コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

カイロの隊商

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リブレットの表紙

カイロの隊商』(カイロのたいしょう、フランス語: La Caravane du Caire )は、ベルギー出身の作曲家アンドレ=エルネスト=モデスト・グレトリによる全3幕からなるオペラまたはオペラ=バレで、リブレットエティエンヌ=モレル=ド・シェドヴィルフランス語版によって書かれた。しかし、当時の流れでは、リブレットは後のフランス王ルイ 18 世となるプロヴァンス伯によって部分的に書かれたか[1]、またはプロヴァンス伯に提案された内容を基に仕上げられたと見られる[2]。 本作は1783年10月30日フォンテーヌブロー城で初演され、一般公開初演は1784年1月15日に当時のパリ・オペラ座の劇場となっていたポルト・サン=マルタン劇場英語版にて行われた。本作は明るい調子を持つが、グレトリの最も成功した本格的な作品で1829年までに500回以上の上演を重ねた[1]。本作は1818年は除くが、1785年から1791年までと1806年から1828年まではフランス革命期の特殊な上演は別としても、パリ・オペラ座で安定して上演され続けた[2]。 近年の注目すべき上演としては2023年6月9日と10日、11日のヴェルサイユ王立歌劇場英語版を挙げることができる。演出はマーシャル・ピンコフスキ(Marshall Pynkoski)、指揮はエルヴェ・ニケコンセール・スピリチュエルと王立歌劇場バレエ団、配役がサン=ファールがピエール・デレ、ゼリームがエレーヌ・ギルメットフランス語版、オスマンがロバート・グリードウ、フロレスタンがジャン=ガブリエル・サン=マルタン、アルマイードがマリー・ペルボスト英語版であった[3][4][5]

登場人物

[編集]
人物名 声域 原語 役柄 1783年10月30日初演時のキャスト[6]
指揮者:不明
サン=ファール オート・コントル
Haute-contre
Saint-Phar フランス人奴隷 エティエンヌ・レネ英語版
Étienne Lainez
オスマン バス・バリトン Osman エジプトパシャ オーギュスト=アタナーズ・シェロン
(Auguste-Athanase Chéron)
ゼリーム ソプラノ Zélime サン=ファールの妻 マリー=テレーズ・メラール
Marie-Thérèse Maillard
アルマイード ソプラノ Almaïde パシャの寵妃 シュザンヌ・ジョワンヴィル
(Suzanne Joinville)
フロレスタン バス・バリトン Florestan 船の船長 アンリ・ラリヴェー英語版
ユスカ バリトン Husca 奴隷商人
タモラン オート・コントル Tamorin ハーレム宦官 ジャン=ジョゼフ・ルソー
Jean-Joseph Rousseau[注釈 1]
フランス人の奴隷女 ソプラノ Une esclave française ジョゼーフ=ウラリー・オディノー
(Josèphe-Eulalie Audinot)
イタリア人の奴隷女 ソプラノ Une esclave italienne ビュレ嬢
(Mlle Buret)
2人のハンガリー人の女 ソプラノ Deux femmes hongroises アンヌ=マリー=ジャンヌ・ガヴォダン(姉)
Anne-Marie-Jeanne Gavaudan
アデライード・ガヴォダン(妹)
Adélaïde Gavaudan
フュルヴィル バリトン Furville フランス人士官 ルイ=アルマン・シャルダン
Louis-Claude-Armand Chardin
オスミン バス・バリトン Osmin ハーレムの警備員 モロー氏
(M Moreau)
ハーレムの奴隷女たち ソプラノ Les esclaves ジェルトリュード・ジラールダン
(Gertrude Girardin)
マリー=アンヌ・トナー
(Marie-Anne Thaunat)
ジョゼフィーヌ嬢、ロザリー嬢
(Mlles Josephine, Rosalie)
合唱:各国の人々、旅人、奴隷、アラブ人たち

楽器編成

[編集]
グレトリ

あらすじ

[編集]

時と場所: 18世紀カイロ

第1幕

[編集]
ジャン=シモンによる当時の衣装

隊商がカイロに向かっている。 隊商に従事する者の中には、奴隷商人ユスカとその奴隷ゼリームとその夫サン・ファールも含まれる。ユスカは、美しいゼリームが奴隷市場において高値で売れることを期待している。 アラブ人の一団が隊商を攻撃すると、サン=ファールは自由と引き換えにユスカに彼らを撃退するのに加勢すると申し出る。彼らはアラブ人の一団を追い払いことに成功し、ユスカは約束通りサン=ファールは奴隷から解放するが、ゼリームを解放することを拒否する。

第2幕

[編集]

カイロの宮殿では、パシャが冴えない表情で休んでいる。それでも、パシャは嵐から宝を積んだ船を救ったフランス人フロレスタンの英雄的働きを讃えることは忘れていない。パシャの寵妃であるアルマイードは、ハーレムの女性たちの踊りで夫を元気づけようと試みる。パシャの気分が沈んだままなので、ユスカと宦官長タモランは、パシャにヨーロッパの新しい奴隷の女の子を 1 人か 2 人買ってあげることを思いつく。そこで彼らはします。彼らは奴隷市場に行き、パシャを様々な国から来た奴隷女たち、ハープを演奏するフランス人女、名人芸を伴うアリアを歌うイタリア女、民謡を演奏するドイツ女、ジョージアとインドの踊り手たちを品定めする。パシャはゼリームを一目見て心を奪われ、ゼリームを買ってハーレムに連れ帰る。サン=ファールは妻を救い出すことを誓うのだった。

第3幕

[編集]

祝賀会を待ちながら、フロレスタンは息子を海で失ったことを嘆いている。オスミンはアルマイードに、ゼリームをハーレムから解放しようとするフランス人による陰謀について話す。新たなライバルが現れることを避けたいアルマイードは、オスミンにその陰謀を成功させるために必要なあらゆる支援をするよう勧める。フロレスタンはパシャの歓待に感謝しつつ、出発の準備をする。すると、ゼリーム誘拐未遂の知らせが伝わり、首謀者がフランス人だと聞いてフロレスタンは激怒する。しかし、犯人のサン=ファールはフロレスタンの死んだと思われていた息子であることが明らかになる。パシャは恩人であるフロレスタンの息子となれば、選択の余地はなくサン=ファールとゼリームを解放し、夫婦の再会をもって大団円となる。

主な録音・録画

[編集]
配役
サン=ファール
ゼリーム
オスマン
フロレスタン
アルマイード
指揮者
管弦楽団および合唱団
レーベル
1991 ギィ・ド・メイ
イザベル・プールナール
ジュール・バスタンフランス語版
フィリップ・フッテンロッハー
グレタ・デ・レイヘール英語版
マルク・ミンコフスキ
リチェルカール・アカデミー
(Ricercar Academy)
ナミュール室内合唱団英語版
CD: Ricercar
EAN:5400439002685
2013 シリル・デュボワ英語版
カティア・ベレタス
ジュリアン・ヴェロネーゼ
タシス・クリストヤニス英語版
ジェニファー・ボルギ
ギイ・ファン・ワース英語版
レ・ザグレマン英語版(管弦楽団)
ナミュール室内合唱団
CD: Ricercar (Palazzetto Bru Zane)
EAN:4589538715731

脚注

[編集]
  1. ^ a b Charlton.
  2. ^ a b Pitou, p. 95.
  3. ^ https://www.chateauversailles-spectacles.fr/programmation/gretry-la-caravane-du-caire_e2605 ヴェルサイユ王立歌劇場のホ-ムページ 2023年8月15日閲覧]
  4. ^ https://operatoday.com/2023/06/another-escape-from-the-seraglio-andre-gretrys-le-caravane-du-caire-at-the-chateau-de-versailles/  OPERATODAY 2023年8月15日閲覧]
  5. ^ https://www.forumopera.com/spectacle/gretry-la-caravane-du-caire/ フォーラム・オペラ 2023年8月15日閲覧]
  6. ^ According to the original libretto.
  7. ^ Organico dei fratelli a talento della Loggia parigina di Saint-Jean d'Écosse du Contrat Social (1773–89) (list of the members of this Masonic lodge), reported as an Appendix in Zeffiro Ciuffoletti and Sergio Moravia (eds.): La Massoneria. La storia, gli uomini, le idee. Mondadori, Milan 2004, ISBN 978-8804536468

注釈

[編集]
  1. ^ 出典ではかねてより、この歌手の名前の頭文字 (J.) しか報告していないが、完全な詳細については、以下のイタリア語の資料を参照のされたい。[7]

出典

[編集]
  • Original libretto: La Caravane du Caire, opéra en trois actes, representé à Fontainebleau devant Leurs Majestés, le 30 Octobre 1783, et pour la premiere fois, sur le Théâtre de l'Academie-Royale de Musique, le Mardi 13 Janvier 1784. De Lormel, Paris 1784 (accessible online at Google Books).
  • Period printed score: La Caravane du Caire, opéra ballet en trois actes. Représenté à Fontainebleau devant leurs Majestés le 30 Octobre 1783. Et pour la premiere fois sur le Théâtre de l'Académie Royale de Musique le Lundi 12 Janvier 1784. Huguet, Paris 1784 (accessible online at Gallica).
  • La caravane du Caire, opéra ballet, 3 actes, by Andre Ernest Modeste Gretry, French, digitized by BYU on archive.org

参考文献

[編集]
  • David Charlton: "La caravane du Caire", in: Grove Music Online, ed L. Macy (Retrieved 10 May 2007; grovemusic.com Archived 16 May 2008 at the Wayback Machine., subscription access).
  • Spire Pitou (1985). The Paris Opera: An Encyclopedia of Operas, Ballets, Composers, and Performers. Rococo and Romantic, 1715-1815. Westport, Connecticut: Greenwood Press. ISBN 9780313243943.
  • ギイ・ファン・ワース演奏のCD(Palazzetto Bru Zane)のBenoît Dratwicki, Alexandre Dratwicki, Étienne Jardinによる解説書(EAN:4589538715731)

外部リンク

[編集]