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カスタマーコミュニケーションマネジメント

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

カスタマーコミュニケーションマネジメント(CCM:Customer Communications Management)とは、組織から顧客(公共機関では市民)に対するコミュニケーション、すなわち主としてアウトバウンドで提供する情報や資料について、その作成や送付/配信を統合的に管理、実行するプロセスであり、またこれを改善するイニシアティブである。カスタマーコミュニケーション管理とされる場合もある。

概要

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組織から顧客に対するさまざまな通知や連絡といったコミュニケーションは、顧客が組織を体験する機会であり、組織にとって重要な顧客との接点である。例えば保険といった業種では、顧客が組織を意識し、そのサービスを体験する機会そのものとなる。こうしたコミュニケーションの製作、生成、配信の実行と管理を個別に行うのが狭義のCCMである。部門や商品、局面毎に運用されている、こうした個別のコミュニケーションを組織全体で横断的に管理し、品質と機能を改善することによって、顧客の体験を向上しながら、同時に組織にとっての提供コストを削減することが可能となる。これを目指すものが広義のCCMである。CRMCEMを実行レベルで裏付けるものといえる。

実現に必要なITソリューションセットを定義する際の用語して、ガートナー[注釈 1]Forrester Research[注釈 2]InfoTrendsMadison Advisorsといった調査会社によって使用された。

歴史

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カスタマーコミュニケーションは、Bank Statement - Paper Statementsで示されているように、金融機関にコンピューターが導入され、顧客にトランザクション情報を伝えることから始まった。初期にはメインフレーム上のアプリケーションプログラムと、メインフレームに直結されたプリンターによって実現されていたが、デジタル印刷技術の進展とともに、データ印字にとどまらない印刷物のパーソナライゼーションが可能となった。こうした高速プリンター/デジタル印刷機の機能を活用し、製作/生成(Production)ワークフローを自動化(支援)するドキュメント生成(Document Composition)ソフトウェア[注釈 3]が登場[注釈 4]した。適用業務であるカスタマーコミュニケーションを通して、こうしたソフトウェアの価値を説明したことが、Customer Communications Managementのコンセプトにつながった[注釈 5] ものと推定される。

近年は、複数のメディアやデバイスを一度にカバーする、マルチチャネルが注目されている。

構成要素

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CCMには次のような機能/技術要素が求められる

  • 入力 - 顧客やトランザクション、セグメンテーションなどの各種データ[注釈 6]に加えて、文章やグラフィックスなどのコンテンツ[注釈 7]を、実行時に多様なソース[注釈 8]から取得する
  • デザイン - コンテンツを分かりやすく表現する静的/動的なレイアウト[注釈 9]、およびこれを作成するためのGUI機能。ビジネス担当者による文言などの更新を含む
  • ビジネスロジックパーソナライゼーション - 顧客の契約内容や購入商品、あるいは属性やセグメンテーションなどの情報に基づいて、表示されるコンテンツ(データはその一部)をダイナミックに構成する[注釈 10]
  • 出力生成 - 高速[注釈 11]に、印刷または電子配信向けの多様なフォーマット[注釈 12]で生成する。郵送等のための後処理[注釈 13]も含まれる
  • 配信 - 印刷と郵送[注釈 14]の他、Eメール[注釈 15]、Web、モバイル、ビデオなど、顧客が望むメディアやデバイスで受け取ることを可能とする。また結果の記録[注釈 16]やフェイルオーバー[注釈 17]も含まれる
  • インテグレーション - 種々のプロセスやシステムに共有サービスとして組込むメカニズム[注釈 18]
  • 分析・レポーティング[注釈 19]

また広義のCCM実現のために、次のような機能、プロセスや組織が求められる

  • デザイン標準 - 組織のブランディングに準拠した一貫性と、顧客にとっての分かりやすさ[注釈 20]を担保する
  • COE: Center of Excellence - デザイン等のノウハウを、企業グループ全体で横断的に集約、共有するための専門組織。印刷会社へのソーシングやドキュメント管理全体まで広く統括する場合もある
  • 共有化レポジトリー - プロジェクト全体、あるいは組織を横断して、さまざまなデザイン要素や定義体を共有。デザイン、アプリケーション、ソリューション基盤の統合化(コンソリデーション)を可能とし、変更対象を限定する

ユースケース

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コミュニケーション生成の形態としてバッチ、オンデマンド、インタラクティブがある[注釈 21]

バッチ(Structured、構造化): 月次や年次などあらかじめスケジュールされた構造化されたドキュメント(利用明細、請求書、保険証券、等)を生成する、典型的あるいは古典的なシナリオ。その出力は数万、数百万ページに達する場合もある。出力は印刷の他、顧客別WebやEメールとなる場合もある。

オンデマンド (On-Demand): Web上での利用者のクリック、コールセンター等での操作、あるいは種々のシステムからのイベントをトリガーとして、通知や控え、あるいは詳細などを生成するシナリオ。通常1顧客に対する、1あるいは複数のドキュメントが対象となる。日本ではオンライン生成と呼ばれることが多い。印刷の他、Webやモバイルへの応答、Eメールやモバイルプッシュ、ソーシャルメディアとなる場合もある。

インタラクティブ (Interactive):人的な操作を通して完成されるドキュメントを指す。例えば、顧客との応対の中で、依頼内容に応じた書式を選択し、その条件で必要な付帯/付属資料をピッキングし、全体を示す鏡となる案内ページを先頭に加えて一式の書類として封筒に封入し、送付するような業務があれば、封入に至る作業が即ちインタラクティブなドキュメント生成のプロセスである。CCMでは、このようなプロセス(事務処理)をソフトウェアで支援、または自動化することもシナリオの一つとされている。

CCMソフトウエア

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調査会社によるレポートで取り上げられることが多いものを次に示す。

関連項目

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外部リンク

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注釈

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  1. ^ ガートナーによるCCM定義(Gartner IT Glossary)
  2. ^ ForresterはCCMではなくDOCCM(Document Output For Customer Communications Management)という用語を使用しているが、指す内容に特段の相違を見出すことはできない
  3. ^ 日本では、自動組版ソフトと称されることが多いが、日本印刷産業連合会による報告書で示されているように、本来デジタル印刷は無版であることがその特徴である。生成されたドキュメントは常に印刷されるとは限らず、PDFWebあるいはモバイルなど、印刷されず電子媒体で顧客に提供されるケースも存在が、日本においては組版技術が高かったことから、主として印刷の視点からソフトウェアを評価しようとしたものであろう
  4. ^ 2003年には、Adobe Document Server、Elixir Opus、Exstream Dialogue、GMC PrintNet T、Group 1 DOC1、ISIS Papyrusなどが評価の対象として挙げられていた[1]
  5. ^ Customer Communications Managementという語の初期の用例として、2002年4月のGroup 1 Softwareによるリリース[2]が確認できる。Jeff Cohenが始めた(created)とする説明がWikipediaに見られる[3]が、彼のLinkedIn[3]では、Group 1 Softwareと後にこれを買収したPITNEY BOWESで、在籍した2004年から2006年の間にCCM戦略開発と展開をリードした(Led strategy development and implemetation)としており、彼自身が最初に使ったとする裏付けは確認できない。ただし、例えば2003年12月のCaslon & Companyによるホワイトペーパー[1]では、この語が使用されていない一方、2004年7月のPITNEY BOWESホワイトペーパー[4]では明示されていることから、この時期に同社が積極的な使用を開始したことは推定できる。
  6. ^ メインフレームからの固定長、CSV, XMLなど多様な形式のサポートが必要となることが多い。ETLによる前処理を組み合わせること場合もある
  7. ^ PNGJPEGEPSなどのグラフィックスの他、テキストファイルMS Word形式による文言、PDFによる複数ページドキュメントなども対象となる
  8. ^ ファイルシステムDBMSECMSなど
  9. ^ グラフィックスやチャート、ダイナミックなテーブルといったデザイン要素の配置に加えて、複数ページで構成し、ページ間でのコンテンツのフローが可能である。また生成時の余白(ホワイトスペース)を管理し、マーケティングメッセージなどのコンテンツを配置することも可能
  10. ^ Marketing Automationや顧客分析などと組み合わせ、リコメンデーションやキャンペーンメッセージ/コンテンツを組み込むことで、いわゆるトランスプロモが実現される
  11. ^ 短時間で大量に、あるいは多くのトランザクションをリアルタイムまたは短いレスポンス時間で処理することが必要
  12. ^ PDFやHTMLの他、高速プリンター向けとしてPostScript、AFP、Metacode、また変換やアーカイブ用としてXMLやTIFFなどもサポートされることが多い
  13. ^ 郵送コストを削減するための宛先別ソートや、同一世帯向け同一資料/同一顧客向け複数資料を統合する名寄せ/バンドリング、出力ファイルの変換や分割など
  14. ^ 組織内で実施するとは限らず、印刷会社に印刷以降を委託(アウトソース(BPO, Business Process Outsourcing))することも一般的である
  15. ^ ESP(Email Service Provider、Eメール送信サービス)経由で送信し、開封などの結果を取得する場合もある
  16. ^ 余白に応じてパーソナライズされると、最終的にターゲットに届いたコンテンツを知ることが必要となる
  17. ^ 例えばEメール送信が失敗した際に、郵送で通知する
  18. ^ Web ServicesJMSなどの各種Message Service、その他API等による、生成処理起動/配信連携、データ/コンテンツソース接続、ワークフロー/BPMアーカイブ連携など
  19. ^ 処理統計/監査証跡情報が中心であってが、近年は顧客が組織から受け取るコミュニケーション全体の集約/分析も提唱されている
  20. ^ 「生活者が理解しやすい情報」のデザインとして、UCDAがユニバーサルコミュニケーションデザインの研究、認証を行っている
  21. ^ Forrester Researchはカスタマーコミュニケーションアプリケーションの形態として、Structured(構造化)、On-Demand、Interactiveを挙げている[5]
  22. ^ AdobeはCCM単体での提供からAEMの一部としての提供にシフトしていることから、Forrester Waveの評価対象からは除外されている
  23. ^ HP Inc.からのExstream買収、Dell EMCのEnterprise Content Division買収により、CCM 4製品を持つこととなった点について、GartnerはExstreamに集約されるというロードマップへの注意を促していた。 その後2017年にリリースされた16.2により、xPression以外の製品は、すべてExstreamブランドに統合されているが、それぞれのエンジンはそのまま利用可能となっている。

脚注

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  1. ^ a b Caslon & Company - Software for Individualized Customer Communications
  2. ^ PR Newswire - Group 1 Software's DOC1 Customer Communications Management Suite Now Supporting Scitex Digital Printing's VersaMark(TM) Printers
  3. ^ a b 2016年1月1日閲覧
  4. ^ CUSTOMER COMMUNICATION MANAGEMENT An enterprise-wide methodology for integrated,multi-channel customer communications
  5. ^ The Forrester Wave™: Document Output For Customer Communications Management, Q2 2009、他