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カリン・クナイスル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カリン・クナイスル
Karin Kneissl
 オーストリア外務大臣
任期
2017年12月18日 – 2019年6月3日
宰相セバスティアン・クルツ
前任者セバスティアン・クルツ
後任者アレクサンダー・シャレンベルク
欧州安全保障協力機構議長
任期
2017年12月18日 – 2017年12月31日
前任者セバスティアン・クルツ
後任者アレクサンダー・シャレンベルク
個人情報
生誕 (1965-01-18) 1965年1月18日(59歳)
 オーストリア
ウィーン
政党無所属
出身校ウィーン大学
フランス国立行政学院

カリン・クナイスル (Karin Kneissl、1965年1月18日 – ) は、オーストリア評論家ジャーナリスト政治家外交官である。オーストリアの外交官を務めたのち、中東国際法エネルギー政策の専門家として多くの教育機関で教鞭をとり、メディア出演や著作の出版を行ってきた。

2017年12月、セバスティアン・クルツ政権において外務大臣に登用された。2019年6月に退任後は、2020年からロシアの国営メディアロシア・トゥデイの寄稿者、2021年6月から2022年5月にかけてロシアの国営ガス会社ロスネフチの役員を務めた。

ドイツ語のほか、英語フランス語アラビア語に堪能で、スペイン語イタリア語ハンガリー語ヘブライ語も話す[1]

経歴

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1965年、ウィーンに生まれ、幼少時はアンマンで過ごした[2]。父はヨルダンフセイン1世のパイロットでロイヤル・ヨルダン航空の設立にも関わった人物であった[2]

1983年から1987年までウィーン大学法学とアラビア語を学んだ[3]。卒業後1988年から1989年までエルサレム・ヘブライ大学大学院で国際関係論ウルビーノ大学イタリア語版EU法を学んだ[3]。1989年からはフルブライト研究員としてジョージタウン大学の現代アラブ研究所に所属した[4][5]

1990年、オーストリア外務省に入省した[2]。政治部局、国際法部局に所属し、1995年からは外交官としてパリマドリードに赴任した[5][6]。またこの期間、1991年から1992年までフランス国立行政学院へ留学した[7]。1992年にはウィーン大学で「中東の紛争当事国の国境概念」の学位論文で国際法の博士号を取得した[5]

1998年秋に外務省を退職した。その後フリーランスのジャーナリストおよび評論家として活動、オーストリア放送協会の政治評論番組に出演し知名度を上げた[2][8]

またウィーン大学、ウィーン外交アカデミー欧州ビジネススクール英語版ベイルート・サン・ジョゼフ大学フランス語版英語版オーストリア国防大学校ドイツ語版オーストリア軍士官学校などで講師を務めた[5]。この時期以降、中東情勢、ヒズボラエネルギー政策、国際関係論に関する著作を上梓した[5]

2003年よりオーストリア政治軍事学会(STRATEG)の副会長を務める[9]

政界へ

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2005年から2010年まで、バーデン郡の町ザイベルスドルフドイツ語版の議員を務めた[2][10]

2014年の著書『Mein Naher Osten』の中で、シオニズムをドイツ民族主義に根差した「血と土」のイデオロギーと表現し物議を醸した[11]。2015年の欧州難民危機の際には、難民のほとんどが経済難民であり、亡命希望者の「80%」が20歳から30歳の若い男性であることを強調し、その原因として、仕事も住居もないために「伝統的な社会での男性としての地位」を得られず結婚もできないからだと説明した。こうした発言は批判を生んだ一方、オーストリアの極右勢力からは支持を得ることとなった[2]

2016年、オーストリア自由党党首のハインツ=クリスティアン・シュトラッヘは同年の大統領選候補としてクナイスルの推挙を検討したが、本人の拒否により実現しなかった[2]

外務大臣就任

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2017年12月、クナイスルは、オーストリア国民党と自由党の連立によるセバスティアン・クルツ政権において外務大臣に登用された[12][13][14]。シュトラッヘ自由党党首の推挙によるこの人事について、クナイスルは「ブルーノ・クライスキー時代の伝統を復活させようとしているのでしょう。クライスキーは、オーストリアの利益を海外に示す方法として、外交の重要性を認識していました」と述べた[14]

2018年3月、英国ソールズベリーロシアの元スパイ暗殺未遂事件英語版が発生した。ロシア政府の関与が疑われ、欧州連合はロシアを非難する声明を発表した[15][16]。ヨーロッパ各国がロシア外交官の国外退去を命じた中で[17]、オーストリアはこれに倣わなかった。その理由としてクナイスルは「ロシアとのチャンネルを開けておく必要がある」と説明したが[18][19]、連立政権の一翼である自由党がロシアと近いことも要因であると指摘された[20]

2018年8月、スロベニアとの国境に近い小さな町ガムリッツにおいて、実業家ヴォルフガング・マイリンガーと結婚式を挙げた[21]。この結婚式にはロシア大統領ウラジーミル・プーチンが参列し、共に踊りを披露した[22][23][24]。2014年のクリミア併合マレーシア航空機17便撃墜疑惑、2015年のシリアへの軍事介入に加え、前述の元スパイ暗殺未遂事件などによりロシアに対する警戒感が強まっている中でのことであり[25]、国内外から強い批判を浴びた[26][27][28][29]

2019年5月、不信任決議によりクルツ政権が倒れ、クナイスルも政務を退くこととなった。

大臣退任以降

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2020年、クナイスルはロシア・トゥデイへの寄稿を開始した[30][31][32]。同年秋にはオーストリアを離れフランスに移住した。その理由として、度重なる脅迫やメディアでの報道を挙げている[33]。また、同年11月よりプーシキン記念ロシア語大学でオンラインロシア語講座の受講を開始した[1][34]

2021年3月、ロシアの国営ガス会社ロスネフチの取締役に就任することが報じられた[35][36]

2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアに対して多くの経済制裁が行われた。2022年5月にはクナイスルに対しても制裁が検討されているとの報道がなされた[37][38]。5月下旬、ロスネフチの取締役を辞任した[39][40][41]

ギャラリー

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出典

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  1. ^ a b ABOUT ME — English”. www.kkneissl.com. 2022年8月23日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Karin Kneissl: Nahost-Experten mit Hang zur Kontroverse wird Außenministerin | Kleine Zeitung” (ドイツ語). www.kleinezeitung.at (2017年12月16日). 2022年8月22日閲覧。
  3. ^ a b Peischel, Wolfgang (2019-05-27) (ドイツ語). Wiener Strategie-Konferenz 2018: Srategie neu denken. BoD – Books on Demand. ISBN 978-3-945861-90-5. https://books.google.co.jp/books?id=w0GaDwAAQBAJ&pg=PA571 
  4. ^ Karin Kneissl” (ドイツ語). MCI Innsbruck. 2022年8月22日閲覧。
  5. ^ a b c d e Dr. Karin Kneissl”. www.kkneissl.com. 2022年8月22日閲覧。
  6. ^ Karl, Beatrix; Mantl, Wolfgang; Poier, Klaus; Prisching, Manfred; Prettenthaler-Ziegerhofer, Anita (2016-05-09) (ドイツ語). Steirisches Jahrbuch für Politik 2015. Böhlau Verlag Wien. ISBN 978-3-205-20419-0. https://books.google.co.jp/books?id=gplVDAAAQBAJ&pg=PA376 
  7. ^ Dr. Karin Kneissl, Biografie | Parlament Österreich” (ドイツ語). www.parlament.gv.at. 2022年8月22日閲覧。
  8. ^ „Linzer Torte“ mit Karin Kneissl” (ドイツ語). ooe.orf.at (2015年11月29日). 2022年8月22日閲覧。
  9. ^ Die STRATEG”. www.strateg.at. 2022年8月22日閲覧。
  10. ^ Gemeindeorgane Marktgemeinde Seibersdorf”. web.archive.org. 2009年4月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月22日閲覧。
  11. ^ Ahren, Raphael (15 January 2018). “New Austrian FM denies having compared Zionism with Nazism” (英語). The Times of Israel. 2022年8月22日閲覧。
  12. ^ Sebastian Kurz gets approval for coalition with Austrian far right” (英語). POLITICO (2017年12月16日). 2022年8月22日閲覧。
  13. ^ “Austria protest as far right Freedom Party tastes power” (英語). BBC News. (2017年12月18日). https://www.bbc.com/news/world-europe-42396078 2022年8月22日閲覧。 
  14. ^ a b Power limited for Austrian foreign minister, fan of Bruno Kreisky, critic of Juncker” (英語). Euractiv (2017年12月19日). 2022年8月22日閲覧。
  15. ^ Liechtenstein, Stephanie (2018年4月18日). “Why Austria’s response to the Skripal poisoning wasn’t so tough on Russia” (スペイン語). Revista de Prensa. 2022年8月23日閲覧。
  16. ^ European Council (22 March 2018). “European Council conclusions on the Salisbury attack, 22 March 2018” (英語). European Council. 2022年8月23日閲覧。
  17. ^ Alia Chughtai, Mariya Petkova (3 Apr 2018). “Spy row diplomatic expulsions” (英語). Al Jazeera. 2022年8月23日閲覧。
  18. ^ AFP (2018年3月27日). “'Neutral' Austria won't expel Russian diplomats”. Business Standard India. https://www.business-standard.com/article/pti-stories/neutral-austria-won-t-expel-russian-diplomats-118032700034_1.html 2022年8月23日閲覧。 
  19. ^ ‘Mature, trust-based partnership’: Moscow & Vienna keep ties level-headed as Austria FM set to visit” (英語). RT International (2018年4月18日). 2022年8月23日閲覧。
  20. ^ Stephanie Liechtenstein (April 18, 2018). “Why Austria’s response to the Skripal poisoning wasn’t so tough on Russia”. The Washington Post. 2022年8月22日閲覧。
  21. ^ プーチン大統領、オーストリア外相の結婚式に出席 野党から外相辞任要求も”. AFP. 2022年8月22日閲覧。
  22. ^ “Cossacks and flowers as Putin dances at Austrian minister's wedding” (英語). Reuters. (2018年8月18日). https://jp.reuters.com/article/cnews-us-russia-austria-putin-idCAKBN1L30GP-OCATP 2022年8月23日閲覧。 
  23. ^ Radio Free Europe/Radio Liberty (2018年8月19日). “Putin Waltzes At Austrian Foreign Minister’s Wedding”. YouTube. 2022年8月22日閲覧。
  24. ^ VIP guest Putin brings big bouquet of flowers, dances with Austrian FM at her wedding (PHOTOS)” (英語). RT International (2018年8月18日). 2022年8月23日閲覧。
  25. ^ 長谷川良 (2018年8月18日). “プーチン氏を結婚式に招いた外相”. アゴラ. 2022年8月22日閲覧。
  26. ^ Kneissl-Hochzeit: Kritik an Knicks und Putin-Einladung” (ドイツ語). Salzburg24 (2018年8月21日). 2022年8月22日閲覧。
  27. ^ Medien nach Kneissl-Hochzeit: "Man tanzt nicht ungestraft mit Putin"” (ドイツ語). Die Presse (2018年8月20日). 2022年8月22日閲覧。
  28. ^ “A bow or a curtsey? Austrian minister's gesture to Putin sparks furor” (英語). Reuters. (2018年8月21日). https://www.reuters.com/article/us-russia-austria-wedding-idUSKCN1L61CI 2022年8月22日閲覧。 
  29. ^ “Vladimir Putin attends Austrian foreign minister's wedding” (英語). BBC News. (2018年8月18日). https://www.bbc.com/news/world-europe-45229235 2022年8月22日閲覧。 
  30. ^ Jutta Sommerbauer (2020年5月9日). “Ex-Außenministerin Kneissl schreibt für Kreml-Propagandasender RT” (ドイツ語). Die Presse. 2022年8月23日閲覧。
  31. ^ Exministra austríaca de Exteriores que bailó con Putin trabaja para RT” (スペイン語). DiarioHispaniola. 2022年8月23日閲覧。
  32. ^ Ex-Ministerin Kneissl tanzte mit Putin – jetzt schreibt sie für RT” (ドイツ語). watson.ch. 2022年8月23日閲覧。
  33. ^ Karin KNEISSL ENERGY ANALYST, BOOK AUTHOR & LECTURER”. www.kkneissl.com. 2022年8月22日閲覧。
  34. ^ Здравствуйте, Лев Толстой!” (ロシア語). Гос. ИРЯ им. А.С.Пушкина. 2022年8月23日閲覧。
  35. ^ Austrian ex-minister joins list of EU's pro-Kremlin lobbyists” (英語). EUobserver. 2022年8月23日閲覧。
  36. ^ Ex-Austrian minister who danced with Putin at wedding lands Russian oil job” (英語). The Guardian (2021年6月2日). 2022年8月23日閲覧。
  37. ^ Former Austrian Foreign Minister Kneissl and former German Chancellor Schroder to face sanctions pressure” (英語). The New Voice of Ukraine (18 May 2022). 2022年8月23日閲覧。
  38. ^ MEPs urge sanctioning the likes of ex-chancellor Schröder” (英語). EUobserver (2022年5月19日). 2022年8月23日閲覧。
  39. ^ “Rosneft says ex-Austrian foreign minister leaves board” (英語). Reuters. (2022年5月23日). https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-russia-austria-idUSR4N2WX04Z 2022年8月23日閲覧。 
  40. ^ Former Austrian foreign minister Karin Kneissl resigns from Rosneft board of directors following Schroeder and Warnig”. Interfax News Agency. 2022年8月23日閲覧。
  41. ^ Former Austrian FM quits Russian oil giant” (英語). RT International (2022年5月23日). 2022年8月23日閲覧。

外部リンク

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