コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

アラゴン州

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アラゴン自治州から転送)
アラゴン州
Aragón
Flag of Aragon
Coat-of-arms of Aragon
紋章
アラゴン賛歌英語版
スペインにおけるアラゴンの位置 (赤)
スペインにおけるアラゴンの位置 (赤)
北緯41度00分 西経1度00分 / 北緯41.000度 西経1.000度 / 41.000; -1.000座標: 北緯41度00分 西経1度00分 / 北緯41.000度 西経1.000度 / 41.000; -1.000
国名 スペインの旗 スペイン
州都 サラゴサ
政府
 • 州首相 ホルヘ・アスコン (PP)
面積
(スペイン中9.4%、第4位)
 • 合計 47,719 km2
人口
(2016)
 • 合計 1,308,563人
 • 順位 11
 • 密度 27人/km2
  割合2.9%
住民の呼称
 • 英語 Aragonese
 • カスティーリャ語 aragonés/-esa
 • アラゴン語 aragonés/-esa
 • カタルーニャ語 aragonès/-esa
ISO 3166-2
AR
公用語 スペイン語[注釈 1]
自治州法 1982年8月16日
議席割り当て スペイン国会
下院 13議席 (350議席中)
上院 14議席 (264議席中)
ウェブサイト www.aragon.es

アラゴン州(アラゴンしゅう、スペイン語: Aragón, アラゴン語: Aragón, カタルーニャ語: Aragó)は、スペインを構成する自治州の一つである。ウエスカ県サラゴサ県テルエル県の3県からなる。スペイン北東部に位置し、北はフランス、東はカタルーニャ州、南はバレンシア州、西はカスティーリャ=ラ・マンチャ州カスティーリャ・イ・レオン州ラ・リオハ州ナバーラ州と接している。州都はサラゴサ

歴史

[編集]

8世紀イスラム勢力がイベリア半島を征服すると、フランク王国はピレネー山中に多くの伯領からなるスペイン辺境領を置き、緩衝地帯とした。現在のアラゴン州に含まれる地域にはハカ(アラゴン)、ソブラルベ、リバゴルサの伯領があった。11世紀にナバーラ王サンチョ3世カスティーリャからこの3伯領に至る大王国を築いたが、その死後に領土は分割され、1035年にラミロ1世を王とするアラゴン王国が成立し、ソブラルベとリバゴルサを併合した。

1137年、アラゴン女王ペトロニーラバルセロナ伯ラモン・バランゲー4世の結婚によって、アラゴンとカタルーニャ同君連合となった。これ以降カタルーニャもまとめて「アラゴン王国」と呼ばれるが、2つの地域では法制度や議会は別のままであった。今日では「カタルーニャ・アラゴン連合王国」とも呼ばれる。連合王国は13世紀のハイメ1世の時代にバレアレス諸島バレンシアを征服し、シチリア王国ナポリ王国サルデーニャも領有して地中海帝国を築いた。

アラゴン王国のフェルナンド2世カスティーリャ王国イサベル1世の結婚によって、1479年にカスティーリャ王国とアラゴン王国も同君連合となった。これにより「スペイン王国」が成立したとされるが、やはり法制度や議会は別のままで、歴代のスペイン王は称号を「カスティーリャ王、ガリシア王、アラゴン王、バルセロナ伯、……」のように名乗った。カタルーニャとアラゴンがカスティーリャの法制度に組み込まれ始めるのは、18世紀のスペイン継承戦争以降である。

1978年のスペイン新憲法成立後、1982年8月16日にアラゴンの自治憲章が発効し、かつてのアラゴン王国(カタルーニャを除く)の領域にアラゴン自治州が成立した。

地理

[編集]
ピレネー山脈の谷間

アラゴン州の面積は47,720.25 km2であり、カスティーリャ・イ・レオン州アンダルシア州カスティーリャ=ラ・マンチャ州に次いで17自治州中第4位である。内訳はウエスカ県が15,636.40 km2サラゴサ県が17,274.28 km2テルエル県が14,809.57 km2である。

州北部にはピレネー山脈がそびえる[1]。山脈の中で最も急峻な地域となっており、山脈の最高峰であるアネート山 (3,404 m) やペルディード山 (3,355 m) がある。山脈沿いには美しい風景を保った多くの谷が残されている。また、オルデサ・イ・モンテ・ペルディード国立公園がある。

州の中央部は西から東にエブロ川が流れ、標高の低い地域となっている。州都のサラゴサはエブロ川沿いにある。

州の南部も標高の高い山地となっており、スペインの中で最も人口密度の低い地域の一つである。この山地はイベリコ山系と呼ばれ、エブロ川流域とスペインの中央平原を隔て、両地域の気候の違いに影響を与えている。

人口

[編集]
アラゴン州の人口推移 1900-2010
出典:INE(スペイン国立統計局)1900年 - 1991年[2]、1996年 - [3]

県と都市

[編集]

アラゴン州は3つの県によって構成されている。県と県都の名前はすべて同じである。

アラゴン州の県(2009年)[4]
県都 面積
(km2
人口
(人)
人口密度
(人/km2
基礎
自治体
ウエスカ県 ウエスカ 15,636.40 228,409 14.61 202
テルエル県 テルエル 14,809.57 146,751 9.91 236
サラゴサ県 サラゴサ 17,274.28 970,313 56.17 292
  47,720.25 1,345,473 28.20 730

主な自治体

[編集]

アラゴン州の州都はサラゴサに置かれている。州の人口の約半分はサラゴサ(人口66万)が占めている。33のコマルカ(郡)に分けられる。人口が上位の自治体は次のとおり。

アラゴン州の自治体(2010年)[5]
順位 基礎自治体 人口
(人)
1 サラゴサ サラゴサ県  675,121
2 ウエスカ ウエスカ県   52,347
3 テルエル テルエル県   35,241
4 カラタユー サラゴサ県   21,717
5 ウテーボ英語版 サラゴサ県   17,999
6 エヘーア・デ・ロス・カバジェーロス英語版 サラゴサ県   17,344
7 モンソン ウエスカ県   17,115
8 バルバストロ ウエスカ県   17,080
9 アルカニス テルエル県   16,291
10 フラガ ウエスカ県   14,539

経済

[編集]
2008年のサラゴサ国際博覧会に向けて建設されたトーレ・デル・アグア英語版

アラゴン州の1人あたり域内総生産 (GRP) はスペイン平均を上回っている。伝統的な農業主体の経済は20世紀中頃に大きく変容しており、今日ではサービス産業部門と工業部門が州経済の屋台骨となっている。

第一次産業

[編集]

エブロ川流域には灌漑設備が整備されており、小麦・大麦・ライ麦・果物・ブドウなどを生産している。ウエスカ県などではヒツジやウシなどの家畜が飼育されており、州内にウシは334,600頭、ヒツジは2,862,100頭、ブタは3,670,000頭、ヤギは78,000頭、家禽は20,545,000匹がいた[6]

第二次産業

[編集]

アラゴン州の工業の中心地はサラゴサである。州最大の工場はサラゴサにあるオペルの自動車工場であり、8,730人を雇用して年間20万台を生産しているほか、サラゴサ周辺には多くの関連企業が集積している。サラゴサ市内には鉄道車両や家電製品を製造する大規模な工場もある。オホス・ネグロス近郊には鉄鉱石や石炭の鉱山がある。ピレネー山脈に水源を持つ河川には多くの水力発電所が築かれているほか、テルエル火力発電所は1,050メガワットの発電出力を持つ。ウエスカ県サビニャニゴにはアルミニウム製錬所がある。エレクトロニクス産業の中心地はサラゴサに加えてウエスカやベナバレ英語版である。化学工業はサラゴサ、サビニャニゴ、モンソン、テルエル、オホス・ネグロスフラガ、ベナバレなどで発達している。

政治

[編集]
アラゴン州議会英語版が開催されるアルハフェリア宮殿
分離主義者が主張するイベリア半島の民族分布。この論に立つ場合、スペイン人は諸民族の大部分を統合する概念となる。

アラゴン州議会英語版は67議席からなり、サラゴサのアルハフェリア宮殿を議事堂としている。2015年以降のアラゴン州首相英語版スペイン社会労働党(PSOE)のハビエル・ランバンである。スペイン国会におけるアラゴン州の議席配分は、スペイン下院が13議席、スペイン上院が14議席である。

国民党やスペイン社会労働党などの全国政党に加えて、アラゴン州では多くの地域政党が活動している。アラゴン主義左派のチュンタ・アラゴネシスタ英語版(アラゴン主義連合)、アラゴン主義だがより保守的なアラゴン人党(PAR)などである。チュンタ・アラゴネシスタは2000年スペイン議会総選挙から2008年スペイン議会総選挙まで、2期8年の間はスペイン下院に議席を保持していた。アラゴン人党は国民党の提携政党してスペイン下院に議席を保持している[7]

2011年にアラゴン州政府が実施した調査によると、47.6%はアラゴン州の自治権の拡大を望んでおり、35.2%は現状の自治権に満足しており、6.0%は自治権の廃止を望んでおり、3.2%はスペイン国家からの完全な独立を望んでいた[8]

アラゴン州首相

[編集]
No. 期間 名前 政党
1. 1978-1981 フアン・アントニオ・ボレア・フォラダーダスペイン語版 民主中道連合(UCD)
2. 1981-1982 ガスパール・カステリャーノ・イ・デ・ガストン 民主中道連合(UCD)
3. 1982 ホセ・マリア・エルナンデス・デ・ラ・トーレ 民主中道連合(UCD)
4. 1982-1983 フアン・アントニオ・デ・アンドレス・ロドリゲス 民主中道連合(UCD)
5. 1983-1987 サンティアゴ・マラッコスペイン語版 スペイン社会労働党(PSOE)
6. 1987-1991 イポリト・ゴメス・デ・ラス・ロセススペイン語版 アラゴン人党(PAR)
7. 1991-1993 エミリオ・エイロアスペイン語版 アラゴン人党(PAR)
8. 1993-1995 ホセ・マルコスペイン語版 スペイン社会労働党(PSOE)
9. 1995 ラモン・テヘドールスペイン語版 スペイン社会労働党(PSOE)
10. 1995-1999 サンティアゴ・ランスエラ英語版 国民党(PP)
11. 1999-2011 マルセリーノ・イグレシアス英語版 スペイン社会労働党(PSOE)
12. 2011-2015 ルイサ・フェルナンダ・ルディ・ウベダ 国民党(PP)
13. 2015-在任中 ハビエル・ランバン スペイン社会労働党(PSOE)

社会

[編集]

言語

[編集]
アラゴン州の言語分布

公用語はスペイン語のみであり、アラゴン州ではスペイン語アラゴン方言が話されている。北部のピレネー山脈沿いではアラゴン語も話されており、アラゴン語はスペイン語と同様に俗ラテン語から派生したロマンス語のひとつである。また、カタルーニャ州に隣接している地域ではカタルーニャ語も話されている。

メディア

[編集]

2006年4月21日、アラゴン州営のテレビ局であるアラゴンTVスペイン語版が放送を開始した。アラゴン・ラジオ・テレビ公社スペイン語版(CARTV)設立法案は1987年にはできていたものの、その後、様々な政治論争が巻き起こったため、設立計画は片隅に追いやられ事実上中断されていた。

この間、様々なメディアグループによって、州内を対象としたテレビ局設立の動きがみられた。まず、国営のテレビシオン・エスパニョーラアラゴン支局は、州内を対象とした情報番組のための放送センターをサラゴサに設けた。1998年にはサラゴサにローカルTV局のアンテナ・アラゴンスペイン語版が設立された。2005年、アンテナ・アラゴンは地方紙の『エラルド・デ・アラゴン』グループのRTVAと合併、サラゴサ・テレビスペイン語版(ZTV)が誕生した。また民放全国放送のアンテナ3は一部の時間を州内のローカルニュースに割り当てていた。

交通

[編集]

アラゴン州内ではA-23号線がウエスカサラゴサテルエルの県都3都市を結んでいる。AP-2号線(欧州自動車道路E90号線)はサラゴサとバルセロナリェイダを結んでいる。A-2号線は(欧州自動車道路E90号線)はサラゴサとマドリードグアダラハラを結んでいる。AP-68号線(欧州自動車道路E804号線)はサラゴサとログローニョトゥデラを結んでいる。

高速鉄道AVEの北東回廊はサラゴサを経由してマドリードとバルセロナを結んでいる。州内ではカラタユーにも駅が設けられており、マドリードとバルセロナを走り通す列車のほかに、サラゴサとカラタユーの1区間を結ぶシャトル便も運行されている。北東回廊はサラゴサからウエスカに至る支線が設けられている。

サラゴサ郊外には国際空港のサラゴサ空港があり、パルマ・デ・マヨルカ空港パリ・ボーヴェ・ティレ空港ロンドン・スタンステッド空港ブリュッセル・シャルルロワ空港ベルガモ・オーリオ・アル・セーリオ空港アンリ・コアンダ国際空港などへの定期便が運航されている。2006年にはウエスカ郊外のウエスカ=ピリネオス空港で商業運航が開始されたが、チャーター便や季節運航便が主体であり、試算を大きく下回る旅客数や発着回数となっている。テルエル県には空港がない。

スポーツ

[編集]
レアル・サラゴサのホームスタジアムであるラ・ロマレーダ

サッカー

[編集]

アラゴン州でもっとも高い成績を収めているサッカークラブは1932年に設立されたレアル・サラゴサである。レアル・サラゴサは1957年からエスタディオ・デ・ラ・ロマレーダをホームスタジアムとしている。1963-64シーズンにはコパ・デル・レイで初優勝し、直近では2003-04シーズンには6回目の優勝を果たしている[9]。国際大会では1963-64シーズンのインターシティーズ・フェアーズカップと1994-95シーズンのUEFAカップウィナーズカップで優勝している。レアル・サラゴサ以外のサッカークラブには、SDウエスカCDテルエルなどがある。

ウィンタースポーツ

[編集]

州北部のピレネー山脈にはフォルミガル英語版カンダンチュ英語版などのスノーリゾートがある[10]。ウエスカ県ハカ1998年冬季オリンピックから2014年冬季オリンピックまで4大会連続で開催地に立候補したが、いずれの大会も開催地選考で落選した[11]。サラゴサは2022年冬季オリンピックの開催地立候補を検討していたが[12][13]、同国内のバルセロナの招致可能性を高めるために、2011年に立候補を断念した[14]。結果的にはバルセロナも正式な立候補を行うことはなかった。

モータースポーツ

[編集]

テルエル県アルカニスにはモーターランド・アラゴンがあり、2009年シーズンと2010年シーズンにはワールドシリーズ・バイ・ルノーが開催された。2010年シーズン以降にはロードレース世界選手権アラゴングランプリが開催されている。

その他

[編集]

バスケットボールクラブのバスケット・サラゴサ2002がサラゴサに本拠地を置いている。バスケット・サラゴサは2008年と2010年にLEBオロ(2部)で優勝し、2012-13シーズンと2013-14シーズンには2シーズン連続でリーガACB(1部)のプレーオフに出場した。フットサルクラブのADサラ10がサラゴサに本拠地を置いている。2011-12シーズンと2012-13シーズンには2シーズン連続でプリメーラ・ディビシオン(1部)のプレーオフに出場した。

世界遺産

[編集]

州内には、ユネスコ世界遺産に登録された物件が3件(他州、他国との共同含む)ある。

ギャラリー

[編集]

出身者

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ アラゴン州の公用語はスペイン語のみだが、アラゴン語カタルーニャ語は「特別の地位」が認められている。出典はスペイン国家官報(BOE)LEY 10/2009, de 22 de diciembre, de uso, protección y promoción de las lenguas propias de Aragón.” (PDF). 28 March 2010時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月29日閲覧。

出典

[編集]
  1. ^ 川成洋『スペイン文化読本』丸善出版、2016年、95頁。ISBN 978-4-621-08995-8 
  2. ^ Poblaciones de hecho desde 1900 hasta 1991. Cifras oficiales de los Censos respectivos.
  3. ^ Cifras oficiales de población resultantes de la revisión del Padrón municipal a 1 de enero.
  4. ^ 州別県別人口・面積・人口密度統計”. スペイン国立統計局(INE). 2011年6月24日閲覧。
  5. ^ 県別自治体別人口統計”. スペイン国立統計局(INE). 2011年6月24日閲覧。
  6. ^ Gobierno de Aragón”. Portal.aragob.es. 2010年4月26日閲覧。
  7. ^ Grupos Parlamentarios スペイン下院
  8. ^ Barómetro de Opinión de Invierno 2011 アラゴン・オイ
  9. ^ Spain - List of Cup Finals Archived January 2, 2010, at the Wayback Machine.
  10. ^ Season start Aragón – Ski season opening Aragón – Season begin Aragón
  11. ^ Jaca to bid for 2014 Winter Games
  12. ^ Juegos Olímpicos Zaragoza Pirineos 2022 « Candidatura a los JJOO de Invierno de 2022 (No Oficial) Archived June 15, 2013, at the Wayback Machine.
  13. ^ Ayuntamiento de Zaragoza.Zaragoza Turismo. Candidatura Olimpica 2022 Archived January 12, 2014, at the Wayback Machine.
  14. ^ Barcelona is now Spain's sole candidate for the 2022 Winter Olympics | News | Homepage | The website of the Barcelona city Archived January 11, 2014, at the Wayback Machine.
  15. ^ Who Was Who in America, Historical Volume, 1607-1896. Chicago: Marquis Who's Who. (1963) 

参考文献

[編集]
  • 立石博高編『スペイン・ポルトガル史』山川出版社、2000年

外部リンク

[編集]