コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

インペリオ (路面電車車両)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
"インペリオ"
"オーセンティック"
インペリオ(アラド市電
2017年撮影)
基本情報
製造所 アストラ・ヴァゴアネ・カラトリルーマニア語版
製造年 2011年 - (インペリオ)
2016年 - (オーセンテイック)
投入先 アラド市電クルジュ=ナポカ市電ガラツィ市電
オラデア市電ブカレスト市電(予定)
主要諸元
編成 2車体 - 6車体連接車
床面高さ 低床率100 %
制動装置 回生ブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6]に基づく。
テンプレートを表示

インペリオ(Imperio)は、ルーマニアアストラ・ヴァゴアネ・カラトリルーマニア語版が展開する、路面電車路線向けの超低床電車ドイツシーメンスが手掛けていた路面電車車両コンビーノ・プラスを基に開発された車両である。この項目では、インペリオと同様の構造を持つ超低床電車のオーセンティック(AUTENTIC)についても解説する[1][2][3]

概要

[編集]

ルーマニアの鉄道車両メーカーであるアストラ・ヴァゴアネ・カラトリルーマニア語版は、2000年代以降ドイツシーメンスが展開する鉄道車両のデジロの最終組み立てなどを経て、同社との関係を強めていた。一方、当時のルーマニア各地の路面電車には近代化を目的にドイツなど各国の中古車両が多数導入されていたが、これらの供給が将来的に枯渇する事に加え、車両自体の老朽化も問題になっていた。そこで2011年、シーメンスが世界各地の路面電車路線へ導入を行っていた超低床電車コンビーノコンビーノ・プラスの技術に基づき、アストラ・ヴァゴアネ・カラトリはアラドに有する工場でルーマニア向けの超低床電車の生産を開始した。これが「インペリオ」である[1][2]

技術の元となったコンビーノ・プラスと同様に、インペリオは各車体に車軸がない独立車輪式台車を有する連接車で、車内全体の床上高さを抑えた100 %低床構造を有し、冷暖房双方に対応した空調装置も完備されている。編成は最短3車体、最大6車体から選択可能で、2車体連接車については「オーセンティック(AUTENTIC)」と言うブランド名が付けられている。また、回生ブレーキ誘導電動機など、主要機器は消費電力を抑えた最新の技術が多く用いられている。多くの部品にルーマニアの国産製品を用いる他、部品数を節約している事から、購入費用を海外メーカー製電車から30 %程抑えているのも特徴である[1][2][7][8]

運用

[編集]

ブランドの発表以降、2010年前半までにインペリオの導入が決定していたのは地元・アラド路面電車であるアラド市電向けの6両のみであり、以降の展開を危ぶむ意見も存在したが、2010年代後半以降は他都市での新型電車に関する入札を次々に獲得し、2024年時点でアラド向け増備車を含む4都市への導入が確定している。そのうち首都ブカレストブカレスト市電向けの車両は、2020年中国中車青島四方機車車輛股份有限公司とコンソーシアムを組み受注も獲得したものである。これらの車両の大半はシーメンスが製造した電気機器が用いられているが、アラド向け増備車についてはブカレストに本社を置く電機メーカーのICPE-SAERPが手掛けた機器を用いた100 %国産部品を用いた車両となっている[1][2][9][5]

2024年時点で、発注予定の車両も含めインペリオおよびオーセンティックの導入都市は以下の通り[1][2][9][5]

インペリオ/オーセンティック 導入都市一覧
都市 編成 運転台 両数 備考・参考
アラド
(アラド市電)
3車体連接車 片運転台 6両 [1][2]
3車体連接車 片運転台 10両(予定) 増備車[1][2][4]
2車体連接車 片運転台 18両(予定) 「インペリオ・シヴィタス(Imperio Civitas)」[1][2][4][10]
クルジュ=ナポカ
(クルジュ=ナポカ市電)
5車体連接車 片運転台 24両(予定) 2021年までに全車導入予定[2][4][11]
オラデア
(オラデア市電)
5車体連接車 両運転台 20両(予定) [4][12]
ガラツィ
(ガラツィ市電)
2車体連接車 片運転台 18両(予定) 「オーセンティック」[4][13]
ブカレスト
(ブカレスト市電)
4車体連接車 片運転台 100両(予定) 「インペリオ・メトロポリタン(Impeio Metropolitan)」[5][14][15]
ブライラ
(ブライラ市電)
2車体連接車 片運転台 10両(予定) [16][17]

関連項目

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g h i Imperio Tram”. Astra Vagoane Călători. 2020年12月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j Prezentare: Tramvaiul Astra Imperio construit la Arad cu licență Siemens cucerește România”. Mobilitate.eu (2019年7月19日). 2020年12月3日閲覧。
  3. ^ a b AUTENTIC Tram”. Astra Vagoane Călători. 2020年12月3日閲覧。
  4. ^ a b c d e f Analiză Mobilitate.eu – Situația achizițiilor de tramvaie noi în România”. Mobilitate.eu (2020年5月2日). 2020年12月3日閲覧。
  5. ^ a b c d Astra Vagoane – CRRC consortium wins Bucharest tram tender Railway PRO” (2020年9月9日). 2020年12月3日閲覧。
  6. ^ Astra develops Autentic low-floor tram”. Railway Gazette International (2016年5月6日). 2020年12月3日閲覧。
  7. ^ Siemens and Romanian Astra Arad's tram Imperio to be tested in Bucharest next spring”. Romania-Insider.com (2011年10月7日). 2020年12月3日閲覧。
  8. ^ 服部重敬「特集 新潟トランシス part4 欧州のGT低床車 世界初の全低床車としての登場から現在まで」『路面電車EX 2017 vol.10』、イカロス出版、2017年10月20日、45頁、ISBN 978-4802204231 
  9. ^ a b Romania's tramway revival – part 2”. LRTA (2016年4月11日). 2020年12月3日閲覧。
  10. ^ Noile tramvaie Astra Imperio Civitas modernizează transportul cu tramvaiul din Arad”. Mobilitate.eu (2022年5月29日). 2022年6月6日閲覧。
  11. ^ Bianca Tămaş (2020年4月13日). “Clujul, codaș la tramvaie. Tramvaiele au fost puse în circulație în 1987, cu 100 de ani mai târziu față de celelalte orașe”. monitorulcj.ro. 2020年12月3日閲覧。
  12. ^ AL ŞASELEA TRAMVAI IMPERIO A AJUNS ÎN ORADEA”. Primaria Oradea (2020年9月1日). 2020年12月3日閲覧。
  13. ^ Libor Hinčica (2024年1月21日). “Rumunská Astra dodá další tramvaje do Galați”. Československý Dopravák. 2024年1月22日閲覧。
  14. ^ Order for 100 modern trams officially signed with Romania”. CRRC (2021年5月27日). 2021年6月4日閲覧。
  15. ^ Vít Hinčica (2022年6月5日). “Do Bukurešti dorazila první tramvaj Astra Imperio Metropolitan”. Československý Dopravák. 2022年6月6日閲覧。
  16. ^ Frederik Buchleitner (2023年12月22日). “Adventskalender: 22. Dezember”. tramreport. 2024年1月15日閲覧。
  17. ^ Astra Vagoane to supply blue Danube trams to Brăila”. Metro Report International (2023年11月3日). 2024年1月15日閲覧。
  18. ^ Light Rail Transit Association (2020-2). “Flurry of orders defines European tram competition”. Tramways & Urban Transit No.986 (LRTA) 83: 48. http://www.bowe.cc/techlib/pdf/Tramways_and_Urban_Transit_vol83_no986_1580586536.pdf 2020年12月3日閲覧。. 
  19. ^ 服部重敬「中国のLRTの現状」『路面電車EX vol.11』、イカロス出版、2018年5月20日、90-99頁、ISBN 978-4-8022-0585-6 

外部リンク

[編集]