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オンゲ族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オンゲ族の人々

オンゲ族(オンゲぞく、Onge people、ÖngeまたはOngee)とは、インドアンダマン諸島に住み、狩猟採集生活を行っている先住部族の一つである[1]

歴史

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オンゲ族は、アンダマン諸島ジャラワ族たちと同じく、その地理的要因から孤立した部族の一つであり、数万年の間、殆ど外部との接触をせずに生活してきた。

言語

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オンゲ族は、インド・マレー系の民族とは全く異なるアンダマン諸島系の独自の言語「オンゲ語」を話す[2]。「オンゲ」とは彼等の言語で「完璧な人」を意味する言葉である[3]

オンゲ語は2つあるオンガン語(アンダマン南部諸語)のうちの1つである。オンゲ語はかつて小アンダマン全域、北部の小さな島々、そしておそらく南アンダマン島の南端で話されていた。19世紀半ば以降、イギリス人がアンダマン諸島に到着し、インド独立後は本土からインド人入植者が大量に流入したため、オンゲ語を話す人の数は減少した。2006年現在、オンゲ語の母語話者は94人で、小アンダマン島北東部の単一集落に限られており、絶滅危惧言語となっている。

オンゲ語が属するオンガン諸語は、ジュリエット・ブレヴィンスによって、オーストロネシア語などのアジア大陸の言語と近縁であると提唱されている。しかし、この仮説は(言語学で用いられる)比較法によって支持されないと結論づけ、またブレヴィンスの仮説に対して非言語学的(文化的、考古学的、生物学的など)な証拠を挙げているロバート・ブルストなど、他の言語学者からはあまり良い評価を受けていない。 George van Driem (2011)はブレヴィンスの証拠を「説得力がない」とみなしているが、彼はいくつかの類似点が接触・借用の結果である可能性を残しており、Hoogervorst (2012)もこの立場をとっている。

生活

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1800年代初期と2004年のアンダマン諸島民の部族の分布の変化(青色の部分がオンゲ族の分布領域)

オンゲ族の生活は小弓と矢を使って、イノシシや鳥類を狩猟したり、川の浅瀬や海岸で網を使って、魚・カニ・エビなどを獲ったり、果物や木の実を収集して生活を行っている。オンゲ族の男性は一人でイノシシを狩ることが出来るようになるまでは一人前と認められず結婚することが出来ないこともある。

津波に関する伝承

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オンゲ族には、大津波に関する説話が伝承されており、2004年に起きたスマトラ沖大地震の際には、この伝承に基づいてオンゲ族の96人全員が高地に避難して生存することが出来た[4]

人口

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1901年の人口調査では672人からなる部族であったが、1911年に631人、1921年に346人、1931年に250人、1951年に150人と減少した。

乳幼児の死亡率も約40%程度ある[5]ため、生殖指数は0.91であり深刻な人口減少問題に直面している[6][7]

2008年の時点での人口は96人程度であるとされていたが、その後2011年には101を超えて増加に転じている[8]。これは、現地の衛生環境の向上などが挙げられ、2017年には、依然として文化的、生物学的アイデンティティを維持しており、総人口が117人に増加した。今後は、医療設備の改善による乳幼児死亡率の大幅減少に伴い、急増するとインド政府は試算している。[9]

外来との接触が歴史的に少ない集団であったため、病原菌に対する抵抗力も弱く、人口減少を危惧したインド政府は オンゲ族を2つの保護区に分けて統制管理し、部外者との接触を制御している[10][11][12][13]

遺伝子

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オンゲ族のY染色体ハプログループは出アフリカ後に北ルート[14]をとったモンゴロイドハプログループDが多く約4万年前にチベット高原で分離し、そこから中国南部を通り、アンダマン諸島に南下したと考えられている。[15][16]

一方ミトコンドリアDNAハプログループは出アフリカ後南ルートをとったオーストラロイド系ハプログループM31,M32のみで占められている[15][17]

遺伝子分析により、オンゲ族は東南アジアを祖先に持つ遺伝子が32%観察されている。[18]

脚注

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  1. ^ List of notified Scheduled Tribes”. Census India. p. 27. 15 December 2013閲覧。
  2. ^ The Colonisation of Little Andaman Island, http://www.combatlaw.org/information.php?article_id=23&issue_id=9 2008年6月23日閲覧。 
  3. ^ Önge language - The Ethnologue, http://www.ethnologue.com/show_language.asp?code=oon 
  4. ^ Budjeryn, Mariana. “And Then Came the Tsunami: Disaster Brings Attention and New Challenges to Asia's Indigenous Peoples”. Cultural Survival Quarterly. 22 February 2010閲覧。
  5. ^ http://www.culturalsurvival.org/ourpublications/csq/article/ecocide-or-genocide-the-onge-andaman-islands
  6. ^ A. N. Sharma (2003), Tribal Development in the Andaman Islands, page 64. Sarup & Sons, New Delhi.
  7. ^ A. N. Sharma (2003), Tribal Development in the Andaman Islands, page 72. Sarup & Sons, New Delhi.
  8. ^ http://pib.nic.in/archieve/others/2008/Dec/r2008121914.pdf
  9. ^ Raviprasad, B.V.; Ghosh, Amit Kumar; Sasikumar, M. (2020). "Survival, Continuity and Identity Among the Onge of Andaman and Nicobar Islands". Journal of the Anthropological Survey of India. Volume 69, Issue 1. 69: 71–81. doi:10.1177/2277436X20927255. S2CID 220324793
  10. ^ Tapas Chakraborty: Poison drink kills vanishing tribals. In: The Telegraph. Kalkutta, 12. Dezember 2008, abgerufen am 10. Mai 2014 (englisch).
  11. ^ (Hindi) अंडमान में जनजातियों को ख़तरा (Tribes endangered in the Andamans). BBC. (2004-12-30). http://www.bbc.co.uk/hindi/regionalnews/story/2004/12/041230_tsunami_aborigins.shtml 2008年11月25日閲覧. "... जारवा के 100, ओन्गी के 105, ग्रेट एंडमानिस के 40-45 और सेन्टेलीज़ के क़रीब 250 लोग नेगरीटो कबीले से हैं, जो दक्षिण एशिया की प्राचीनतम जनजाति है (100 of the Jarawa, 105 of the Onge, 40-45 of the Great Andamanese and about 250 of the Sentinelese belong to the Negrito group which is South Asia's oldest tribal affiliation ... (ヒンディー語)" 
  12. ^ Devi, L. Dilly (1987). "Sociological Aspects of Food and Nutrition among the Onges of the Little Andaman Island". Ph.D. dissertation, University of Delhi, Delhi
  13. ^ Journal of Social Research. Council of Social and Cultural Research, Ranchi University Deptartment of Anthropology, Bihar. (1976, v19). https://books.google.co.jp/books?id=MIQrAAAAIAAJ&redir_esc=y&hl=ja 2008年11月25日閲覧。. 
  14. ^ 崎谷満(2009)『DNA・考古・言語の学際研究が示す新・日本列島史 日本人集団・日本語の成立史』勉誠出版
  15. ^ a b Kumarasamy Thangaraj, Lalji Singh, Alla G. Reddy, V.Raghavendra Rao, Subhash C. Sehgal, Peter A. Underhill, Melanie Pierson, Ian G. Frame, Erika Hagelberg(2003);Genetic Affinities of the Andaman Islanders, a Vanishing Human Population ;Current Biology Volume 13, Issue 2, 21 January 2003, Pages 86–93 doi:10.1016/S0960-9822(02)01336-2
  16. ^ アンダマン諸島については、従来よりハプログループD-M174*(xD-M15,D-M55)が高頻度であるとのデータ(kumarasamy et al. 2003)があり、その後系統解析の研究の進展によりアンダマン諸島のD-M174*はD-Y34537であることがわかった(Y-Full)。
  17. ^ Kumarasamy Thangaraj, Gyaneshwer Chaubey, Toomas Kivisild, Alla G. Reddy, Vijay Kumar Singh, Avinash A. Rasalkar, Lalji Singh1(2005);Reconstructing the Origin of Andaman Islanders ;Science13 May 2005: Vol. 308 no. 5724 p. 996 DOI: 10.1126/science.1109987
  18. ^ East Asian ancestry in India”. January 2015閲覧。

参考文献

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  • 『ジャラワとオンゲ』”. ZeAmi (2013年7月24日). 2014年6月6日閲覧。
  • Heinrich Harrer: Die letzten Fünfhundert. Expedition zu den Zwergvölkern auf den Andamanen. Ullstein, Berlin u. a. 1977, ISBN 3-550-06574-4.
  • Vishvajit Pandya: Above the Forest. A Study of Andamanese Ethnoanemology, Cosmology, and the Power of Ritual. Oxford University Press, Delhi u. a. 1993, ISBN 0-19-562971-X.

関連項目

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