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エルデシュ・モーデルの不等式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ユークリッド幾何学においてエルデシュ・モーデルの不等式(えるでしゅ・もーでるのふとうしき、: Erdős–Mordell inequality)は、三角形ABCとその内部の点Pについて、三角形の各頂点とPの距離の和は、三角形の各Pの距離の和の2倍以上であるという定理である。 ポール・エルデシュルイス・モーデルに因み名付けられた。エルデシュ(Erdős (1935) )はこの不等式の証明の問題を発表し、その2年後に、モーデルとバロー(Mordell and D. F. Barrow (1937))によって証明がなされた。 この不等式は実に初等的であるが、 彼らによる証明は全く初等的でない。その後 Kazarinoff (1957), Bankoff (1958), Alsina & Nelsen (2007)らによって単純な証明が与えられた。

バローの不等式はエルデシュ・モーデルの不等式のより強力な不等式である[1]。エルデシュ・モーデルの不等式は点と辺との距離、つまり垂線の長さに関する不等式だが、バローの不等式は角の二等分線の長さに関する不等式となっている。

主張

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エルデシュ・モーデルの不等式

エルデシュ・モーデルの不等式 ―  を三角形 の内部にある点、 から三角形の辺に降ろした垂線とする(三角形が鈍角を持つ場合は、一つの垂線は、別の辺と交ったのち、辺の延長で交わる)。このとき以下の式が成り立つ:

証明

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A,B,Cの対辺とその長さをa,b,cと表現する。またPA,PB,PCの長さをそれぞれp,q,rP,BC間,P,CA間,P,AB間の距離をそれぞれx,y,zとする。このとき

を証明する。この不等式は

と等しい。このとき、右辺は三角形の面積を表すが、左辺の r + zは底辺をcとしてみたときの三角形の高さよりも大きい。したがってこの不等式は成立する。PCの角の二等分線で鏡映した点にこの不等式を用いればcray + bxを得る。同様にapbz + cy, bqcx + azを得る。これらの不等式を変形する。

この3つの不等式を加えて

ここで相加相乗平均の関係式よりエルデシュ・モーデルの不等式を得る。等号成立条件は、元の三角形が正三角形Pが三角形の重心であることである。

他のより強い不等式

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外接円をOとするABCと、ABCの内部の点Pについて、D,E,Fを辺BC,CA,ABに対するPの垂足、M,L,NA,B,CにおけるO接線に対するPの垂足とする。このとき

が成り立つ。等号成立条件は元の三角形が正三角形であること(Dao, Nguyen & Pham 2016; Marinescu & Monea 2017)。

一般化

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を凸なn角形をその内部の点とする。またの距離、の距離、の二等分線との交点との距離とする。このとき次の不等式が成り立つ (Lenhard 1961)。

絶対幾何学

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絶対幾何学英語版 においてもエルデシュ・モーデルの不等式が成り立つことが知られている( Pambuccian (2008))。ただし絶対幾何学での三角形内角の和は180°以下であることを考慮する必要がある。

関連項目

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出典

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  1. ^ エルデス・モーデルの定理の証明”. 高校数学の美しい物語 (2022年4月8日). 2024年7月6日閲覧。

参考文献

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外部リンク

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