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オートガイネフィリア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ブランチャードの性転換症類型論英語版 > オートガイネフィリア

オートガイネフィリア英語: Autogynephilia)とは、レイ・ブランチャード英語版性転換症の分類において定義した用語であり、男性が、自身を女性だと想像すること、または、女装行為自体、女装中に「女性」として男性と肉体関係を持つこと、そして、これらのような各種「女性化」によって性的興奮する性的倒錯とされることがある。

日本語では自己女性化性愛症[1][2][3][4][5]自己女性化偏愛性倒錯症。略称AG[5]。女装している自身を想像だけで満足する者から、実際に女装して男性と性的行為に及ぶ者まで差がある[5]。 

また、オートガイネフィリアは性欲由来要素が強く、性適合手術をした場合に後悔する症例も多い[要出典]

日本には針間克己が1998年に紹介をおこなった[6]

診断

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WHOによる疾病分類であるICD-10においてはパラフィリア症(ICD-10以前は性的嗜好障害)として「フェティシズム的服装倒錯症英語: Fetishistic transvestism)」という分類が存在したが、ICD-11では削除されている[7]。これは、当該の状態がICDが精神疾患に要求する「苦痛や機能障害を伴うもの」ではなく、「個人的な機能障害を伴わない社会的逸脱または葛藤だけのものは精神疾患に含めない」というICDの方針に合致しないものであったためである[7][8]

DSM-5DSM-5-TRにおいては異性装症英語: Transvestic disorder)の診断における特定因子としてオートガイネフィリアが含まれている[9]。DSM-5のパラフィリア症における作業部会はブランチャードが議長を務めており、当初はオートガイネフィリアとオートアンドロフィリア(自己男性化愛好症)が特定因子に含まれた。これについて、これらの概念には実証的な根拠と科学的コンセンサスが欠如しているとして世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会英語版によって反対意見が呈された[10]。最終草稿では、オートアンドロフィリアは特定因子から除外されている。

概要

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1989年にカナダの性科学レイ・ブランチャード英語版によって定義された。語源はギリシャ語αὐτός(自分), γυνή(女性), φιλία(愛)、すなわち「女性としての自分を愛する」という意味である。日本語では「自己女性化愛好症」「自己女性化偏愛性倒錯症」などで、定訳はまだない。

議論の余地がある男性からの性転換者の行動モデルの一つで、Blanchard, Bailey, and Lawrence theoryにより非公式に分類されている。この理論は非同性愛の性転換者(Transwoman、男性から女性への性転換者(MtF))が男性だけでなく、レズビアン両性愛なトランスウーマンにまで性的に惹かれるような性嗜好が出現する理由を説明するためのモデルで[11]、それによると、男性に興味を持たない(MtF)性転換者(ブランシャールによれば「性不感症の男性」[12])は自己イメージを女性的に持ち装うことに性的に昂ぶる。

ブランシャールはこのような現象を性別違和症候群(gender dysphoria)と称しパラフィリアと捉え性同一性障害(gender identity disorder)と称し、さらに"Nonhomosexual transsexuals" 「非同性愛性転換」または"Autogynephilic transsexuals" 「自己女性愛性転換」に分類し、男性にだけ惹かれるトランスウーマンは"Androphilic" 「男性愛」、ないし"Homosexual transsexuals" 「同性愛性転換」と呼んだ。また、性欲はあるが他人に性的欲求が向かない人として、"analloerotic"「無性愛者」にも言及している。

2001年8月31日付けのカナダ人権裁判所(en:Canadian Human Rights Tribunal)の記録の第18節にも「異性愛的性転換者(heterosexual transsexual)はオートガイネフィリアであり、性転換手術後は自称レズビアンとなり、「同性愛的性転換者」はより性同一性障害の状態が強く手術後男性に惹かれるようになる」と同裁判の判決には影響を与えなかったが、その理論が紹介された(性別適合手術の項目の外部リンク参照)。

脚注

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  1. ^ Blanchard R (1989). The Concept of Autogynephilia and the Typology of Male Gender Dysphoria. en:Journal of Nervous and Mental Disease, 177 (10), 616–623. Retrieved 9 January 2005
  2. ^ LGBT法案 自民党が条件つきで了承も議員たちの問題発言で浮き彫りになった“社会の理解不足””. ABEMA TIMES. 2023年2月19日閲覧。
  3. ^ 「女性なるもの」への強い憧れ【後編】”. LGBTER|エルジービーター. 2023年2月19日閲覧。
  4. ^ 英辞郎 on the WEB”. eow.alc.co.jp. 2023年2月19日閲覧。
  5. ^ a b c AG(オートガイネフィリア)、自己女性化愛好症って知ってる?本来の意味と実際の使われ方”. 乙女塾. 2023年2月19日閲覧。
  6. ^ 針間克己 (2021年6月16日). “トランスジェンダーに、偏った性嗜好である「オートガイネフィリア」は含まれるのか”. wezzy. 2023年5月18日閲覧。
  7. ^ a b ICD-11 「精神,行動神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ:各論 10 パラフィリア症群・作為症群”. 2024年10月5日閲覧。
  8. ^ Reed, Geoffrey M.; Drescher, Jack; Krueger, Richard B.; Atalla, Elham; Cochran, Susan D.; First, Michael B.; Cohen‐Kettenis, Peggy T.; Arango‐de Montis, Iván et al. (2016-10). “Disorders related to sexuality and gender identity in the ICD‐11: revising the ICD‐10 classification based on current scientific evidence, best clinical practices, and human rights considerations”. World Psychiatry 15 (3): 205–221. doi:10.1002/wps.20354. ISSN 1723-8617. PMC 5032510. PMID 27717275. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5032510/. 
  9. ^ DIAGNOSTIC AND STATISTICAL MANUAL OF MENTAL DISORDERS FIFTH EDITION TEXT REVISION DSM-5-TR™”. p. 1060. 2024年10月5日閲覧。
  10. ^ “Should Transvestic Fetishism Be Classified in DSM 5? Recommendations from the WPATH Consensus Process for Revision of the Diagnosis of Transvestic Fetishism”. International Journal of Transgenderism 12 (4): 189–197. (2011). doi:10.1080/15532739.2010.550766. 
  11. ^ Blanchard, Ray (1989). The Classification and Labeling of Non-homosexual Gender Dysphorias. en:Archives of Sexual Behavior, 18 (4), 315–334
  12. ^ Blanchard R (1995). Comparison of height and weight in homosexual versus nonhomosexual male gender dysphorics. en:Archives of Sexual Behavior 1995 Oct;24(5):543-54.

関連項目

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