カンタータ (ストラヴィンスキー)
『カンタータ』(Cantata)は、イーゴリ・ストラヴィンスキーが1952年に作曲した、独唱、合唱、および室内楽による英語の声楽曲。
1951年の英語のオペラ『放蕩児の遍歴』までの新古典主義音楽と、1953年の七重奏曲にはじまるセリー音楽の時代の中間に作曲された。
ストラヴィンスキーは『星の王』などカンタータをほかにも作曲しているが、単に「カンタータ」と呼んだ場合はこの曲を指す。
概要
[編集]『カンタータ』は1951年から翌年にかけて作曲され、1952年11月11日にロサンゼルス室内管弦楽団によって初演された[1]。ストラヴィンスキー本人の指揮により、『12楽器のためのコンチェルティーノ』(1920年の『弦楽四重奏のためのコンチェルティーノ』の編曲)も同日演奏された[2]。
『放蕩児の遍歴』の台本作者であったW・H・オーデンが1950年に出版した15-16世紀の詩集『Poets of the English Language』の中の作者未詳の詩から歌詞が選ばれた[3]。内容はキリスト教的なものと世俗的なものの両方を含む。英語圏では比較的有名な詩が多く、「Lyke-Wake Dirge」はベンジャミン・ブリテンが[4]、「Tomorrow shall be...」はグスターヴ・ホルスト[5]がストラヴィンスキー以前に作曲している。
1952年、13年ぶりにストラヴィンスキーがパリを訪れたとき、インタビューに答えて十二音音楽の作曲者を尊敬し、十二音音楽は純粋な音楽であると高く評価している[6]。初演時のストラヴィンスキーによる曲目解説では、リチェルカーレIIが十二音音楽ではないものの、11の音(同音重複あり)からなる音型とその反行・逆行・反行の逆行という手法で書かれていることを細かく説明している[1]。このリチェルカーレIIは全曲の中央に置かれ、全曲の半分近くの長さを占める。
構成
[編集]ソプラノ、テノール、女声合唱と器楽五重奏による。五重奏はフルート2、オーボエ2(第2オーボエはコーラングレ持ちかえ)、チェロから構成される。演奏時間は約30分。
- 通夜の葬送歌 (A Lyke-Wake Dirge, Prelude) 合唱
- リチェルカーレI:乙女たちが来た (Ricercar I - 'The maidens came...') ソプラノ
- 通夜の葬送歌 (A Lyke-Wake Dirge, 1st Interlude) 合唱
- リチェルカーレII:明日は私の踊りの日 (Ricercar II - 'Tomorrow shall be...') テノール
- 通夜の葬送歌 (A Lyke-Wake Dirge, 2nd Interlude) 合唱
- 西風 (Westron Wind) ソプラノとテノール
- 通夜の葬送歌 (A Lyke-Wake Dirge, Postlude) 合唱
脚注
[編集]参考文献
[編集]- Richard Taruskin (2009). The Danger of Music, and Other Anti-Utopian Essays. University of California Press. ISBN 9780520268050
- Eric Walter White (1984) [1966]. Stravinsky: The Composer and His Works (2nd ed.). University of California Press. ISBN 0520039858