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マスタードガス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イペリットから転送)
マスタードガス
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識別情報
CAS登録番号 505-60-2 チェック
PubChem 10461
ChemSpider 21106142 チェック
KEGG C19164 チェック
ChEBI
ChEMBL CHEMBL455341 チェック
特性
化学式 C4H8Cl2S
モル質量 159.08 g mol−1
外観 粘性の液体
純粋なものは無色透明
通常は薄い黄色~暗褐色
匂い ニンニクもしくはホースラディッシュ様の微かな臭気[1]
密度 1.27 g/mL, 液体
融点

14.4 °C, 287.6 K, 57.9 °F

沸点

218 °C, 491 K, 424 °F (217 °Cで分解し始め、218 °C で沸騰)

への溶解度 無視できるほど
溶解度 エーテルベンゼン脂肪アルコールテトラヒドロフランに溶ける
危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
EU分類 Very toxic (T+)
Dangerous for the environment (N)
Vesicant
Carc. Cat 1
主な危険性 毒, contact hazard, inhalation hazard, corrosive, environmental hazard, carcinogenic, possibly mutagenic
NFPA 704
1
4
1
引火点 105 °C
関連する物質
関連物質 ナイトロジェンマスタードビス(クロロエチル)エーテル
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

マスタードガス(Mustard gas)は、化学兵器のひとつでびらん剤である2,2'-硫化ジクロロジエチル(2,2'-Dichloro Diethyl Sulfide)という化合物を主成分とする。びらん剤皮膚をただれさせる薬品)に分類される。硫黄を含むことから、サルファマスタード(Sulfur mustard gas)とも呼ばれる。毒ガス史上1番多くの命を奪ったことから化学兵器の王様とも呼ばれている。

概要

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主にチオジグリコール塩素化することによって製造される。また、二塩化硫黄エチレンの反応によっても生成される。

純粋なマスタードガスは、常温で無色・無臭であり、粘着性の液体である。不純物を含むマスタードガスは、マスタード(洋からし)、ニンニクもしくはホースラディッシュ(セイヨウワサビ)に似た臭気を持ち、これが名前の由来である。他にも、皮膚につくと傷口にマスタードをすりこまれるぐらいの痛さという説もある[要出典]第一次世界大戦イープル戦線で初めて使われたため、イペリット(Yperite)とも呼ばれる。また、不純物が多いときに呈する黄色黄土色がマスタードに似ていたという説もある。

実戦での特徴的な点として、残留性および浸透性が高いことが挙げられる。特にゴムを浸透することが特徴的で、ゴム引き布を用いた防護衣では十分な防御が不可能である[2]。またマスクも対応品が必要である。気化したものは空気よりもかなり重く、低所に停滞する。

マスタードガスは遅効性であり、被害を受けても気づくのが遅れる。皮膚以外にも消化管や、造血器に障害を起こすことが知られていた。この造血器に対する作用を応用し、マスタードガスの誘導体であるナイトロジェンマスタード抗がん剤悪性リンパ腫に対して)として使用される。

ナイトロジェンマスタードの抗がん剤としての研究は、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国で行われていた。しかし、化学兵器の研究自体が軍事機密であったことから、戦争終結後の1946年まで公表されなかった。一説には、この研究は試作品のナイトロジェンマスタードを用いた人体実験の際、白血病改善の著効があったためという。[要出典]

人体への作用

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マスタードガスは人体を構成する蛋白質DNAに対して強く作用することが知られており、蛋白質やDNAの窒素と反応し(アルキル化反応)、その構造を変性させたり、DNAのアルキル化により遺伝子を傷つけたりすることで毒性を発揮する。このため、皮膚や粘膜などを冒すほか、細胞分裂の阻害を引き起こし、さらに発ガンに関連する遺伝子を傷つければガンを発症する恐れがあり、発癌性を持つ。また、抗がん剤と同様の作用機序であるため、造血器や腸粘膜にも影響が出やすい。

人体への影響は非常に長く続く。イラン・イラク戦争でマスタード・ガスの被害に遭った民間人は、30年以上経過してもなお後遺症に悩まされている[3]

歴史

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その他

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フラットウッズ・モンスターの目撃者の症状がこのマスタードガスを浴びた際の症状に似ているという[要出典]

関連項目

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出典

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