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ウェルツ法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ウェルツ法とは、亜鉛や他の低沸点な金属を製錬残渣(典型的には、電気アーク炉ダスト)やその他のリサイクル原料から、ロータリーキルン(ウェルツキルン、ウェルツ炉)を使って 回収する手法である。

亜鉛の濃縮された産物を粗酸化亜鉛と呼び、亜鉛の減少した副産物をクリンカーと呼ぶ。

歴史と解説

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ロータリーキルンを使って亜鉛を揮発させることによって回収する概念は、1888年に遡ることができる。[1] このような方法は、Edward Dedolphによって1910年に特許が取得されている。 Dedolphの特許は、フランクフルトのMetallgesellschaft社によってChemische Fabrik Griesheim-Elektron社の協力の下、実用化が検討されたが、 実用的な規模のプロセスを実現することはできなかった。 1923年にKrupp Grusonwerk社が、同様のプロセスが独立して開発され、ウェルツ法と名付けられた(ウェルツ(waelz)とは、ドイツ語のWaelzenという炉内の 物質の動きを表す語からとられた)。 後に、ドイツの2社によりWaelz-Gemeinschaft (Waelz associationの意味のドイツ語)として開発と普及が図られた。[2]

ウェルツ法は、亜鉛を含む原料を取り扱う。ここで亜鉛は、酸化亜鉛やケイ酸亜鉛、ジンクフェライト、硫化亜鉛に炭素を含んだ還元剤や燃料を混合して供給され、 1000〜1500℃のロータリーキルン内で処理される。[1] 炉へ供給される原料は典型的には、亜鉛含有「廃棄物」、フラックス、還元剤(コークス)をペレット化したものである。[3] 炉内では、原料中の亜鉛化合物は還元されて金属亜鉛(沸点907℃)となり揮発する。 揮発した金属亜鉛は、気相中で酸化され、酸化亜鉛になる。 酸化亜鉛は、炉の排ガスと一緒に炉外へ排出され、濾過集塵装置や電気集塵器、重力式集塵装置などで回収される。[4][3]

ロータリーキルンは、典型的には長さ50メートル、内径3.6メートルであり、回転速度は1 rpmである。 回収された粗酸化亜鉛は、亜鉛製錬所へ送られる。 亜鉛含有量の減少した副産物はクリンカーと呼ばれる。 ウェルツ法には、エネルギー消費量が多く、鉄を回収できずクリンカーに鉄分が多く含まれるという問題点がある。[3] また、亜鉛以外の金属(鉛やカドミウム、銀など)が粗酸化亜鉛に混入する。[5] ハロゲン化物も粗酸化亜鉛に混入する。[6]

鉄鋼への溶融亜鉛めっきが増加するにつれて、鉄スクラップ中の亜鉛の含有率も増加してきた。 これによる電気アーク炉の排ガス中のダストに含まれる亜鉛も増加している。 2000年の時点では、ウェルツ法は電気アーク炉ダストからの亜鉛回収における、利用可能な最良の技術であると考えられており、 全世界で工業的に利用されている。[7]

2014年の時点では、ウェルツ法は電気アーク炉ダストの90%を処理するのに利用されている。[8]

電気アーク炉ダストの処理方法として他には、パレット化された亜鉛含有ダストを処理する回転炉床式還元炉(日本製鉄 東日本製鉄所君津地区で利用)[9][10]や ウェルツ法の効率を改善したSDHL (Saage, Dittrich, Hasche, Langbein)法[3]、 高炉を改造して高炉ダストから銑鉄と酸化亜鉛ダストを得るDK法[11]、 多段炉で亜鉛を揮発させるPRIMUS法[12][13] が開発・利用されている。

脚注

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  1. ^ a b Clay & Schoonraad 1976, p. 11.
  2. ^ Harris 1936.
  3. ^ a b c d Stewart, Daley & Stephens 2000, Recovery of Zinc Oxide from secondary raw materials : New developments of the Waelz Process
  4. ^ Clay & Schoonraad 1976, pp. 11, 13.
  5. ^ Antrekowitsch et al. 2014, p. 118.
  6. ^ Antrekowitsch et al. 2014, p. 119.
  7. ^ Stewart, Daley & Stephens 2000, Recovery of Zinc Oxide from secondary raw materials : New developments of the Waelz Process.
  8. ^ Antrekowitsch et al. 2014, pp. 117–118, 119.
  9. ^ Oda, Hiroshi; Ibaraki, Tetsuharu; Takahashi, Masaharu (July 2002), “Dust Recycling Technology by the Rotary Hearth Furnace”, Nippon Steel Technical Report (86), http://www.nssmc.com/en/tech/report/nsc/pdf/8607.pdf 
  10. ^ Oda, Hiroshi; Ibaraki, Tetsuharu; Abe, Youichi (July 2006), “Dust Recycling System by the Rotary Hearth Furnace”, Nippon Steel Technical Report (94), http://mmmmconferences.com/01JyunpeiKikuta_29Sept2012.pdf 
  11. ^ Hillmann, Carsten; Sassen, Karl-Josef (2006), “Solutions for dusts and sludges from the BOF process”, Stahl und Eisin 126 (11), http://www.dk-duisburg.de/en/unternehmen/img/artikel_stahleisen2006.pdf 
  12. ^ J. L., Roth; R., Frieden; Hansmann, T.; Monai, J.; Solvi, M. (Nov 2001). “PRIMUS, a new process for recycling by-products and producing virgin iron”. Revue de Métallurgie 98 (11): 987–996. doi:10.1051/metal:2001140. 
  13. ^ “The PRIMUS process by Paul Wurth: cutting-edge technology for recycling iron and steel by-products by direct reduction”, www.innovation.public.lu, (3 Aug 2003), http://www.innovation.public.lu/en/success-stories/2003/primus-paul-wurth/index.html 

資料

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外部リンク

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