イカナゴ科
イカナゴ科 | |||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Gymnammodytes cicerelus
| |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Sand lances | |||||||||||||||||||||||||||
下位分類 | |||||||||||||||||||||||||||
本文参照
|
イカナゴ科(学名:Ammodytidae)は、スズキ目ワニギス亜目に所属する魚類の分類群の一つ。イカナゴ・タイワンイカナゴなど、水産上重要な小型魚を中心に7属33種が記載される[1][2]。科名の由来は、ギリシア語の「ammos(砂)」と「dytes(潜る)」から[2]。
分布・生態
[編集]イカナゴ科の魚類はすべて海水魚で、インド洋・太平洋・大西洋など世界中の海に幅広く分布する[1]。北極海をはじめとする寒冷な海に暮らす種類は資源量が極めて大きく、中・大型魚類や海棲哺乳類・海鳥の餌生物として重要な存在となっている[3]。日本近海には少なくとも4属5種が知られ、特にイカナゴ・キタイカナゴは食用魚として広く利用される[3]。
本科魚類は他のワニギス亜目の仲間と共通して、砂地に潜る習性をもつ。多くのイカナゴ類は昼間に大きな群れを成して遊泳し、浮遊性の動物プランクトンを捕食するなど活発に活動する一方、夜間は砂底の海底に体をうずめて休息する[4]。遊泳から休息に移行する薄暮時(あるいは逆の薄明時)には捕食者が休息地に集まる姿が観察されており、イカナゴ類にとって最も危険な時間帯となっている[5]。
形態
[編集]イカナゴ科の魚類は円筒形の細長い体型をもち、最大種では全長30cmほどに成長する[1][3]。一般に、熱帯域に生息する種に比べ、極圏に近い冷たい海で暮らすものほど形態の特化が進む傾向にある[3]。
ほとんどの種類は歯をもたず、下顎は上顎よりも長く突き出す[1]。鱗は微小な円鱗で数は非常に多く、斜めに配列する[1]。側線は体側の高い位置、背鰭のすぐ近くを走行する[1]。浮き袋をもたない[1]。
背鰭は1つで基底は長く、棘条はなく40-69本の軟条で構成される[1]。臀鰭は14-36本の軟条からなり、尾鰭は二又に分かれる[1]。腹鰭を欠く種類が多いが、タイワンイカナゴおよび Protammodytes 属の1種(P. sarisa)のみ1棘4-5軟条の腹鰭を喉の位置に有している[1][3]。
Hyperoplus 属を除き、前上顎骨を突出させることができる[1]。鰓条骨は7本[1]。椎骨は52-78個と多く[1]、尾椎の数が腹椎よりも少ないというスズキ目の中では例外的な特徴をもつ[3]。
分類
[編集]イカナゴ科にはNelson(2006)の体系において8属23種が認められている[1]。本項では、FishBaseに記載される7属33種についてリストする[2][6]。本科は同じワニギス亜目に所属するトラキヌス科・ミシマオコゼ科を合わせたグループの姉妹群に当たることが示唆されている[1]。
- イカナゴ属 Ammodytes
- ミナミイカナゴ属 Ammodytoides
- Ammodytoides gilli
- Ammodytoides idai
- ゴマヒレミナミイカナゴ Ammodytoides kanazawai
- ミナミイカナゴ Ammodytoides kimurai
- Ammodytoides leptus
- Ammodytoides praematura
- Ammodytoides pylei
- Ammodytoides renniei
- Ammodytoides vagus
- Ammodytoides xanthops
- タイワンイカナゴ属 Bleekeria
- Bleekeria albicauda
- Bleekeria estuaria
- Bleekeria kallolepis
- タイワンイカナゴ Bleekeria mitsukurii
- Bleekeria murtii
- Bleekeria nigrilinea
- Bleekeria profunda
- Bleekeria viridianguilla
- Gymnammodytes 属
- Gymnammodytes capensis
- Gymnammodytes cicerelus
- Gymnammodytes semisquamatus
- Hyperoplus 属
- Hyperoplus immaculatus
- Hyperoplus lanceolatus
- ヨロイイカナゴ属 Lepidammodytes
- ヨロイイカナゴ Lepidammodytes macrophthalmus
- モトイカナゴ属 Protammodytes
- モトイカナゴ Protammodytes brachistos
- Protammodytes sarisa
- Protammodytes ventrolineatus
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『Fishes of the World Fourth Edition』 p.408
- ^ a b c d e “Ammodytidae”. FishBase. 2023年9月18日閲覧。
- ^ a b c d e f 『日本の海水魚』 p.556
- ^ 『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.315
- ^ 『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.407
- ^ Nelson(2006)に記載される Embolichthys 属は、FishBaseではタイワンイカナゴ属あるいは Protammodytes 属のシノニムとして扱われている。
参考文献
[編集]- Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Fourth Edition』 Wiley & Sons, Inc. 2006年 ISBN 0-471-25031-7
- Gene S. Helfman, Bruce B. Collette, Douglas E. Facey, Brian W. Bowen 『The Diversity of Fishes Second Edition』 Wiley-Blackwell 2009年 ISBN 978-1-4051-2494-2
- 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2
外部リンク
[編集]- 日本産イカナゴの資源生態学的研究 広島大学生物生産学部紀要 : Journal of the Faculty of Applied Biological Science, Hiroshima University Vol.30 no.2 page.135-192 (19911200)
- FishBase‐イカナゴ科 (英語)