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アマガイモドキ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アマガイモドキ科
生息年代: 三畳紀現世
[1]
インドネシアのアマガイモドキ
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 腹足綱 Gastropoda
亜綱 : 正腹足亜綱 Orthogastropoda
下綱 : アマオブネ形下綱 Neritimorpha
: アマオブネ目[2] Neritopsida
亜目 : Neritopsina[3]
上科 : アマガイモドキ上科 Neritopsoidea
: アマガイモドキ科[4] Neritopsidae Gray1847[5]

アマガイモドキ科Neritopsidae)は、アマオブネ目に含まれる海洋性の腹足類の科でアマオブネガイ科の祖先にあたる。現生の属としては、生きた化石として知られるアマガイモドキ属Neritopsisのほかに、貝殻をもたないチチカケガイ属 Titiscaniaも本科に含められるようになった[6]。アマオブネガイ目の中で早い時期に発生し、ごく限られた種が現在も生存している[7][4]

形態

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古腹足類Vetigastropodaと同様に扇舌型(rhipidoglossan)の歯舌をもつことで、新生腹足類Caenogastropodaとは区別される。また櫛鰓ctenidiumをもつことで、異鰓類(ウミウシカタツムリナメクジ)とは区別されるが[7]、鰓に支柱が無い点はカサガイ類と似ている[4]アマガイモドキの蓋は特徴的で、楕円形の石灰質の厚い蓋に蝶番が張り出したような形で、上下が対称的である[8]チチカケガイは貝殻を持たず、白色のナメクジのような外観で触角は左右一対。触角のつけ根に小さい眼があり、頭のすぐ後ろに櫛型の鰓が出ている[9]。歯舌は扇舌型で中央歯が無いn-3-3-n (n=100-110)型[10]。 アマガイモドキ科から後に分化したと考えられるシラタマアマガイ Pisulinaアマオブネガイ科Neritina zeblaについては詳細な体の構造が報告されている[11][12]

生態

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熱帯の海に生息するが、生きたものが発見されることは稀で、生態はまだよく分かっていない。古腹足類と同様に扇舌型の歯舌を使って海底の藻類やデトリタス、バイオフィルムを食べると考えられる。アマガイモドキは海底洞窟や珊瑚の礫の下に生息する。八重山諸島近海のヨコシマクロダイの消化管の中から、蓋や貝殻の破片が見つかったことがある[13]。チチカケガイは潮間帯下の転石の下で見つかっている[7]

系統発生

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アマガイモドキ科に近縁の科の分岐図の一例を下に示す[14]

古腹足類 Vetigastropoda

アマガイモドキ科

アマガイモドキ Neritopsis 海底洞窟や珊瑚礫の下

チチカケガイ Titiscania 潮下帯

ゴマオカタニシ科 Hydrocenidae 陸生

ヤマキサゴ科 Helicinidae 陸生

コハクカノコガイ科

コハクカノコ Neritilia 河口転石下

シラタマアマガイ Pislina 海底洞窟

Neritiliidae

ユキスズメガイ科 Phenacolepadidae 潮間帯

アマオブネガイ科 Neritidae 潮間帯

Kano, Chiba, Kase (2002)によるアマガイモドキ科関連の分岐図[14]


分類

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アマガイモドキ科に分類される現生の属・種を以下に示す。

アマガイモドキ属 Neritopsis Grateloup, 1832[15]

以上の現生種のほか、化石種は主に中生代の地層から多数見つかっている[18]

チチカケガイ属 Titiscania Bergh, 1890[19]
  • Titiscania limacina Bergh, 1890[14][10]
  • Titiscania shinkishihataii Is. Taki, 1955 ハチジョウチチカケガイ。八丈島[7]

出典

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  1. ^ Kaim&Sztjner (2005), p. 217.
  2. ^ 福田宏 (2023年6月13日)「軟体動物門」、In 岡山県野生動植物調査検討会 編『岡山県野生生物目録2019』Ver.1-4、岡山県環境文化部自然環境課、https://www.pref.okayama.jp/page/602836.html 2023年12月1日閲覧。
  3. ^ Neritopsina”. Integrated Taxonomic Information System (ITIS). 2023年12月1日閲覧。
  4. ^ a b c 佐々木 (2010), p. 67.
  5. ^ Neritopsidae”. Maxim Vinarski (2018年). 2023年11月26日閲覧。
  6. ^ Kano&Chiba (2002).
  7. ^ a b c d 竹之内・中村 (2004), p. 64.
  8. ^ Kaim&Sztjner (2005), p. 213.
  9. ^ Titiscania limacina Bergh, 1890”. kwajalein under water (2021年). 2023年11月28日閲覧。
  10. ^ a b Apte&Nerurlar (2015).
  11. ^ Kano&Kase (2002).
  12. ^ Barroso (2012).
  13. ^ 小菅 (2009).
  14. ^ a b c Kano&Chiba (2002), p. 2459.
  15. ^ Neritopsis”. Philippe Bouchet (2018年). 2023年11月26日閲覧。
  16. ^ 竹之内・中村 (2004), p. 65.
  17. ^ Lozouet (2009).
  18. ^ Lozouet (2009), p. 190.
  19. ^ Titiscania”. Maxim Vinarski (2019年). 2023年11月26日閲覧。

参考文献

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  • Yasunori Kano and Tomoki Kase (2002). “Anatomy and systematics of the submarine-cave gastropod Pisulina (Neritopsina: Neritidae)”. Journal of Molluscan Studies 68: 365-384. 
  • 奥谷喬司『世界文化生物大図鑑貝類』(改訂新版)世界文化社、2004年。ISBN 9784418049042全国書誌番号:20617488https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007382848-00 
  • Andrzej Kaim & Przemysław Sztajner (2005). “The opercula of neritopsid gastropods and their phylogenetic importance”. Journal of Molluscan Studies 71: 211-219. 
  • Pierre Lozouet (2009). “A new Neritopsidae (Mollusca, Gastropoda, Neritopsina) from French Polynesia”. Zoosystema 31: 189-198. 
  • 小菅丈治「ヨコシマクロダイ類の消化管内から見出されたアマガイモドキ」『日本貝類学会研究連絡誌『ちりぼたん』』第39巻、2009年、70-72頁。 
  • Cristiane Barroso, Helena Matthews-Cascon, Luiz Simone (2012). “Anatomy of neritina zebra from guyana and brazil (mollusca: Gastropoda: Neritidae)”. Journal of Conchology 41: 49-64. 
  • Apte D. A. & Sayali Nerurkar (2015). “First record of Titiscania limacina Bergh, 1890 (Mollusca: Gastropoda) from India”. Journal of Bombay Natural History Society  112: 22-25. doi:10.13140/RG.2.2.20177.53605. 

外部リンク

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関連項目

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  • Naticopsis:大陸がまだ少なく石灰石が大量に堆積したペルム紀に生息し大型。
  • アマオブネガイ科:アマガイモドキ科後の時代に熱帯の河口や潮間帯で優占的に生息。
  • ナメクジ:チチカケガイ同様に貝殻を放棄することによって移動しやすさを獲得した。