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エレバス (モニター)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
艦歴
発注
起工 1915年10月12日
進水 1916年6月19日
竣工 1916年9月2日
退役
その後 1946年7月にスクラップとして廃棄
除籍
性能諸元
排水量 7,200トン
全長 405 ft (123.4 m)
全幅 88 ft (26.8 m)
吃水 11 ft 8 in (3.6 m)
機関 レシプロエンジン、2軸推進 6,000hp
最大速 12ノット (22 km/h)
乗員 226名
兵装 15インチ砲2門
4インチ砲8門
12ポンド対空砲2門
3インチ対空砲2門
2ポンド対空砲2門
機銃4基

エレバス (HMS Erebus, I02) は、イギリス海軍第一次世界大戦第二次世界大戦で運用したモニター艦エレバス級ネームシップ

Erebus”とは、ギリシア神話におけるの1人で、地下世界の支配神であるエレボス (Έρεβος) の英語形である。「HMS Erebus」という艦名は、イギリス海軍で幾度か踏襲されている。

概要

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本級を含むイギリス海軍のモニター艦は、海上戦闘ではなく、艦砲射撃による火力支援を主目的として設計され、その吃水はごく浅いものであった。射撃時の安定と防御力の向上のために舷側には大きなバルジが取り付けられており、舷側下は極端に横に張り出した形になっている。42口径15インチ(38.1センチ)砲を連装砲塔として、前甲板に装備した。本級は中央同盟軍ドイツ帝国陸軍オスマン帝国軍)の沿岸砲台よりも長い射程を持つよう計画されており、射程を伸ばすため砲塔は高いバーベット上に位置し、最大射程は40,000ヤード(22.7 マイル/36.5 km)であった。

装甲は砲塔が13インチ、バーベットで8インチ、司令塔6インチ、バルクヘッド4インチ、甲板2~4インチであった。舷側の大型のバルジにより、強固な対魚雷防御構造を備えていた。

建造経緯

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イギリス海軍は、建造中のR級戦艦ラミリーズ 」の15インチ連装主砲塔を流用し、マーシャル・ネイ級モニター英語版2隻(マーシャル・ネイマーシャル・ソウルト)を建造した[1]。この2隻は機関部に問題を抱えていた[2]。イギリス海軍は幾度か建艦計画を変更したあと、最終的に新しいモニター艦を2隻建造して、マーシャル・ネイ級モニターの15インチ連装砲塔を積み替えることにした[3]。この新造艦2隻が、「エレバス」と「テラー 」である[3]

「マーシャル・ネイ」の15インチ連装砲塔は予定どおり撤去され、新造艦「テラー」に搭載された[3]。 だが「マーシャル・ソウルト」が機関の調子が良くなり、ラミリーズの主砲塔を搭載したまま1915年11年に竣工した[3]。そこで本艦には、カレイジャス級巡洋戦艦英語版フューリアス」の15インチ連装砲塔が1基搭載された[3]。「フューリアス」の初期計画は姉妹艦カレイジャスグローリアス)と同様に15インチ連装砲塔2基搭載であった[4]フィッシャー第一海軍卿の指導により40口径砲18インチ(45.7センチ)単装砲2門の搭載が決まったあとも、18インチ砲が失敗作だった場合に備えて、15インチ連装砲塔が準備されていた[3]

艦歴

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第一次世界大戦

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第一次世界大戦中、15インチ砲モニター3隻(エレバス、テラー、マーシャル・ソルト)はベルギー方面に配備された[5]。そしてオステンドゼーブルッヘ英語版フランス語版のドイツ帝国軍に対して攻撃を行った。1917年10月28日にドイツ帝国海軍 (Kaiserliche Marine) のFLボート英語版ドイツ語版(有線遠隔操縦式の自爆艇)に突入されて損傷する[5]。バルジのおかげで沈没をまぬがれ、修理したのち戦線に復帰した[5]。1919年には連合軍ロシア内戦干渉に参加する[6]白海およびバルト海での艦砲射撃を行った。

戦間期

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第一次世界大戦が終結すると、イギリス海軍は戦時急造艦の整理をおこない、ほとんどのモニター艦が売却されて解体され、在籍した艦も武装を撤去して雑務船やハルクに転用された[7]。現役艦としてのこったのは「エレバス」と「テラー」のみであった[8]

1921年、イギリスが戦利艦として保有していたドイツ帝国海軍のバイエルン級戦艦バーデン英語版ドイツ語版」が、標的艦となった[8]。最初に「テラー」が、次に「エレバス」が、元ドイツ帝国海軍の超弩級戦艦に対する砲撃試験に参加した。同時期にはベレロフォン級戦艦シュパーブ」も標的艦となり、砲撃目標となっている。

その後第二次世界大戦まで主に砲術訓練艦として活動する[8]南アフリカ連邦の要請により、ケープタウンに警備艦として配備される事が決まった[8]。1939年8月には工事が完了したが、第二次世界大戦の勃発により配備は実現しなかった。

第二次世界大戦

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1939年9月の第二次世界大戦勃発後、「エレバス」はイギリス南部サウサンプトンソーニクロフト社で改装工事を受け、1940年7月に再就役した[9]ドイツ国防軍イギリス本土上陸に備えたほか、バトル・オブ・ブリテンに対抗してドイツ占領地区フランス西岸(カレーダンケルク)やベルギーのオーステンデに艦砲射撃をおこなった[10]

1941年10月、「エレバス」は新造モニター艦ロバーツ」と共に地中海に派遣され、アフリカ大陸近海での船団護衛任務に従事した[10]。同年12月8日、太平洋戦争勃発にともなう大日本帝国の第二次世界大戦への参戦により、インド洋に派遣される[10]セイロン島トリンコマリーで警備艦となっていた1942年4月9日、日本海軍機動部隊はトリンコマリーを空襲する[10]。本艦は至近弾数発により被害が生じ、戦死者7名と負傷者20名を出した[10]セイロン沖海戦[11]。日本軍の攻撃の結果、東洋艦隊がアフリカ大陸東岸に根拠地を移すと、「エレバス」もそこへ移った[10]。9月にはマダガスカルマジュンガへの上陸作戦に参加した(マダガスカルの戦い)。

1943年、エレバスはスエズ運河を通過して地中海へ移動。7月、15インチ砲モニター艦3隻(エレバス、ロバーツ、アバクロンビー)はシチリア島上陸作戦(ハスキー作戦)に参加[10]。7月20日、本艦は爆撃で6名の戦死者を出した。1943年9月にイギリス本土に到着、修理と並行して対空兵装の強化などを実施した[12]。「エレバス」は生涯で5回目の15インチ主砲の砲身交換をおこなう[13]。1門は新造砲、1門はR級戦艦「ロイヤル・サブリン」の搭載砲であったという[13]

1944年6月6日のノルマンディー上陸作戦では「エレバス」はアメリカ海軍の戦艦「ネバダ」などと共にユタ海岸地区への支援砲撃を行った[13]。この際に榴弾腔発事故により15インチ砲1門を損傷している[13]。砲身交換と修理をおこない、7月22日に戦線復帰した[13]

1944年9月10日[14]、「エレバス」はアストニア作戦ル・アーヴルに対して攻撃を行った。沿岸砲台からの反撃を受けて損傷し、しばらく戦線を離脱した。11月にはオランダワルヘレン英語版に対する上陸作戦であるインファチュエイト作戦の支援を行う。

第二次世界大戦終結後、「エレバス」は1946年7月に廃棄された。本艦の15インチ砲1門は、イギリス海軍最後の戦艦である「ヴァンガード」に転用されたとされる[15]。同艦の主砲塔(連装砲塔4基)は、カレイジャス級巡戦(カレイジャス、グローリアス)がワシントン海軍軍縮条約により空母改造された際に撤去され、倉庫に保管されていた15インチ連装砲塔であった[16]

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ 艦艇学入門 2000, pp. 254–257一五インチ砲モニター出現
  2. ^ 艦艇学入門 2000, pp. 259a-263再登場した一五インチ砲艦
  3. ^ a b c d e f 艦艇学入門 2000, p. 260.
  4. ^ 艦艇学入門 2000, pp. 262–265一八インチ巨砲を積んだ艦
  5. ^ a b c 艦艇学入門 2000, pp. 260–261.
  6. ^ 艦艇学入門 2000, pp. 271–275大戦間のモニターの境遇
  7. ^ 艦艇学入門 2000, p. 272.
  8. ^ a b c d 艦艇学入門 2000, pp. 274–275.
  9. ^ 艦艇学入門 2000, pp. 278–281第二次大戦の最後の戦場
  10. ^ a b c d e f g 艦艇学入門 2000, p. 280.
  11. ^ Big Gun Monitors, p.166
  12. ^ 艦艇学入門 2000, pp. 281–284ノルマンディーの晴れ舞台
  13. ^ a b c d e 艦艇学入門 2000, p. 282.
  14. ^ "The Campaign in North-West Europe: The Channel Ports, September 1944" The Canadian Army, 1939-1945. Department of National Defence p.225 2010年9月18日閲覧
  15. ^ The 15 inch Guns of HMS Vanguard
  16. ^ ジョーダン、戦艦 1988, pp. 74–77イギリス/ヴァンガード級

参考文献

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  • 石橋孝夫『艦艇学入門 軍艦のルーツ徹底研究』光人社〈光人社NF文庫〉、2000年7月。ISBN 4-7698-2277-4 
  • ジョン・ジョーダン『戦艦 AN ILLUSTRATED GUIDE TO BATTLESHIPS AND BATTLECRUISERS』石橋孝夫(訳)、株式会社ホビージャパン〈イラストレイテッド・ガイド6〉、1988年11月。ISBN 4-938461-35-8 
  • 月間雑誌「丸」編集部編『丸季刊 全特集 写真集 ドイツの戦艦 ド級前戦艦から戦艦まで全37隻のすべて THE MARU GRAPHIC WINTER 1977』株式会社潮書房〈丸 Graphic・Quarterly 第27号〉、1977年7月。 
  • Ian Buxton, Big Gun Monitors: Design, Construction and Operations 1914-1945, Seaforth Publishing, 2008, ISBN 978-1-84415-719-8

関連項目

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外部リンク

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