コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

アイルランド文学博物館

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アイルランド文学博物館
Museum of Literature Ireland / Músaem Litríochta na hÉireann
アイルランド文学博物館が入っているニューマン・ハウス
アイルランド文学博物館の位置(ダブリン中心部内)
アイルランド文学博物館
ダブリン中心部内の位置
アイルランド文学博物館の位置(ダブリン内)
アイルランド文学博物館
アイルランド文学博物館 (ダブリン)
施設情報
専門分野 文学館
館長 サイモン・オコナー
開館 2019年9月
所在地 アイルランド、ダブリン、セント・スティーブンス・グリーン86
位置 北緯53度20分12秒 西経06度15分37秒 / 北緯53.33667度 西経6.26028度 / 53.33667; -6.26028座標: 北緯53度20分12秒 西経06度15分37秒 / 北緯53.33667度 西経6.26028度 / 53.33667; -6.26028
アクセス イルンロード・エールン ダブリン・ピアース駅
ルアス セント・スティーブンス・グリーン駅(ルアスグリーンライン)
外部リンク moli.ie
プロジェクト:GLAM
テンプレートを表示

アイルランド文学博物館(アイルランドぶんがくはくぶつかん、英語: Museum of Literature Irelandアイルランド語: Músaem Litríochta na hÉireann)、通称MoLIアイルランドダブリンにある文学館である。2019年9月に開館した。MoLIという通称はジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』に登場するモリー・ブルームにかけた名称である。アイルランド文学博物館はアイルランド国立図書館及びユニバーシティ・カレッジ・ダブリン (UCD) のパートナーシップによって運営されている。セント・スティーブンス・グリーンにあるUCDのニューマン・ハウスに入っている。作家自身が所有していた『ユリシーズ』の「1号コピー」をはじめとするジェイムズ・ジョイス関連史料コレクションを所蔵している他、アイルランド文学に関するイマーシブ展示などがある。

来歴

[編集]

セント・スティーブンス・グリーンにあるニューマン・ハウスに文学館を作るというアイディアはユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの出納長及び資本発展担当副学長であるイーモン・ケントとアイルランド国立図書館関係者がグラフトン・ストリートビューリーズ・カフェで話したことから始まった[1]。当初はジェイムズ・ジョイス専門の資料館になる予定であった[2]。このプロジェクトはマーティン・ノートン夫妻などの寄付を受けた他、フォールチャ・アイルランドから250万ユーロの支援を受けることになった[3]。プロジェクトはジョイスだけではなく、アイルランド文学一般を対象とすることになった[1]。対象を拡大したプロジェクトを命名するにあたり、ジョイスとのつながりを強調することが重要視されたため、『ユリシーズ』の登場人物であるモリー・ブルームに敬意を表して「モリー[4]」と発音するMoLI (Museom of Literature Ireland) という頭字語が使われることになった[1][5]

博物館の改築プロジェクトは2012年に始まった[6]。展示のデザインはRalph Appelbaum Associatesが、建築設計はスコット・タロン・ウォーカーがつとめた。オーディオ資料の充実やインラタクティブ展示を重視したデザインとなった[2]。主な工事として行われたのはニューマン・ハウスの中央階段やエレベータ、近代的な火災避難装置の設置などであった[6]。初代ディレクターはリトル・ミュージアム・オブ・ダブリン英語版の創設チームメンバーであったサイモン・オコナーがつとめることになった[4][1]

当初の予定では2019年春に開館することになっていた[3]。2019年9月20日のカルチャーナイトに開館イベントが行われた[7][8]。翌21日に一般公開となった[9]。通常は入館料がかかる[9]。開館後の6ヶ月間で4万人近い入場者を迎えた[10]

展示

[編集]

ニューマン・ハウスはふたつのジョージアン様式の家と、もともと大学が使っていたグレートホール (Aula Max) からなる複合施設で、この全てのスペースが新しく追加整備を行ったのちに博物館として使用されることになった[6]。3階に分けて展示があり、1階は「場所」(place)、2階は「声」 (voice)、3階は「インスピレーション」(inspiration) がテーマになっており、イマーシブな形態の展示を行っている[11]

展示はアイルランド国立図書館ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン図書館のコレクションからなっている。メイン展示のひとつは『ユリシーズ』の「1号コピー」であり、これにはパトロンであるハリエット・ウィーバーにあてた献辞がある[1]。ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』にちなんだ "Riverrun of Language" という展示では、来館者が動くとそれに合わせて「話し言葉が降り注ぐ」ようになっている[11]

特設展

[編集]

開館時にはアイルランドの女性作家の特設展や、一般フィクション、サイエンス・フィクションファンタジーなどを含むヤングアダルトフィクションの特設展なども行われた[12]

2023年3月にはブレンダン・ビーアン英語版生誕100周年を記念し、アイルランド文学博物館と小説家パトリック・マッケイブの協力で "The Holy Hour" というビーアンの生涯と作品を再構成するオーディオビジュアルインスタレーションが設置された[13]

運営

[編集]

博物館の建物はUCDが所有しており、UCDとアイルランド国立図書館の共同事業として運営されている[4]。UCDカンパニー、ニューマン・ハウス文学センター、CLGが運営しており、UCDから4名、国立図書館から2名、UCDが任命する部外者の議長という全員無給の7名の委員からなる委員会が作られている[14]

教育

[編集]

開館前から、専門家向けの研究図書館としての機能及び大人と学童両方向けのアウトリーチプログラムができる教育施設としての機能を有する前提で作られた[15]

開館時からデジタルラジオ局であるRadioMoLIを運営しており、専用の放送室も作られた[15][16]。YouTubeの短編映像なども制作している[17]

庭園と付属施設

[編集]

一般向けの付属施設が地下に、事務局が非公開の3階にある[6]。博物館に付属するリーダーズ・ガーデン(読者の庭)は公園であるアイヴァ庭園からも入ることができ、カフェの中庭側のスペースや読書スペースなどがある[6]。ミュージアムカフェであるザ・コモンズは地下にあり、通りとアイヴァ庭園からアクセス可能である[6]。ミュージアムショップは地下の内部にある[6]

評価

[編集]

設計が『クリエイティヴ・レビュー』誌で特別賞として言及された[2]。2020年にインテリアデザインMUSE設計賞を受賞している[11]。同年にヨーロッパ建築・芸術・設計・都市研究センター環境グッドデザイン賞も受賞した[18]。建物の再活用はアイルランド王立建築インスティテュートのパブリックチョイス賞候補となった[19]

ルーカス・マクマナスによってアイルランド文学博物館の設計、建物、開館に関するドキュメンタリー Making a Museum: The Story of MoLI が作られ、2020年のブルームの日アイルランド放送協会によりテレビ放送された[20]

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d e Museum of Literature Ireland Director Simon O'Connor talks to us ahead of the opening of MoLI on Culture Night 2019”. Totally Dublin (13 September 2019). 16 May 2021閲覧。
  2. ^ a b c “Ralph Appelbaum Associates: Museum of Literature Ireland”. Creative Review (London, UK). (2020). https://www.creativereview.co.uk/museum-of-literature-ireland/ 15 May 2021閲覧。. 
  3. ^ a b Museum of Literature Ireland (MoLI) to open Spring 2019”. University College Dublin. 16 May 2021閲覧。
  4. ^ a b c “First look inside the new Museum of Literature Ireland”. The Irish Times. (14 September 2019). https://www.irishtimes.com/culture/books/first-look-inside-the-new-museum-of-literature-ireland-1.4009173. "Exploring MoLI (say it out loud, and think of Molly Bloom is the idea)" 
  5. ^ MoLI makes weekend radio debut”. Entertainment for Business. 16 May 2021閲覧。
  6. ^ a b c d e f g Scott Tallon Walker Architects; McCullough (FRIAI, reviewer), Niall (1 May 2020). “Museum of Literature Ireland”. Architecture Ireland (311): 56–64. 
  7. ^ Hello MOLI - inside the new Museum Of Irish Literature”. RTÉ News (3 October 2019). 2024年10月15日閲覧。
  8. ^ Dinarque, Anais (13 April 2020). “Irish Literature: A New Immersive Museum in Dublin”. Le Journal International. http://www.lejournalinternational.info/en/litterature-irlandaise-un-nouveau-musee-immersif-a-dublin/ 15 May 2021閲覧。 
  9. ^ a b A James Joyce–Inspired Literary Museum Just Opened in Dublin”. Afar Magazine (20 September 2019). 15 May 2021閲覧。
  10. ^ Literature ventures making their presence felt beyond words”. The Irish Times (sponsored feature, not editorial). 17 May 2021閲覧。
  11. ^ a b c Winner: Museum of Literature Ireland (MoLI)”. MUSE Awards. 15 May 2021閲覧。
  12. ^ Phillips, Libby (16 October 2019). “Museum of Literature Ireland: The past, present, and future of Irish writing”. Trinity News (Dublin, Ireland). 
  13. ^ Melissa Carton: “MoLI Celebrates Brendan Behan's Centenary with New Exhibition” (英語). OnlyMassive.ie (2023年2月10日). 2023年5月23日閲覧。
  14. ^ Governance and Accountability”. Museum of Literature Ireland. 15 May 2021閲覧。
  15. ^ a b Reynolds, Heather (22 April 2019). “Museum of Literature Ireland: A 21st century museum for 21st century Ireland”. University Observer. https://universityobserver.ie/museum-of-literature-ireland-a-21st-century-museum-for-21st-century-ireland/ 19 May 2021閲覧。 
  16. ^ Home” (英語). RadioMoLI. 2024年10月24日閲覧。
  17. ^ In a Garden Meet Again”. YouTube. Museum of Literature Ireland (11 May 2021). 16 May 2021閲覧。
  18. ^ Good Design Awards - Museum of Literature Ireland (MoLI)”. The European Centre for Architecture, Art, Design and Urban Studies. 15 May 2021閲覧。
  19. ^ Whats On | RIAI.ie (The Royal Institute of the Architects of Ireland)” (英語). www.riai.ie. 2024年10月24日閲覧。
  20. ^ Making A Museum: The Story of MoLI”. RTE (16 June 2020). 15 May 2021閲覧。

外部リンク

[編集]