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エリスロシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エリスロシン2ナトリウム塩
識別情報
CAS登録番号 16423-68-0 チェック
PubChem 3259
ChemSpider 3144 チェック
UNII PN2ZH5LOQY チェック
E番号 E127 (着色料)
ChEMBL CHEMBL1332616
特性
化学式 C20H6I4Na2O5
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

エリスロシン (erythrosine) は、食用タール色素に分類される、赤色合成着色料の1つである。赤色3号(あかいろさんごう)の通称でも呼ばれる。食品添加物としてE番号の「E127」が与えられてはいるものの、生体に有害である可能性が疑われており、食品に対して使用禁止措置を講じている地域も存在する[要出典]

構造と性質

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エリスロシンの分子式はC20H8I4O5であるため、分子量は約835.9である。エリスロシンが有するフェノール性水酸基も含めてナトリウム塩にした場合は、C20H6I4Na2O5なので、そのモル質量は約879.9 (g/mol)である。なお、一般的にナトリウムなどのの形すると、水溶性が向上する。

エリスロシンは有機ヨウ素化合物である。さらに、その構造から明らかなように、分子内にπ電子雲の広がっており、その吸光波長はヒトの可視光の領域にも存在するため、色素として利用できる。具体的には、常温常圧でエリスロシンは赤色から褐色の固体として存在し、その水溶液の吸光波長の極大は524 nmから528 nmに存在する[1][注釈 1]。ただし、光に対して、やや不安定であり[1]、直射日光などに曝されると、色調が変化してゆくなどの欠点を有する。

またエリスロシンは、酸性条件で、やや不安定であり[1]、酸性領域では水溶性が一気に低下するだけでなく、無色化するという欠点を有する[2]。一方で、熱に対しては比較的安定であり[1]、還元剤に対しても比較的安定である[1]

もう1つ、エリスロシンはタンパク質と結合し易く、そのため、タンパク質を染色して、そのままタンパク質を着色したままにし易いという特徴も有する[2]

危険性

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エリスロシンがタンパク質に結合し易いという特徴を有しているため、摂取すると、生体のタンパク質にも影響を与える可能性が考えられてきた。動物実験の結果では、マウスに対して経口投与した場合のLD50は、6.8 (g/kg)であった[2]。また、ラットに対して経口投与した場合のLD50は、2 (g/kg)以上であろうと推定された[2]。そのラットに対して、2年間にわたって、エリスロシンを5パーセント添加した飼料を与えた結果、ラットの成長に悪影響を与える事が判明した[2]。なお、エリスロシンを2.5パーセント添加した飼料を、ラットなどに1年間程度与えても、悪性腫瘍の発生は見られなかったという[2]。しかしながら、雄のラットに対してエリスロシンを大量に与えた場合には、甲状腺腫瘍が発生したとの報告も存在する[2]

なお、日本の厚生省はエリスロシンを天然に存在しない添加物に分類したものの[3]、日本では食品添加物としての使用が認められている。一方で、ドイツポーランドなどでは、食品添加物としてエリスロシンの使用が禁止されている[注釈 2]

用途

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エリスロシンは、工業製品用の着色料として使用される場合がある。また、地域によっては、食品添加物の着色料としても使用される場合がある。

食品用の着色料として使用する場合には、エリスロシンが耐熱性に優れているという特徴を活かして、焼き菓子の着色に用いたり[1]、耐還元性に優れているという特徴を活かして、醗酵食品などの着色に用いたりする。さらに、エリスロシンはタンパク質への染着性が良いため[2]蒲鉾などの動物肉製品の染色にも用いられる。

一方で、酸性領域ではエリスロシンが無色化するため、例えば炭酸飲料や、酸味を付けた飴など、酸性の強い食品には使用できない[2]

合成

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工業的には、ナフチオン酸R酸を反応させて、エリスロシンを合成する。

脚注

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注釈

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  1. ^ 波長524 nmから528 nmの電磁波は、ヒトには緑色に見える波長の可視光である。その波長領域を特に強く吸光するため、エリスロシンをヒトが見た場合には、緑色の補色である赤系統の色に見える。
  2. ^ タール色素には、食品添加物として一旦使用が認められたものの、後になって生体への危険性が明らかになり、使用が禁止された化合物が存在する。

出典

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  1. ^ a b c d e f 谷村 顕雄 『食品添加物の実際知識(第4版)』 p.84 東洋経済新報社 1992年4月16日発行 ISBN 4-492-08349-9
  2. ^ a b c d e f g h i 谷村 顕雄 『食品添加物の実際知識(第4版)』 p.85 東洋経済新報社 1992年4月16日発行 ISBN 4-492-08349-9
  3. ^ 厚生省「表5 食品添加物の年齢別摂取量」マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査 (平成12年12月14日 厚生省) (日本食品化学研究振興財団)