アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー
「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」 | ||||||||||
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ビートルズの楽曲 | ||||||||||
収録アルバム | 『リボルバー』 | |||||||||
英語名 | I Want to Tell You | |||||||||
リリース | 1966年8月5日 | |||||||||
録音 |
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ジャンル | サイケデリック・ロック | |||||||||
時間 | 2分29秒 | |||||||||
レーベル | パーロフォン | |||||||||
作詞者 | ジョージ・ハリスン | |||||||||
作曲者 | ジョージ・ハリスン | |||||||||
プロデュース | ジョージ・マーティン | |||||||||
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「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」(I Want to Tell You)は、ビートルズの楽曲である。1966年に発売された7作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『リボルバー』に収録された。作詞作曲はジョージ・ハリスンが手がけていて、アルバム『リボルバー』には本作の他にハリスン作の「タックスマン」や「ラヴ・ユー・トゥ」の収録されていることから、『リボルバー』は1枚のアルバムとしてハリスンの作品が最も多く収録されたビートルズのアルバムとなった。
「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」は、LSDからインスピレーションを得て書かれた楽曲で、哲学的な要素を持った歌詞や、吃ったギターリフや不協和音が特徴となっている。本作のレコーディングは、リズムトラックが完成した後にマッカートニーがベースのパートをオーバー・ダビングした初の例となっており、以降のビートルズの作品で主流となった。
音楽評論家から肯定的な評価を得ており、特にマッカートニーのメリスマを思わせる歌唱法が称賛された。ハリスンは、1991年にエリック・クラプトンと共に行った日本ツアーでオープニング・ナンバーとして演奏した。楽曲が発表されて以降、テッド・ニュージェント、スミザリーンズ、シーア・ギルモア、メルヴィンズらによってカバーされた。
背景・曲の構成
[編集]ジョージ・ハリスンは、1966年初頭に「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」を書いた。同年、ハリスンはインドの伝統音楽の要素を取り入れた楽曲[1][2]やLSDの服用からインスピレーションを得た楽曲を制作することでアイデンティティを確立し[3]、レノン=マッカートニーと肩を並べる評価を得るようになった[4]。 本作についてハリスンは「書ききれない、言い切れない、伝えきれない、そういう雪崩のようにどっと襲いかかってくる気持ちについて書いたもの」と語っている[5][6]。音楽評論家のイアン・マクドナルドは、1回目のブリッジの「But if I seem to act unkind / It's only me, it's not my mind / That is confusing things(でももし僕がつれなく見えるとしたら / それが僕という人間なんだ、僕の心じゃない / 物事をややこしくしているのは)」を、コミュニケーションの難しさを東洋哲学のアプローチを適用して表現した例として挙げている[7]。
「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」のキーはAメジャーに設定されていて[8]、4分の4拍子となっている[9]。曲のオープニングとエンディングでは、音楽ジャーナリストのリッチー・アンターバーガー
レコーディング
[編集]「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」は、『リボルバー』のセッションで取り上げられた3作目のハリスンの作品[13]だが、セッション開始時点ではタイトルが決められていなかった[14]。完成した楽曲にタイトルをつけないハリスンに憤慨したジョン・レノンは、冗談めかして「ラヴ・ユー・トゥ」の仮タイトル「Granny Smith(大元はリンゴの品種)」から派生した「Granny Smith Part Friggin' Two」と名付けた[15]。また、レコーディング・エンジニアであるジェフ・エメリックからは、同じくリンゴの品種から「Laxton's Superb」と名付けられた[16]。
1966年6月2日にEMIレコーディング・スタジオでレコーディングが開始された[16]。ハリスンのレスリースピーカーに通したリードギター、ポール・マッカートニーのピアノ、リンゴ・スターのドラムの編成でリズムトラック[16][14]を5テイク録音。このうちのテイク3をオーバー・ダビング用のマスターとして採用し[16]、レノンのタンバリンが追加された[11]。空きトラックを作るためにリダクション・ミックスを行った後[17]、ハリスンのリード・ボーカルとレノンとマッカートニーのハーモニー・ボーカル、そしてマラカス[9]がオーバー・ダビングされた[11]。また、ブリッジの終り部分とヴァースのE7♭9コードの上にハンドクラップと追加のピアノが加えられた[17]。
6月3日のオーバーダビング・セッションで、マッカートニーのベースがオーバー・ダビングされ[18]、ビートルズのレコーディングにおいてベースが単体で1トラックを独占してオーバー・ダビングされた初の例となった[19][20]。この日のセッションでタイトルが一度「I Don't Know」[17]に変更されたのち、6月6日にリミックスやテープをコピーする作業を行うまでに現在のタイトルに変更された[21]。
リリース・評価
[編集]イギリスでは、7月にEMIがアルバム『リボルバー』の収録曲を各ラジオ局に配信していた[22]。アルバム『リボルバー』は、1966年8月5日にパーロフォンから発売され[23][24]、「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」はB面5曲目に収録され[25][26]、前曲には合法的な医療行為と偽り、アンフェタミンをはじめとした薬物を処方していた医師をモデルとしたレノン作の「ドクター・ロバート」[27]、次曲にはマッカートニーがマリファナの影響下で書いた「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」[28][29][30]が配置された[注釈 1]。
『メロディ・メイカー』誌は、ギターとピアノのモチーフとボーカルのハーモニーのコンビネーションを称賛している[32]。アラン・ポラックは、本作の下降するギターリフを本作のハイライトとし、「曲冒頭から曲全体のトーンを決める、これまでにない素晴らしいオスティナートパターンの1つ」と評している[9]。プロデューサーでミュージシャンのチップ・ダグラスは、モンキーズの「プレザント・バレー・サンデイ」のギターリフは、本作に基づいたものだとしている[33]。
リッチー・アンターバーガーは、本作の「興味深く、独特な性質」とボーカル・パフォーマンスを称賛していて、特にマッカートニーのボーカルについて「ロックにおける偉大な高音域の男性ハーモニー・シンガーの1人といえる」と評している[10]。
クレジット
[編集]※出典[34]
- ジョージ・ハリスン - ダブルトラックのボーカル、リードギター、ハンドクラップ
- ジョン・レノン - ハーモニー・ボーカル、タンバリン、ハンドクラップ
- ポール・マッカートニー - ハーモニー・ボーカル、ピアノ、ベース、ハンドクラップ
- リンゴ・スター - ドラム、マラカス、ハンドクラップ
カバー・バージョン
[編集]- テッド・ニュージェント - 1979年に発売されたアルバム『State of Shock』に収録[35]。
- ジョージ・ハリスン - 1991年にエリック・クラプトンと共に行った日本ツアーでオープニング・ナンバーとして演奏。当時のライブ音源は、翌年に発売された『ライヴ・イン・ジャパン』に収録された[36]。
- ジェフ・リン - 2002年11月29日にロイヤル・アルバート・ホールで開催されたハリスンのトリビュート・コンサート『コンサート・フォー・ジョージ』で演奏[37]。
- ブルー・カートゥーン - 2003年に発売されたトリビュート・アルバム『He Was Fab: A Loving Tribute to George Harrison』に収録[38]。
- スミザリーンズ - 2003年に発売されたトリビュート・アルバム『Songs From The Material World: A Tribute To George Harrison』に収録[39]。
- シーア・ギルモア - 2006年にアルバム『Harpo's Ghost』のためのセッション中にレコーディングされ[40]、同年に『モジョ』誌が『リボルバー』の発売40周年を記念して制作したCD作品『Revolver Reloaded』に収録[41]。
- メルヴィンズ - 2016年に発売されたアルバム『Basses Loaded』に収録[42]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ アメリカで発売された『リボルバー』では、先行してキャピトル編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』にレノンが書いた他の2曲と共に収録されていた関係から他2曲と共に「ドクター・ロバート」が収録されていない[31]。
出典
[編集]- ^ Larkin 2011, p. 2644.
- ^ Schaffner 1978, pp. 63, 66.
- ^ Rodriguez 2012, p. 66.
- ^ Rodriguez 2012, pp. 66, 70–71.
- ^ Harrison 2002, p. 96.
- ^ Turner 1999, p. 115.
- ^ MacDonald 2005, pp. 207–208.
- ^ MacDonald 2005, p. 495.
- ^ a b c d e Pollack, Alan W. (1995年). “Notes on 'I Want to Tell You'”. soundscapes.info. 2020年11月16日閲覧。
- ^ a b Unterberger, Richie. I Want To Tell You - The Beatles | Song Info - オールミュージック. 2020年11月16日閲覧。
- ^ a b c Everett 1999, p. 57.
- ^ Fontenot, Robert (2015年3月14日). “The Beatles Songs: 'I Want to Tell You' – The history of this classic Beatles song”. oldies.about.com. 2015年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月16日閲覧。
- ^ Rodriguez 2012, pp. 142–143.
- ^ a b Miles 2001, p. 232.
- ^ Rodriguez 2012, p. 143.
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- ^ Harry 2003, p. 232.
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- ^ Rodriguez 2012, pp. 6, 25–26, 122–123.
- ^ Mulvey, John, ed (2015). “July–September: LPs/Singles”. The History of Rock: 1966 (London: Time Inc.): 78 .
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- ^ “MOJO Issue 152 / July 2006”. mojo4music.com. 2020年11月16日閲覧。
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参考文献
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- Larkin, Colin (2011). The Encyclopedia of Popular Music (5th ed.). London: Omnibus Press. ISBN 978-0-85712-595-8
- Lewisohn, Mark (2005) [1988]. The Complete Beatles Recording Sessions: The Official Story of the Abbey Road Years 1962-1970. London: Bounty Books. ISBN 978-0-7537-2545-0
- MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (2nd rev. ed.). Chicago, IL: Chicago Review Press. ISBN 978-1-55652-733-3
- Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years From Now. New York: Henry Holt and Company. ISBN 0-8050-5249-6
- Miles, Barry (2001). The Beatles Diary Volume 1: The Beatles Years. London: Omnibus Press. ISBN 0-7119-8308-9
- Rodriguez, Robert (2012). Revolver: How the Beatles Reimagined Rock 'n' Roll. Milwaukee, WI: Backbeat Books. ISBN 978-1-61713-009-0
- Schaffner, Nicholas (1978). The Beatles Forever. New York, NY: McGraw-Hill. ISBN 0-07-055087-5
- Turner, Steve (1999). A Hard Day's Write: The Stories Behind Every Beatles Song (2nd ed.). New York, NY: Carlton/HarperCollins. ISBN 0-06-273698-1
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- Winn, John C. (2009). That Magic Feeling: The Beatles' Recorded Legacy, Volume Two, 1966–1970. New York, NY: Three Rivers Press. ISBN 978-0-307-45239-9
外部リンク
[編集]- I Want to Tell You - The Beatles