アンフラマンス
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アンフラマンス(仏: inframince)とは、物質界にいながら、可能なかぎり非物質界に近い、その寸前に留まることを指した言葉。英語ではインフラスィン(Infrathin)と訳している[1]。
名称
[編集]「下の、下方の」という意味の接頭語「infra-」と、「薄い」という意味の形容詞「mince」を組み合わせたマルセル・デュシャンの死後に刊行された一群のメモの中に出てくる新造語。物理的な薄さ(マンス)をこえた(アンフラ)、いわば三次元と四次元、見える世界と見えない世界との間の、識閾ともいうべき領域を指すと思われる[1]。
デュシャンは、影やクモの巣や穴のあいた薄い紙や容器の中の液体と側壁、また煙草の煙とそれを吐く口・・・・・・といった実例の数々を列挙し、アンフラマンスというブラックホールのような言葉をこれらの<寓意>でもって囲い込もうとしている[1]。
使用例
[編集]マルセル・デュシャンのメモは、「グリーン・ボックス」と「ホワイト・ボックス」と「1914年のボックス」、これはメモが三、四枚しかないのと、あとコダックのフィルムの箱に入っている1935年のメモ、死んでから発表された『マルセル・デュシャン・ノート』[2]というメモ群が存在する。しかし「グリーン・ボックス」「ホワイト・ボックス」には「アンフラマンス」という言葉は一度も出てこない。
1945年、ニューヨークの『View』誌の裏表紙に、「煙草の煙と、それを吐く口と同じ臭いのとき、それはアンフラマンスにおいて結び付く」というメモの言葉が変わったレタリングで印刷されていた[1]。
脚注
[編集]出典
[編集]- 米澤敬『はかりきれない世界の単位』創元社、2017年、ISBN 978-4-422-70107-3
- 東野芳明『マルセル・デュシャン「遺作論」以後』美術出版社、1990年、ISBN 4-568-20136-5