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バンド理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エネルギー帯から転送)

固体物理学における固体のバンド理論(バンドりろん、: band theory)または帯理論とは、結晶などの固体物質中に分布する電子量子力学的なエネルギーレベルに関する理論を言う。1920年代後半にフェリックス・ブロッホルドルフ・パイエルスレオン・ブリルアンらによって確立された[1]。なお、価電子帯の最高部(: valence band maximum, VBM)と伝導帯の最低部(: conduction band minimum, CBM)とのエネルギー差をバンドギャップといい、価電子帯での電子が占める最高エネルギー準位をフェルミ準位という

概要

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量子力学によると、束縛状態の電子が取りうるエネルギー準位は、特定の準位のみに限定され飛び飛びに(離散的に)なる。しかし、固体中の外殻電子は、隣接する原子の電子との相互作用によって、電子の取りうるエネルギー準位の幅が広がって連続的(バンド構造)になる。

一方で、電子が取りえないエネルギー準位も依然として存在し、バンドとバンドの間の空隙(ギャップ)となる。これをエネルギーバンドギャップという。

ブロッホの定理によると、結晶中の電子の波動関数(結晶中の電子の電子状態)は、波数と呼ばれる量子数によって指定される。このことが、エネルギーと波数の関係式が原理的に書き下せることを保障している。

金属、および半導体絶縁体バンド構造の簡単な模式図

エネルギーバンドの特徴は、絶縁体と金属の違いを説明することができる。絶縁体半導体では、フェルミ準位価電子帯伝導帯の間のギャップの中に存在するため、自由電子が存在しない。一方、金属はエネルギーバンドの中にフェルミ準位が存在するため、バンドギャップを超えることなく電子がエネルギーを得ることができる、すなわち、わずかなエネルギーで電子を動かすことができる(電流が流れる)。このような絶縁体、金属の分類の描像は20世紀の半ばには確立されていた。しかし単純なバンド理論では説明できない絶縁状態(モット絶縁体)も存在し、強相関電子系と呼ばれる分野で研究されている。

方法

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脚注

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  1. ^ 久保(1989) p.2

参考文献

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  • J.N.シャイヴ 著、神山 雅英, 小林 秋男, 青木 昌治, 川路 紳治(共訳) 編『半導体工学』岩波書店、1961年。 
  • 久保 脩治『トランジスタ・集積回路の技術史』オーム社、1989年。 
  • 和光信也:「コンピュータでみる 固体の中の電子:バンド計算の基礎と応用」、講談社サイエンティフィク、ISBN 4-06-153207-3 (1992年12月1日).
  • 小口多美夫:「バンド理論:物質科学の基礎として」、内田老鶴圃、ISBN 978-4-7536-5609-7 (1999年7月25日).
  • Richard M. Martin: Electronic StructureーBasic Theory and Practical Methods, Cambridge University Press, ISBN 978-0-52153440-6 (2008年10月23日). (初版)
    • R.M. Martin:「物質の電子状態」上、丸善出版、ISBN 978-4-621-06249-4 (2012年1月). (原著第1版の訳)
    • R.M. Martin:「物質の電子状態」下、丸善出版、ISBN 978-4-621-06523-5 (2012年11月). (原著第1版の訳)
  • 小口 多美夫:「遷移金属のバンド理論」、内田老鶴圃、ISBN 978-4753655717 (2012年6月).
  • Richard M. Martin: Electronic Structure: Basic Theory and Practical Methods(2nd Ed), Cambridge University Press, ISBN 978-1-10842990-0 (2020年8月27日).

関連項目

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