オオズワイガニ
オオズワイガニ | |||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Chionoecetes bairdi Rathbun, 1824[1] | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
bairdi crab tanner crab |
オオズワイガニ(学名:Chionoecetes bairdi、英:bairdi crabまたはtanner crab)は、ズワイガニ属のカニである。ズワイガニとよく似ていて、見分けるのは難しい。どちらの種もベーリング海で見られ、"snow crab"という名前で販売されている。乱獲のため、その漁獲には厳しい制限が課されている。カニの分類の第一人者であるスミソニアン研究所のメアリー・ラスバンにより、師であり、スミソニアン協会の副事務局長、米国魚類委員会の委員長を務めたスペンサー・フラトン・ベアードの名前に因んで命名された[2]。
生物学
[編集]オオズワイガニは十脚類であり、最前脚にハサミ状の爪を持つ。10年以上生き、5年程度で成体になるまでに、1-4ポンド(0.45-1.81 kg)に達する。メスは1年間に渡って受精卵を抱き、プランクトンが大発生する春季に孵化する。幼生は初めは泳ぐことができるが、約2か月後にはこの能力を失い、底生生物となる。主な餌は底生の甲殻類、貝、蠕虫等であり、底生魚やヒトに捕食される。交尾期以外にオスとメスが別々に生息しているということを除き、社会構造についてはほとんど分かっていない[3]。Hematodinium pereziによるbitter crab diseaseに脆弱である[4]。
漁獲
[編集]通常、タラバガニの漁獲に用いられるものと似たカニ網により漁獲される。ベーリング海では、1961年にオオズワイガニの漁獲が解禁され、すぐに最大漁獲量15.1万トンに達する北太平洋の主要な漁獲物になった。
1976年のマグヌソン漁業保存管理法の成立前に、ベーリング海のオオズワイガニの大部分は、日本とソビエト連邦の漁船によって獲り尽されていた[3]。乱獲により個体数が急減し、1984年にはわずか540トンの漁獲しかなかった。オオズワイガニが乱獲による絶滅の危機に瀕していたため、立法者と漁業管理者は、1986年及び1987年にオオズワイガニ漁を全面的に禁止した。漁獲量制限の政策調整が行われたが、1996年の漁獲量が非常に少なかったため、1997年に再び漁が禁止された。
2000年代中盤には、漁業管理者が北大西洋やニュージーランドの同様のプログラムを元に"Crab Rationalization Program"を導入した。このプログラムでは、各カニ漁船の過去の漁獲量に基づく個別割当量を導入し、漁獲高の一部を漁獲地で販売することを要件とした。このプログラムは環境団体や自然保護団体からの評判は良かったが、カニがたくさんいても割当量を超えて漁獲できないため、小規模な漁業者らは不満であった[5]。アラスカ大学フェアバンクス校の漁業海洋科学部の研究者は、乱獲に加えて、卓越風が毎年のカニの個体数に影響を与えるという仮説を立てた[6]。
日本においては数十年に一度噴火湾にて大量発生するが、ボタンエビの水揚げ量が減ってなおかつエビかごの網を壊す厄介者として扱われていた[7][8]。しかし、2023年に大量発生した際には漁協がキャンペーンを行うなどして[9][10]、翌年には地域の漁業の柱となっている[11][12]。その一方で、香箱ガニなどと偽って出荷する業者があらわれるなど、問題もある[13][14]。
出典
[編集]- ^ "Chionoecetes bairdi" (英語). Integrated Taxonomic Information System.
- ^ NOAA Fisheries 150th Anniversary: Mary Jane Rathbun
- ^ a b Wildlife Notebook: Tanner Crab Alaska Department of Fish and Game
- ^ Phillips, Bruce F. (2006). Lobsters: Biology, Management, Aquaculture and Fisheries. Oxford, UK ; Ames, Iowa: Blackwell Pub.. p. 162. ISBN 1-4051-2657-4
- ^ Amy Carroll. “Alaska’s Crab Fishery: Big Money Days are Gone”. Alaska Department of Fish and Game, Division of Wildlife Conservation. 2024年9月28日閲覧。
- ^ Ned Rozell (October 25, 2001). “Northeast wind favors Bristol Bay crabs”. Alaska Science Forum, University of Alaska Fairbanks. June 14, 2010時点のオリジナルよりアーカイブ。October 10, 2010閲覧。
- ^ “【海の異変】ボタンエビ取れず厄介者“オオズワイガニ”が大漁 名物「いかめし」に続けるか? 異変続くエビかご漁で商品価値を生み出そうと試行錯誤― 北海道森町”. UHB:北海道文化放送 (2024年9月25日). 2024年9月28日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “秋のボタンエビ漁解禁も森町ではカゴに大量のオオズワイガニ|NHK 北海道のニュース”. NHK NEWS WEB. 2024年9月28日閲覧。
- ^ 日本テレビ. “やっかい者・去年大量発生オオズワイガニのいま…日高の海を訪れてみると一転人気者に!?|STV NEWS NNN”. 日テレNEWS NNN. 2024年9月28日閲覧。
- ^ “高知かわうそ市場|大量発生しているオオズワイガニを食べて 北海道の漁師さんを応援してください!”. kochi-kawauso.com. 2024年9月28日閲覧。
- ^ “北海道産「オオズワイガニ」厄介者から主役へ ふるさと納税でブランド「ブリ」も人気”. テレ朝news. 2024年9月28日閲覧。
- ^ 日本テレビ. “北海道豊浦町「海産総選挙」も“公示”!過去2回トップ当選ホタテ!勢力拡大オオズワイガニは?|STV NEWS NNN”. 日テレNEWS NNN. 2024年11月7日閲覧。
- ^ “香箱ガニと偽装、販売 ズワイじゃない、北海道産オオズワイ 県内流通、人気便乗か|社会|石川のニュース|北國新聞”. 北國新聞 (2024年10月18日). 2024年11月7日閲覧。
- ^ “ズワイガニと呼ばないで ソックリな「オオズワイガニ」流通に産地困惑 ぷりずむ”. 日本経済新聞 (2024年10月17日). 2024年11月7日閲覧。