどストックも
- きよしこの夜
- 吾妻先生おとくいのラブ♡コメよ!
- 「ジョ〜〜〜〜」
- 酸味スルドイチョコレート
- 街角にて……
- まだ生れてない阿素湖みどりのお話
- とくいのアグネスまんが
- 人格 かわり玉
- 結婚が恐くてオ○ンコできるかクソ
- 阿素湖がいっぱい
- そして誰もいなくなった チ○ポも
- 豪華! あらすじつき!
- 空をこえて
- じりじり自立
- 「スナックあそこ」大開店
- とーとつですが
- 阿素湖 地獄変 ずぶぶ
- 阿素湖 昔ばなし あああ
- タイムスナック
- くるか! 秋
- 阿素湖の肖像
- ウェイトレスです
- 秘境 北海道を行く
- 狭いと思えば狭い 広いと思えば広い
- 何でも出てくるサンタの袋
- あなたもわたしもスター・ウォーズ
- 飛行機もマックィーンもレッドフォードも手づくりよ
- 阿素湖一景
- 2.26も5.15も昔の話
- さらに時は乱れて
- 野菊の墓守り
- オレたちには明日があ〜る〜さ〜♪
- で た ら め
- これがうわさの天狗さし
- お気にメスまま
- 新創世記
- ぬにょろー
- 生きかえり死にかえり
- せーじゅん!
- ゲゲゲの阿素湖
- 愛するがゆえの屈折したアグネス漫画
- プププ プリティー ベイビー
- むちゃくちゃ
- ダイヤモンド ほ ほしい!
- あなたと私の内宇宙
- 気持ちいい色はいつも透明
- 無理心中……うれしい
- 夢見ごこちで
- ないよりましな馬の尻
- ふるい予言だけど当たってたかなー?
- 真贋の本質に迫って
- えすえふハンター そら来た
- 百回記念はティー・パーティー
- かくてーしんこく お早めに
- 侵略するなら こっちにも考えあるよ
- 行く川の流れはあっちこっち
- 知性一山30円
- 芸がのたうつ温泉芸者
- 性格むつかしい少女漫画
- 変態と言えなくもないけど正常!
- そら来た夏
- むし暑い夜にはスーパーマン
- フーぞくインラン海 人魚
- とっつきに来ましたー
- うちわ鳴く夏
- ブキミな洋館にはなんかいる
- あら極限状況
- 阿素湖たんたんファンタジー(1)
- 阿素湖たんたんファンタジー(2)
- 阿素湖たんたんファンタジー(3)
- しゅうしょく
- けがわー
- いよいよ次が最終回
- 終わりだけど終わんない
番外編
[編集]『プレイコミック』別冊号(1977年(昭和52年)4月25日号)に「デラックス号協賛特別麻雀編・新宿(ジュク)の雀狼」のタイトルで掲載された、麻雀劇画のパロディー作品。この番外編は単行本化の際に「特別ふろく ゲキガのつもり」と改題され、秋田漫画文庫第4巻、秋田文庫第3巻のそれぞれ巻末に収録された。
単行本
[編集]- 秋田漫画文庫『やけくそ天使』秋田書店(1977年 - 1980年、全5巻)
- プレイコミックシリーズスペシャル『やけくそ天使』秋田書店(1986年、2巻までで中断)
- 秋田文庫『やけくそ天使』秋田書店(2000年、全3巻)
『やけくそ黙示録』は以下に収録。
脚注
[編集]- ^ 夏目房之介は「漫画史上屈指のド助平」と評している(夏目房之介『消えた魔球』新潮文庫、新潮社、1994年、169頁)。
- ^ このエピソードの「プッシーヘラヘラトーク」というサブタイトルからも明らかなように、フランスのポルノ映画「プッシー・トーク」(1975年)のパロディ。
- ^ 『プレイコミック』とは別雑誌。
- ^ 「アララテ山のむこうに恐山」。末尾に「「やけくそ天使に続く」というふうにしたかったけどうまくいかんかった」とある。
- ^ 大日本吾妻漫画振興会・編「吾妻ひでおキャラクター列伝」『奇想天外・臨時増刊号 吾妻ひでお大全集』(奇想天外社、1981年)181頁。
- ^ 吾妻ひでお『吾妻ひでおの不自由帖』(まんだらけ、1999年)14頁。
- ^ 進也いわく、「ママとおじいちゃん パパとおぱあちゃんが駆け落ちした」。
- ^ みなもと太郎『お楽しみはこれもなのじゃ《漫画の名セリフ》』(河出文庫、河出書房新社、1997年)147頁。なお『やけくそ天使』連載当時、『アルジャーノンに花束を』の長編版は日本ではまだ翻訳されておらず、アンソロジーに収録された中編版しか読むことができなかった。そのため作品の知名度が高くなく、みなもとは『アルジャーノン』のあらすじを説明した上で、「“読者にわかろうがわかるまいが、とにかくオモシロイと思えばば俺は描く”という姿勢、良し悪しはともかく、このしたたかな生きざまはやはり一目、置くべきなのでありましょう」と評している。