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エチルサリン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

エチルサリン(ethylsarin)とは、有機リン化合物の一種サリンアナログ(類縁体)で、サリンのメチル基またはイソプロピル基のどちらかがエチル基になっている物質である。前者がイソプロピルエチルホスホン酸フルオリダート(isopropyl ethylphosphonofluoridate)、後者がエチルメチルホスホン酸フルオリダート(ethyl methylphosphonofluoridate)で、この2種類の物質のどちらを指す事もある。

イソプロピルエチルホスホン酸フルオリダート

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エチルサリン
(イソプロピルエチルホスホン酸フルオリダート)
識別情報
CAS登録番号 1189-87-3
PubChem 65566
ChemSpider 59009
特性
化学式 C5H12FO2P
モル質量 154.12 g mol−1
沸点

170 °C, 443 K, 338 °F

蒸気圧 1.97 mmHg
危険性
主な危険性 Extremely toxic
引火点 56.7 °C (134.1 °F; 329.8 K)
半数致死量 LD50 690 mg/kg (mice, intraperitoneal)[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

日化辞webとアンソニ・トゥーの論文[2]でエチルサリンとされているのは、エチルホスホノフルオリド酸のイソプロピルエステルである。CAS登録番号は1189-87-3である。

化学兵器として用いられ、化学兵器としての略号はGEである。第二次世界大戦後に開発された。ただし毒性情報はBo Holmstedtによる1報しかなく、それによれば、マウスのLD50は腹腔内投与で0.69 mg/kgで、サリンと同程度とされている[3]

エチルメチルホスホン酸フルオリダート

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エチルメチルホスホン酸フルオリダート

TOXNET内のChemIDplusでエチルサリンとされているのは、メチルホスホノフルオリド酸のエチルエステルである。CAS登録番号は673-97-2である。EMPFと略される。VX-Gという別名もある。

サリンが人体内で分解されて生成する物質であり、尿中に排泄される。

オウム真理教裁判

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オウム真理教松本サリン事件地下鉄サリン事件に関する裁判で、麻原彰晃弁護団と、土谷正実は、使用された毒ガスはエチルサリンである(オウムのものではない)と主張したことがある。ただし、ここでいうエチルサリンがどちらのものであるかは明確になっていない[4]

また、地下鉄サリン事件の被害者の尿中からエチルサリン(CAS 673-97-2)が検出されており、これは被害者がエチルサリンを吸入したことを示すものであるとする説[5]が、南正康カナダ防衛研究所から報告されている。

脚注

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  1. ^ ChemIDplus”. 2018年11月5日閲覧。
  2. ^ Anthony T. Tu (1997). “化学兵器の毒作用と治療”. 日本救急医学会雑誌 8 (3): 91-102. doi:10.3893/jjaam.8.91. https://doi.org/10.3893/jjaam.8.91 . 
  3. ^ Bo Holmstedt (1959). “PHARMACOLOGY OF ORGANOPHOSPHORUS CHOLINESTERASE INHIBITORS”. Pharmacol. Rev. 11 (3): 567-688. http://pharmrev.aspetjournals.org/content/11/3/567. 
  4. ^ 地下鉄サリン事件”. 麻原彰晃(松本智津夫)第一審公判弁論要旨. オウム裁判対策協議会 (2003年10月30日). 2015年11月24日閲覧。
  5. ^ 東京サリン事件の戦時に使用されるガスによる中毒患者の臨床観察