オオムラサキ
オオムラサキ | |||||||||||||||||||||||||||
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オスの成虫
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保全状況評価 | |||||||||||||||||||||||||||
準絶滅危惧(環境省レッドリスト) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Sasakia charonda (Hewitson, 1863) | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
オオムラサキ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Great purple emperor | |||||||||||||||||||||||||||
亜種 | |||||||||||||||||||||||||||
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オオムラサキ(大紫、Sasakia charonda)は、チョウ目(鱗翅目)タテハチョウ科に分類されるチョウの1種。日本の国蝶。
本種は最初に日本で発見され(種の基産地は神奈川県)、属名の Sasakia は佐々木忠次郎に献名された。
生息域
[編集]日本・朝鮮半島・中国・台湾北部・ベトナム北部に分布している。
日本では北海道から九州まで各地に分布し、南限は宮崎県小林市。日本では生息環境が限られ、適度に管理された、やや規模の大きな雑木林を好んで生息する傾向が強い。かつては東京都区内の雑木林でも見られた。都市近郊では地域絶滅の危機に瀕する産地もある一方、山梨県のように今でも広域に多産する地域がある。
形態
[編集]日本に分布する広義のタテハチョウ科の中では最大級の種類。生態や幼虫、蛹の形態は同じコムラサキ亜科のゴマダラチョウによく似る。
成虫は前翅長50-55 mmほどで、オスの翅の表面は光沢のある青紫色で美しい。メスはオスよりひと回り大きいが、翅に青紫色の光沢はなくこげ茶色をしている。
日本での地理的変異はやや顕著。北海道から東北地方の個体は翅表の明色斑や裏面が黄色く、小型。西日本各地の個体は一般に大型で、翅表明色斑が白色に近く、かつ裏面が白から淡い緑色の個体も多い。九州産は翅表明色斑が縮小し、一見して黒っぽい印象を与える。
北海道夕張郡栗山町の本種の集団は、他地域の集団と斑紋が異なるとして新亜種S. c. kuriyamaensisとして記載された[3]。
日本以外では、裏面に濃色の斑紋が出現した型が多く見られ、また、中国雲南省からベトナムにかけての個体群は明色斑が非常に発達し、大型となる。朝鮮半島、中国東北部から中部にかけての個体群は亜種 S. c. coreana、台湾産は亜種 S. c. formosana、雲南省からベトナム北部の個体群は亜種 S. c. yunnanensis とされる[4]。
以上のような地理的変異とは別に、後翅後角の赤い斑紋が白いスギタニ型と呼ばれる個体変異、雄の翅表面の青紫部分がやや明るい青をしているブルーとあだ名されている個体変異がある。
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北海道産のオオムラサキのオス。明色の斑紋の多くが黄色くなる遺伝型。東日本に多い。
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山口県産のオオムラサキのメス。明色の斑紋が黄色くならない遺伝型。西日本に多い。
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オス(台湾亜種)
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メス(台湾亜種)
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幼虫
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蛹
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翅の裏面(台湾亜種)
生態
[編集]成虫は年に1回だけ6 - 7月に発生し、8月にも生き残った成虫を見かける。クヌギ、コナラ、ニレ、クワ、ヤナギなどの樹液に集まったり、クリ、クサギなどの花で吸蜜する[6]。ときに腐果や糞などの汚物に来ることもある[7]。餌場では勇ましく、カブトムシ、クワガタムシ、スズメバチなど他の昆虫を羽で蹴散らしながら樹液を吸う姿をよく見かける。また、飛翔能力が高く、近くに居る時にはその音が聞こえる程である。鳥の様に力強くはばたいて、あるいは滑空しながら雄大に飛ぶ。縄張り飛翔は午後に行われることが多く、西日を浴びて高い樹冠を活発に飛び回る姿を見かける。
雄は樹木の周囲に縄張りを作る。
幼虫の食樹はエノキやエゾエノキ。卵から孵った幼虫は、夏から秋にかけてエノキの葉を食べて成長する。冬は地面に降りて、食樹の根際や空洞内に溜まった落ち葉の中で越冬する。春に休眠から覚めると再び食樹に登って葉を食い、更に成長を続け、蛹になる。蛹の状態でも、体を震わせることができる。
文化
[編集]日本の国蝶
[編集]日本の国蝶は、法律や条例で規定されたものではなく[8]、日本昆虫学会が選んだものである。
国蝶の選出については、1933年ごろより、片山胖、結城次郎、中原和郎、柴谷篤弘、野平安藝雄らが、同好会誌『Zephyrus』で論議していた [9]。オオムラサキは当時から候補種だったが、ミカドアゲハ、ギフチョウ、アゲハチョウといった蝶も検討された。結城 (1935)はオオムラサキに対抗してアゲハチョウを推す理由を詳細に記述している。ただしこの時点では決定がなされずに経過した。
1956年にオオムラサキが75円切手の図案に採用されたことを契機として、日本昆虫学会は1957年の総会でオオムラサキを国蝶に選んだ[10]。
下妻市
[編集]茨城県下妻市のマスコットキャラクター「シモンちゃん」は本種を萌え擬人化したデザインとなっている[11]。なお、女の子のように見えるが、羽の模様はオスのものである。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ William C. Hewitson (1862–1866). Illustrations of New Species of Exotic Butterflies, Selected Chiefly from the Collections of W. Wilson Saunders and William C. Hewitson. Volume III. John Van Voorst. p. 50. doi:10.5962/bhl.title.12625
- ^ Frederic Moore (1896). Lepidoptera Indica. Volume III. Lovell Reeve & Co. Limited. p. 39. doi:10.5962/bhl.title.8763
- ^ “国蝶オオムラサキの生態”. 栗山町. 2021年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月1日閲覧。
- ^ 呉立偉 2022 大紫蛺蝶遺傳多樣性與不同亞種間之關係_期末報告.Genetic variation and phylogenetic relationships among the subspecies of Sasakia charonda (Nymphalidae: Apaturinae).
- ^ “左の羽は「雄」、右の羽は「雌」…珍しいオオムラサキを高校生が発見”. 読売新聞 (2021年9月15日). 2021年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月5日閲覧。
- ^ 川副昭人、若林守男『原色日本蝶類図鑑』(全改訂新版)保育社〈保育社の原色図鑑1〉、1976年4月1日、265頁。全国書誌番号:69004898。
- ^ “オオムラサキ”. 太田川生物誌陸生昆虫. 国土交通省中国地方整備局太田川河川事務所. 2021年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月18日閲覧。
- ^ 猪又 2008.
- ^ 片山 1933; 柴谷 1937; 中原 1936; 野平 1938; 結城 1935.
- ^ 日本蝶類愛好会 1970, pp. 30–31.
- ^ “下妻市イメージキャラクター「シモンちゃん」とは?”. 下妻市. 2021年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月1日閲覧。
参考文献
[編集]- 猪又敏男「日本のオオムラサキ」『月刊むし』第449号、2008年、27-36頁。
- 江崎悌三「「國蝶」問題」『Zephyrus』第6巻第3/4号、1936年、382-383頁。
- 片山胖「第八回懇親会記事」『Zephyrus』第5巻第1号、1933年、49-51頁。
- 柴谷篤弘「國蝶選定に就いて」『Zephyrus』第7巻第2/3号、1937年、217-221頁。
- 中原和郎「オホムラサキ國蝶論」『Zephyrus』第6巻第3/4号、1936年、383-384頁。
- 日本蝶類愛好会 編『日本の蝶・世界の蝶』保育社、1970年。全国書誌番号:69007753。
- 野平安藝雄「再び國蝶問題に就いて」『Zephyrus』第7巻第4号、1938年、298-301頁。
- 結城次郎「「國蝶」を如何に選ぶべきか」『Zephyrus』第6巻第1/2号、1935年、146-149頁。