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イワボタン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イワボタン
神奈川県三浦半島 2020年3月中旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ上類 Superrosids
: ユキノシタ目 Saxifragales
: ユキノシタ科 Saxifragaceae
: ネコノメソウ属 Chrysosplenium
: イワボタン C. macrostemon
学名
Chrysosplenium macrostemon Maxim.[1]
和名
イワボタン(岩牡丹)[2]

イワボタン(岩牡丹、学名Chrysosplenium macrostemon)は、ユキノシタ科ネコノメソウ属多年草[3][4][2][5]。別名、ミヤマネコノメソウという[1][3]

特徴

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ボタンネコノメソウに似るが、比べるとが細長い[6]根出葉は広卵形から狭卵形で、明確な葉柄があり、花時まで残る。走出枝は地上性で、花後に伸長して、その先端近くには基部のものより大型の葉を数対ロゼット状につける。花茎はふつう高さ10-20cmになり、暗紅色をおび、葉腋を除き毛はない。茎葉は1-2対が対生し、葉身は長さ0.5-5cmになる卵円形から卵状楕円形で、基部はくさび形になり、上縁には4-9個の内曲する鋸歯がある。葉柄は長く、長さ2.5cmになり、ふつう葉の表面には灰白色の斑紋がある[2][5][7]

花期は3-4月[3]花序を取り囲む苞葉は、下部のものは暗緑色または濃緑色で、楕円形から楕円状披針形、上部のものは鮮黄色または緑黄色で卵形になる。花の径は3-4.5mm。裂片は4個で花時に斜開または直立し、長さは1-1.8mm、楕円形から三角状卵形になり、色は淡緑色から黄緑色になる。花盤は緑白色になる。花弁は無い。雄蕊はふつう8個、まれに4個あり、長さ2-3mmあって萼裂片より長く、花時に斜上するか直立する。裂開直前の葯はふつう黄色、まれに帯赤褐色をし、花粉は黄色になる。子房は中位。花柱は2個あり、長さ1.5-2mmで、花時に直立する。果実は朔果で2個の心皮は大きさが異なり、朔果の嘴は斜開する。種子は楕円形から卵形で、長さ約0.8-1mm、縦に10数個の隆条があり、棍棒状の突起が密にならぶ[2][5][7]

分布と生育環境

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日本固有種[6]。本州の関東地方以西の太平洋側、四国、九州に分布し[3][4][5][6]、低山帯の沢沿いのやや暗い水湿地などに生育する[3][2][5]

名前の由来

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和名イワボタンは、「岩牡丹」の意[2]。枝の葉が大型になり、ボタンの花のようであることによる。別名のミヤマネコノメソウは「深山猫眼草」の意[7]

種小名(種形容語)macrostemon は、「長い雄蕊の」の意味[8]

ギャラリー

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下位分類

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下位分類として変種に次の4種がある[5]

ヨゴレネコノメ

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ヨゴレネコノメ(汚れ猫の目) Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. atrandrum H.Hara[9] - 上部の苞葉は淡黄色から淡黄緑色。基本種に似るが、萼裂片は暗褐紫色から淡緑色で花時にほぼ直立する。雄蕊は4-8個で、裂開直前の葯は暗紅色をしている。花糸、花盤、花柱、子房も紅紫色をおびる。花期は4月。本州の関東地方以西の太平洋側、四国、九州に分布する[2][5][6]

ニッコウネコノメ

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ニッコウネコノメ(日光猫の目) Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. shiobarense (Franch.) H.Hara[10] - 花茎の高さは4-18cm。茎葉は対生し、葉身は卵形で長さ1-2.5cm。基本種やヨゴレネコノメに似るが、萼裂片は黄白色で花時に直立せずほぼ平開する。雄蕊はふつう8個、まれに4個で、裂開直前の葯は暗紅紫色をしている。花期は4-5月。花時にはふつう根出葉は存在しない。花後に長さ30cmになる走出枝を出す。本州の東北地方から中部地方の太平洋側に分布し、山地の谷沿いの湿った場所に生育する[2][5][6]

キシュウネコノメ

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キシュウネコノメ(紀州猫の目) Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. calicitrapa (Franch.) H.Hara[11] - 基本種に似るが、裂開直前の葯は暗紅色をおびる。種子の隆条上の突起はさらに細長くなる。紀伊半島に分布する[5][6]。基本種と区分しない考えもある[11]

サツマネコノメ

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サツマネコノメ(薩摩猫の目) Chrysosplenium macrostemon Maxim. var. viridescens (Sutô) H.Hara[12] - 植物体全体が緑色で[5]、変種名 viridescens も「緑色になる」の意味[13]。花茎は横に這い、先端が傾上して立ち上がり、花序をつける。萼裂片は花時には直立し、裂開直前の葯は黄色になる。九州、四国に分布する[5][6]

脚注

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “イワボタン”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2019年1月7日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.271
  3. ^ a b c d e 林 (2009)、430頁
  4. ^ a b 佐竹ほか (1982)、159頁
  5. ^ a b c d e f g h i j k 奥山雄大 (2016)「ユキノシタ科」『改訂新版 日本の野生植物2』p.202
  6. ^ a b c d e f g 『日本の固有植物』pp.71-72
  7. ^ a b c 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.522
  8. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1501
  9. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ヨゴレネコノメ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2019年1月7日閲覧。
  10. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ニッコウネコノメ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2019年1月7日閲覧。
  11. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “キシュウネコノメ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年3月17日閲覧。
  12. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “サツマネコノメ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年3月17日閲覧。
  13. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1519

参考文献

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  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本II離弁花類』平凡社、1982年3月17日。ISBN 458253502X 
  • 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421 
  • 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
  • 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

関連項目

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外部リンク

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