イットリウム・鉄・ガーネット
イットリウム鉄ガーネット | |
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分類 | 合成鉱物 |
化学式 | Y3Fe2(FeO4)3 or Y3Fe5O12 |
モル質量 | 737.94[1] |
色 | 緑[1] |
密度 | 5.11 g/cm3[1] |
その他の特性 | フェリ磁性化合物 |
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
イットリウム・鉄・ガーネット(イットリウム・てつ・ガーネット、Yttrium Iron Garnet)、略称 YIGとは、イットリウムと鉄の複合酸化物(Y3Fe2(FeO4)3 または Y3Fe5O12)から成るガーネット構造の結晶である。フェリ磁性化合物であり[1]、キュリー温度は560ケルビンである[2] 。YIGは、イットリウムフェライトガーネット、イットリウム鉄酸化物、鉄イットリウム酸化物などとも言い、後2者の呼び方は通常は粉末形態で用いられる[3]。
特徴
[編集]自然界には存在しない人工物で主に固体レーザの発振用媒質として、結晶製造時に他の元素をドープ(添加)して結晶構造内のイットリウムのうち数%を置き換えたものが用いられる。磁気光学効果を有するフェリ磁性材料で5個の鉄(III)イオンが2個の八面体部位および3個の4面体部位を占め、イットリウム(III)イオンは不規則な立方体中の8個の酸素イオンによって配位されている[4]。2か所の八面体位置の鉄イオンは異なるスピンを持ち、これが磁気特性となって表れる。希土類元素を特定の位置に配置すると、興味深い磁気特性が得られる[5]。
YIGは、高いベルデ定数を持ち、このためにファラデー効果が現れ[6]、マイクロ波の周波数に対して高いQ値を持ち[7]、1200ナノメートルまでの波長の赤外線の吸収率が低く[8]、電子スピン共鳴においてとても小さなスペクトル線広がりを持つ。こうした特徴が、超伝導体における磁気光学イメージングに有用となる[9]。
用途
[編集]YIGは、マイクロ波工学、音響学、光学、磁気光学といった用途がある。マイクロ波YIGフィルター、音響送信機、音響トランスデューサーなどである[10]。600ナノメートル以上の波長の光には透明である。ファラデー回転子における固体レーザー、データストレージ、様々な非線形光学用途にも用いられる[11]。
脚注
[編集]- ^ a b c d “Yttrium Iron Garnet - YIG”. American Elements. April 1, 2015閲覧。
- ^ Vladimir Cherepanov; Igor Kolokolov; Victor L'Vov (1993). “The Saga of YIG: Spectra, Thermodynamics, Interaction and Relaxation of Magnons in a Complex Magnet”. Physics Reports 229 (3): 84–144. Bibcode: 1993PhR...229...81C. doi:10.1016/0370-1573(93)90107-o.
- ^ “Yttrium Iron Oxide / Yttrium Ferrite (Y3Fe5O12) Nanoparticles – Properties, Applications”. AZoNano.com (September 10, 2013). April 1, 2015閲覧。
- ^ 野田稲吉, 「人工鉱物について」『材料試験』 9巻 87号 1960年 p.715-720, doi:10.2472/jsms1952.9.715
- ^ J Goulon; A Rogalev; F Wilhelm; G Goujon; A Yaresko; Ch Brouder; J Ben Youssef (2012). “Site-selective couplings in x-ray-detected magnetic resonance spectra of rare-earth-substituted yttrium iron garnets”. New Journal of Physics 14 (6): 063001. Bibcode: 2012NJPh...14f3001G. doi:10.1088/1367-2630/14/6/063001.
- ^ K.T.V. Grattan; B.T. Meggitt, eds (1999). Optical Fiber Sensor Technology: Volume 3: Applications and Systems. Springer Science & Business Media. pp. 214–215. ISBN 9780412825705 April 2, 2015閲覧。
- ^ Leonid Alekseevich Belov; Sergey M. Smolskiy; Viktor Neofidovich Kochemasov (2012). Handbook of RF, Microwave, and Millimeter-wave Components. Artech House. p. 150. ISBN 9780412825705 April 2, 2015閲覧。
- ^ Rajpal S. Sirohi (1990). Optical Components, Systems and Measurement Techniques. CRC Press. p. 80. ISBN 9780824783952 April 2, 2015閲覧。
- ^ “Magneto-Optical Imaging of Superconductors”. Department of Physics, University of Oslo (November 30, 2010). April 2, 2015閲覧。
- ^ “Periodic Table of Elements: Yttrium”. Los Alamos National Laboratory. April 1, 2015閲覧。
- ^ Holm, U., Sohlstrom, H., & Brogardh, T. (1984). "YIG-Sensor Design for Fiber Optical Magnetic-Field Measurements". Proceedings of the Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers, 514, 333–336.
参考文献
[編集]- 佐藤正雄, 福田俊平, 「YF3-PbF2熔融塩浴によるイットリウム鉄ガーネット単結晶の製造」『窯業協會誌』 71巻 805号 1963年 p.101-104, doi:10.2109/jcersj1950.71.101
- 大澤明弘, 「元素置換したイットリウム鉄ガーネットのNMRによる研究」 電気通信大学修士論文 2011年