イカそうめん
イカそうめん(同義異字:烏賊素麺、いかソーメン、等々)は、生のイカを麺状に細く切り、醤油やつゆを付けて「文字通りそうめんのように」啜って食べる日本料理[1]。北海道、特にイカの水揚げで知られる函館の名産として紹介される[1][2]。
語源
[編集]「イカそうめん」は、古くから定着した言葉ではない。北海道出身の渡辺淳一『これを食べなきゃ―わたしの食物史』(1995年)によれば、当時の感覚で「最近」流行ってきた呼称で、「もとをただせば、イカ刺しを細かく切ったものに過ぎない」という[3]が、それは札幌に住む著者の経験談であり、地元の函館でいつからこの名があるかは検証を要する。これより四半世紀遡る著作で、楠本憲吉は、イカそうめんと同じく「丼一杯、生イカをトコロテンのように切って盛ったものと、土しょうがのおろしと醬油」のことを、〈海のそうめん〉と紹介する[4][5][6]。なお、海藻の紅藻類ウミゾウメン科のウミゾウメン[7]を流通段階や飲食店で海そうめんと呼ぶことがある[8]。地方によってはアメフラシの卵塊を海ぞうめんと呼ぶ[注 1]が、そちらは干物である。イカそうめんや海藻のウミゾウメンと異なり、アメフラシの卵塊を生で食べると腹を壊す[7]。
特徴
[編集]イカの身を2枚あるいは3枚に分け、包丁で細切りに引いていく。文字通り「素麺のように細く」[9]とする文献もあるが、「トコロテンのよう」[4]、「幅5mm」[10]などと太さについての記述はまちまちである。
細切りは一杯に丼に盛り[9][4]、つけだれは、醤油をショウガ(生姜)と和えた生姜醤油[4][1]、あるいは、めんつゆ(麺露)[1][9]を使う。場合によっては平皿に盛られ[1][9]、ワサビ醤油を用いてもよい[10]。
「文字通りそうめんのようにツルツルと頂く」ものであるが[1]、上述したようにそうめんの細さ(1.7mm)とは限らず、「うどんのように食べる」とも形容されている[9]。
函館などイカの水揚げ地では、鮮度の良いものは身が透き通っていて[1]、歯応えもあり、「特に、活けの状態で運ばれてきた朝とれのイカは、甘みが抜群という[1]」。種類は、夏より出回り漁獲量も多いスルメイカを使う。
食材のイカは、たいてい初夏から出回り漁獲量も多いスルメイカが用いられる[11][1][9]。アオリイカ、ヤリイカを使う料理人もいる。
一般にはパック詰めにした商品も販売されている。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i 上村, 一真 (2008), ローカル魚で絶品ごはん, 枻出版社, pp. 31-32, ISBN 4777910733
- ^ 藤嶋, 栄 (1996-05), “秋田地方の歴史と秋田県人気質”, 行政監察月報 440: 1 , "北海道(函館)では、「いかそうめん」"(秋田行政監察事務所長、函館、広島を歴任)
- ^ 川端, 晶子; 淵上, 匠子 (2006), おいしさの表現辞典, 東京堂出版,, p. 151
- ^ a b c d 楠本, 憲吉 (1970), たべもの歲時記, 読売新聞社, p. 235
- ^ 楠本, 憲吉 (1970), たべもの歲時記, 読売新聞社, p. 235
- ^ 全国の物産と産業, 通産企画調査会, (1984), p. 22 , "朝イカの刺身は「海のそうめん」と呼ばれ食通にはこたえられない"
- ^ a b “丹後の海の生き物(ウミゾウメン)”. 京都府. 2021年10月27日閲覧。
- ^ “海素麺?モズクじゃないんだ。”. 横浜丸魚株式会社. 2021年10月27日閲覧。
- ^ a b c d e f 成瀬, 宇平 (2011), 47都道府県・魚食文化百科, 丸善出版, p. 44, ISBN 4621084062
- ^ a b 久保, 香菜子 (2008), 基本がきちんと身につく!お料理の教科書, 枻出版社, p. 27, ISBN 4777910733
- ^ 小沼, 明美 (2013), いかの種類と旬, オールアバウト , "日本で一番とれるこのいかは、函館名物いかそうめんに使われます"
関連項目
[編集]- イカ#食材 :イカの主な料理法一覧。
- 刺身 - 刺身#日本国内の類似料理