カテゴリー7ケーブル

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カテゴリ7ケーブル配線(S-FTP)。4対のツイストペアをシールドで覆い、ケーブル全体も網組シールドを施している。

カテゴリー7ケーブル (: Category 7 cable)は、ツイストペアケーブルの分類の1つ。慣用的に「Cat 7」「Cat.7」などと表記される[1]

10Gbps以上のLAN配線用途としてISO/IEC 11801で規定された[2]が、ほぼ実用性がない[3]

規格と市場動向の乖離[編集]

2023年現在、規格の要件に従う実装はほとんど普及していない[4]。大きな要因の1つとして、ケーブルのコネクタに従来のRJ-45コネクタが使用できないことになっており、周波数性能を確保するために以下のものを用いることが規定されている[5]

カテゴリ7ケーブルの終端として規定されたTERAコネクタ。10GBASE-T策定直後は一時期ヨーロッパで主流となった[6]が、ほとんど普及していない。
Cat.7, 7A, 8.2ケーブルで要求されるコネクタ
コネクタ 周波数特性 規格 ピン数 RJ-45との互換性
GG45 600 MHz IEC 60603-7-7 12ピン あり
ARJ45 3 GHz IEC 61076-3-110 8ピン なし
TERA 2 GHz IEC 61076-3-104 8ピン なし

このような規格準拠ケーブルのベンダーは、シーモン・カンパニー英語版[7]ネクサンス[8]レオニ[9]などわずかにとどまる。

しかし「カテゴリ7」を謳った市販品の多くがRJ-45コネクタを使っており、規格外ながらこの傾向は2000年代後半から続くデファクトスタンダードになっている[10][11]。これら規格外ケーブルの多くは特定の条件下においてケーブル周波数 600MHz の測定要件を満たすものの、規格上はカテゴリ6Aケーブルと呼ぶべきものであり、業界慣習と規格仕様の齟齬に注意を要する[12]JEITAでは、RJ-45ポートへの接続はカテゴリ6Aで十分に性能が出るため、このような規格外ケーブルを選択する必要性がないことを注意喚起している[13]

こうした状況を踏まえ、ISO/IECとは対照的に米国規格 ANSI/TIA-568 では、RJ-45 を用いるカテゴリ3, 5e, 6, 6A, 8.1 のみを規定しており、カテゴリ7は規定していない[14]

規格仕様[編集]

ISO/IEC 11801では、Cat.7 と Cat.7A を規定している。Cat.5Cat.6に比べてクロストークやノイズに対してより厳しい仕様を定めている[2]。ケーブル構造は規定されていないが、4対のツイストペアのそれぞれにシールドを追加し、さらにケーブル全体にもシールドを施すものがあり[15][16]、終端や接地(アース)の取り扱いに留意する必要がある。

カテゴリ7[編集]

Cat.7は、ISO/IEC 11801:2002で規定された。配線品質はクラスFとして上限周波数 600MHz の性能が求められる[17]

10GBASE-Tで100メートルの接続を実現するために策定された[18]が、前述の通りRJ-45が使えないため市場に受け入れられず、2008年に追加規定されたCat.6Aケーブルが一般的に10GBASE-Tでは利用されている[19]

カテゴリ7A[編集]

Cat.7A は、ISO/IEC 11801 Amendment 1 (2008) および Amendment 2 (2010) で規定された。配線品質はクラスFA として上限周波数 1GHz の性能が求められる[17]。カテゴリおよびクラス名の"A"は Argumented (強化された) を意味する。

CATV (862 MHz) を含む様々な目的での利用を意図した[20][21]ものだが、ほとんど用途がない。

2009年時点のペンシルベニア州立大学の Mohsen Kavehrad らによる研究では、イーサネットの40Gbps通信では50メートル、100Gbps通信では15メートルまで利用できるとのシミュレーション結果があり[22]、さらに集積回路の進化 (22~32 nmプロセスルール) によって100メートルの 100Gbps 通信が期待できるとしていた[23][24]。しかし、2016年に規定された 25G/40Gbps イーサネット規格では、ケーブル周波数 1GHz が要件を満たさないため Cat.8 が採用され[25]、またその後も 100Gbps のツイストペアケーブル規格は予定されていない。

カテゴリ8[編集]

Cat.8は、ISO/IEC 11801-1:2016で規定された。配線品質は、クラスIおよびクラスIIとしていずれも上限周波数 2GHz の性能が求められる。また、ANSI/TIA-568-C.2-1 (2016年)では、このうち RJ-45 接続が可能な Cat.8.1 のみが規定された。

  • カテゴリ 8.1 (クラスI): RJ-45コネクタで終端するもの。Cat.6Aと互換性あり。
  • カテゴリ 8.2 (クラスII): TERAGG45 コネクタで終端するもの。Cat.7Aと互換性あり。

25GBASE-T および 40GBASE-T で 30メートルの接続に用いることができる[25]が、現時点では規格実装された機器が極めて少なく、ほとんど用途がない[26]

脚注[編集]

  1. ^ ツイストペア配線最新規格動向と関連情報” (PDF). 社団法人 電子情報技術産業協会. 2018年10月18日閲覧。
  2. ^ a b ISO/IEC 11801-1:2017, Clause 6
  3. ^ Cat7およびCat7A 配線の問題点”. パンドウイット. 2024年4月30日閲覧。
  4. ^ Mark Dearing (2018年10月2日). “Category 7 and 7A see their sunset”. Data Center Dynamics. 2024年4月30日閲覧。
  5. ^ ISO/IEC 11801-1:2017, 10.2.3 Mechanical characteristics
  6. ^ Morihiro Kaneda (タイコエレクトロニクス)『10GBase-TおよびCat.6A配線の規格と技術』ビクシ日本支部 カンファレンス2008、2008年8月22日、3頁。 オリジナルの2013年10月19日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20131019015555/http://www.bicsi-japan.org/event/2008/pdf/kaneda.pdf2024年4月30日閲覧 
  7. ^ TERA® Cat 7A Cabling Shielded Systems”. Siemon. 2024年4月30日閲覧。
  8. ^ LANmark-7 Cable Datasheet”. ネクサンス. 2024年4月30日閲覧。
  9. ^ VarioKeystone® Catalog”. レオニ. 2024年4月30日閲覧。
  10. ^ 超速!10ギガビット対応! カテゴリ7 LANケーブル”. サンワサプライ. 2024年4月30日閲覧。
  11. ^ Cat7 SFTP Patch Cables”. FS.com. 2024年4月30日閲覧。
  12. ^ What is Cat7 - And Why You Don’t Need It”. CABLE MATTERS (2023年2月18日). 2024年4月30日閲覧。
  13. ^ 浅香芳晴(日本製線) (2017年11月6日). “LAN配線の疑問にお答えします”. JEITA LAN配線技術セミナー2017. pp. 9-10 (Q3 & A3). 2024年4月30日閲覧。
  14. ^ ANSI/TIA-568.2-D, Introduction
  15. ^ Alan Flatman (Tiscali) (2013年5月17日). “ISO/IEC TR 11801 ISO/IEC TR 11801-99-1 Guidance on 40GBASE Guidance on 40GBASE-T Cabling T Cabling”. IEEE 802.3bq タスクフォース. p. 10. 2024年4月30日閲覧。
  16. ^ Category 7A 1000 MHz Cable - International”. Siemon. 2024年4月30日閲覧。
  17. ^ a b ISO/IEC 11801-1:2017, Clause 6.3 Classification of balanced cabling
  18. ^ ISO/IEC 11801-1:2017, Annex F - Supported applications
  19. ^ Sheldon (2024年4月18日). “Running 10GBASE-T Over Cat6 vs Cat6a vs Cat7 Cabling?”. FS.com Knowledge Center. 2024年4月30日閲覧。
  20. ^ “Patch cords with integrated baluns enable multi- HD video support”. Cabling Installation & Maintenance. (2008年4月30日). https://www.cablinginstall.com/home/article/16476418/patch-cords-with-integrated-baluns-enable-multi-hd-video-support 2024年4月30日閲覧。 
  21. ^ Siemon (2008年4月28日). “New Siemon Patch Cords with Integrated Baluns Provide Single-Outlet Support of Multiple High-Definition Video Signals”. https://en.prnasia.com/releases/global/New_Siemon_Patch_Cords_with_Integrated_Baluns_Provide_Single_Outlet_Support_of_Multiple_High_Definition_Video_Signals-10115.shtml 2024年4月30日閲覧。 
  22. ^ “DesignCon 2009: 40/100 Gbps Transmission Over Copper”. Semantic Scholar. (2009年2月5日). https://www.magazines007.com/pdf/DC09_Ali.pdf 2024年4月1日閲覧。 
  23. ^ News release: Researchers push transmission rate of copper cables”. PennState. The Pennsylvania State University. 2009年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月1日閲覧。
  24. ^ “UPDATE: Cat-7 copper theorized to transmit 100 Gbps in excess of 100 meters using future modems”. TGDaily. (2007年11月14日). http://www.tgdaily.com/content/view/34854/113/ 2009年2月28日閲覧。 
  25. ^ a b IEEE 802.3-2022, Table 113-21
  26. ^ Does 25GBase-T Exist?”. Level1Techs フォーラム (2024年1月21日). 2024年4月30日閲覧。

関連項目[編集]