エブリコ
エブリコ | ||||||||||||||||||||||||
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エブリコの子実体
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||
ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Laricifomes officinalis (Vill.) Kotl. & Pouzar (1957) | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
Agaricum officinale (Vill.) Donk (1971) [1974] |
エブリコ(恵布里古[2]、落葉松寄生[3]、学名: Laricifomes officinalis)は、タマチョレイタケ目に属するキノコの1種である。名称は、樺太アイヌ語で本種を指す「エプリク」に由来する[4]。木材腐朽菌であり、針葉樹に褐色の心材腐朽を引き起こす。ヨーロッパ・アジア・北アメリカ・モロッコで確認されている[5]。英名には"agarikon"、"quinine conk"などがある[6][7]。 かつてはツガサルノコシカケ属に分類されていたが、分子系統解析により分離された[8]。
粉末は非常に苦いため、キニーネを含んでいると考えられて広く採集されていたこともあったが、実際には含まれておらず、抗マラリア作用はない[9]。成分としては、アガリシン酸(Agaric acid、2-ヒドロキシ-1,2,3-ノナデカントリカルボン酸)、エブリコ酸(Eburicoic acid、3β-ヒドロキシ-24-メチレン-5α-ラノスタ-8-エン-21-酸)などが発見されている。
通常、腐朽が発生するのは老木の中の少数の個体である。子実体は60cm程度まで成長し、馬蹄形か円柱状である。若い子実体は黄白色で柔らかいが、すぐに全体が白く固くなる。腐朽材は褐色で、方形の亀裂を生じ、広い亀裂からは太く白いフェルト状の菌糸が覗く。子実体と菌糸は苦く、これは本種の特徴である。子実体の発生は通常、木全体に感染が広がっていることを示す。感染した木は枯立木に営巣する鳥・哺乳類の棲家となる[10]。
利用
[編集]薬用
[編集]西暦65年のペダニウス・ディオスコリデスの記述によると、本種は結核の治療に用いられており[7]、土着の人々は天然痘の治療に用いていたようである[11]。墓所に本種の痕跡が存在することは、かつて本種の利用が一般的であったことを示すのかもしれない。
発火具
[編集]樺太アイヌや北海道の屈斜路湖周辺のアイヌは火打石で火を起こす際、このキノコの粉末をほくちとして用いた[4]。
保護
[編集]野生種は原生林のみに自生し、特にトガサワラ属・カラマツ属の木材に生える。原生林の減少により、野生個体の保全状況には懸念がある。実験室で栽培した株では遺伝的健全性を保持することが困難であるため、野生下での保護が必要である。
文化
[編集]トリンギット・ハイダ族・チムシアン族のような北米太平洋沿岸の先住民にとって、本種は薬用キノコとしても、儀式の素材としても重要であった。現地語では "霊のパン" を意味する名が付けられ、彫刻された子実体がシャーマンの墓を飾るために用いられた[12]。
脚注
[編集]- ^ Kałucka, I.L. & Svetasheva, T. (2019). Fomitopsis officinalis. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T75104087A75104095. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-3.RLTS.T75104087A75104095.en. Downloaded on 09 July 2020.
- ^ “「えぶりこ」の解説”. 精選版 日本国語大辞典(コトバンク). 2021年9月22日閲覧。
- ^ 金沢庄三郎 編「ゑぶりこ(落葉松寄生)」『広辞林』(新訂)三省堂、1934年、1927頁。
- ^ a b 『ものと人間の文化史50 燈用植物』深津正 法政大学出版局 1983 p93
- ^ Chlebicki, Andrzej; Mukhin, Viktor A.; Ushakova, Nadezhda (2003). “Fomitopsis officinalis on Siberian Larch in the Urals”. Mycologist 17 (3): 116-120. doi:10.1017/S0269915X03003057.
- ^ Ginns, J. (2006年). “Annotated Key to Pacific Northwest Polypores”. Pacific Northwest Key Council. 2011年4月17日閲覧。
- ^ a b Stamets, Paul (2005). “Medicinal Polypores of the Forests of North America: Screening for Novel Antiviral Activity” (PDF). International Journal of Medicinal Mushrooms 7: 362. doi:10.1615/intjmedmushr.v7.i3.210 .
- ^ Kim, Kyung Mo; Yoon, Yuh-Gang; Jung, Hack Sung (2005). “Evaluation of the monophyly of Fomitopsis using parsimony and MCMC methods”. Mycologia 97 (4): 812-822. doi:10.3852/mycologia.97.4.812. PMID 16457351 .
- ^ Arora, David. Mushrooms Demystified. Ten speed Press: 1986. p. 580.
- ^ Hagle, Gibson, Tunnock. A Field Guide to Diseases & Insect Pests of Northern & Central Rocky Mountain Conifers. USDA Forest Service: 2003, pg 29
- ^ Walker, Brett (May 1999). “The Early Modern Japanese State and Ainu Vaccinations: Redefining the Body Politic 1799-1868”. Past & Present 163 (1): 154. doi:10.1093/past/163.1.121. PMID 22049584 13 March 2013閲覧。.
- ^ Blanchette, Robert A.; Compton, Brian D.; Turner, Nancy J.; Gilbertson, Robert L. (Jan-Feb 1992). “Nineteenth Century Shaman Grave Guardians Are Carved Fomitopsis officinalis Sporophores”. Mycologia 84 (1): 119-124. doi:10.2307/3760412. JSTOR 3760412.
外部リンク
[編集]- Index Fungorum
- USDA ARS Fungal Database
- Brown Trunk Rot, Trees, insects and diseases of Canada's forests, Natural Resources Canada
- Agarikon, Cornell University Mushroom Blog