大巨獣ガッパ
大巨獣ガッパ | |
---|---|
Gappa | |
監督 | 野口晴康 |
脚本 |
山崎巌 中西隆三 |
出演者 |
川地民夫 山本陽子 和田浩治 藤竜也 町田政則 |
音楽 | 大森盛太郎 |
主題歌 |
「大巨獣ガッパ」 美樹克彦 |
撮影 | 上田宗男 |
編集 | 辻井正則 |
製作会社 | 日活 |
配給 | 日活 |
公開 | 1967年4月22日 |
上映時間 | 84分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
『大巨獣ガッパ』(だいきょじゅうガッパ)は、1967年(昭和42年)4月22日に公開された日活製作の日本のカラー怪獣映画作品である。監督は野口晴康、主演は川地民夫。シネマスコープ。
概要
[編集]日活が当時の「怪獣ブーム」に乗って製作した唯一の怪獣映画であるが[1]、後述のガッパの特徴や、企業・科学者の倫理のみならず、仕事に猛進して家庭をないがしろにする親など家族をテーマに据えた内容から、怪獣映画の中でも独特の存在感を持つ作品である。
日活では初の本格的特撮怪獣映画であり、ストーリーはいくつものプロットが作成され、2本のパイロットフィルムを経て、完成作品に至った。
ストーリー
[編集]週刊誌『プレイメイト』記者の黒崎浩は、カメラマンの小柳糸子、そして東都大学生物学助教授・殿岡らと共に、プレイメイト社長・船津の命を受けて南太平洋の探検を行っていた。この探検には、会社が創刊5周年記念で計画中の南国をイメージした一大テーマパークを実現させるため、生物採集や現地人のスカウトの意味もあった。
長い航海の末、噴火中のキャサリン諸島オベリスク島に謎の石像を発見した一行は島へ上陸。一行は島民達に遭遇するが、戦前日本の統治下にあったか、あるいは戦時中日本軍の占領下にあったらしく、彼らの一部は日本語を理解でき、「日本人が帰ってきた」と手厚い歓迎を受ける。そんな中、先の石像が気になった黒崎は少年・サキにその件を尋ねる。サキは黒崎と糸子を連れ、その場所へと案内する。
やがて3人は巨大な石像の元にたどり着く。と、突如として発生した地震によって石像は倒れ、その跡には洞窟の入り口が出現した。サキの制止も聞かず、黒崎と糸子は中へと入っていく。島の地下には巨大な地底湖があり、巨大な骨、そして2メートルほどの大きな卵があった。さらに、卵が孵化し、思わぬ獲物に喜んだ黒崎はガッパの怒りを恐れる島民の反対を押し切って、日本へ連れ帰ってしまう。子供が連れ去られたことを知った親ガッパは怒りに荒れ狂って島の集落を襲撃する。
一方、東京へ着いた黒崎らは子ガッパを調べるうちに、自分の所在を遠隔地の仲間に伝える能力があることを知る。その頃、国籍不明の飛行物体2機が出没。殿岡はその飛行物体を「親ガッパではないか?」と直感する。そしてついに2羽の親ガッパが相模湾からその巨体を現す。2羽は熱海市のホテル街を蹂躙、出動した自衛隊を、口から吐く4000度の高熱線で焼き尽くして退け、河口湖湖底に潜伏する。
ガッパは瞬く間に人々の話題をさらい、ガッパを特集した『プレイメイト』は大ヒットする。雑誌の売れ行きに喜ぶ船津。時を同じく、米海軍の潜水艦に救助されて島から来日したサキは子ガッパをすぐ親に返すよう説得するが、糸子以外は誰も応じない。一方、弱点である不協和音で河口湖から追い出されたガッパは、日光を経て国道4号に沿って子ガッパのいる東京に向かう。東京全滅が懸念される中、サキの「子ガッパを返せば親ガッパはおとなしく帰る」という言葉通り、黒崎らは子ガッパを羽田空港で解放。やがて子ガッパの鳴声に誘導されて現われた親ガッパは再会を喜び、まだ飛べない子ガッパに飛び方を教え、夜明けの空を3羽で南を目指して飛び去っていく。
大巨獣ガッパ
[編集]ガッパ(オス) | |
---|---|
身長 | 60m |
体重 | 6000t |
(メス) | |
身長 | 55m |
体重 | 5000t |
太い胴体から手足、尻尾にかけて全身が三角形の鱗で覆われ、背中に大きな羽根のついた姿をしており、陸・海・空に適応している。オベリスク島の守護神的存在と考えられる。
オス・メス(夫婦 = 父・母)に加えて、子供まで存在するという極めて希有な怪獣である。夫婦間の関係は当然良好であるが、子供を思いやる感情は人間を上回るものを有する。巨大怪獣であるが故の都市破壊は行うが、それは人間に連れ去られた子供を奪い返すための必死の行動であり、さらに怪獣の親子が再会を喜び抱擁するシーンを描くという手法で親子の情愛を表現しており、怪獣映画としては珍しく叙情的な作品でもある。
- デザイン、造形等
- デザインは渡辺明による。同じ渡辺の手がけたウルトラマンのデザイン初稿の「ベムラー」に似ているが、そもそものデザインのヒントは迦楼羅像や烏天狗にあった。
- ぬいぐるみの造形は開米栄三がメインとなって行った[3] 。
- 当時、ニットーから、ゼンマイ仕掛けで歩行するプラモデルキットが発売されていた[注釈 3]。
- 諸設定
- この怪獣ガッパの生態や能力などについては、美術スタッフによって細かい設定がなされていた。これらの諸設定は、本作DVDの特典映像で詳しく紹介されている。
登場兵器・メカニック
[編集]架空
[編集]- 不協和音発生装置
- 河口湖に潜伏するガッパを水中から追い出すために急遽開発された装置。1基に計8つのスピーカーが取り付けられており、そこから高出力の不協和音を発射する。操作は有線で行われ、4隻の無人モーターボートに1基ずつ乗せられて河口湖の中央付近まで運ばれると、そこで停止したモーターボートと共に湖底へ沈められる。そして、湖底に着底すると不協和音を発射し、この不協和音に耐えきれなくなった2匹のガッパを水上へ追い出すことに成功する。
実在
[編集]キャスト
[編集]- 川地民夫 - 黒崎浩
- 山本陽子 - 小柳糸子
- 小高雄二 - 殿岡大造
- 和田浩治 - 町田
- 藤竜也 - ジョージ・井上
- 雪丘恵介 - 船津
- 山田禅二 - カモメ丸船長
- 加原武門 - オベリスク島の長老
- 杉江弘 - 新聞記者A
- 弘松三郎 - 細田
- 長尾敏之助 - 対策会議の陸上自衛隊司令官
- 神山勝 - 緊急対策会議の教授
- 桂小かん - 林三郎
- 長弘 - 輸送機の機長
- 押見史郎 - 大山
- 大谷木洋子 - 相原
- 河野弘 - 緊急対策本部本部長
- 峰三平 - 島民
- 小柴隆 - プレイメイトの記者
- 玉井謙介 - 島民
- 里実 - プレイメイトの記者
- 松丘清司 - 島民
- 伊藤浩 - 新聞記者B
- 三谷忠雄 - 空港の管制官
- 島村謙次 - プレイメイトの記者
- 漆沢政子 - 島民
- 森みどり -
- 橘田良江 - 熱海の芸妓
- 深町真喜子 -
- 平塚ひろみ - 鶴子
- 町田政則 - サキ
- マイク・ダニーン - アメリカ潜水艦乗組員
- ルイジ・フィダンザー - アメリカ潜水艦艦長
- ポール・シューマン - マクドナルド医師
- 熱海弘到・小永井孝 - ガッパ雄
- 三杉健・戸波志朗 - ガッパ雌
- 小山政則 -
- 松丘英憲 -
- 花柳萬利助 - 日本舞踊の先生
- 漆沢政子 - 振付
- 以下ノンクレジット
- 菊田一郎 - かもめ丸船員
- 坂巻祥子・水城英子・西原泰江 - プレイメイトの女性記者
- 式田賢一・今村弘 - プレイメイトの記者
- 村上和也 - プレイメイトの記者・管制官
- 根本義幸 - 島民・自衛隊員
- 佐藤了一・菅原義夫 - 島民
- 吉田朗人 - 島民・自衛隊幹部
- 大庭喜儀 - 研究所員・副機長
- 露木譲 - 研究所員
- 田中滋 - 管制官
- 園田健夫・椿麻里 - 機長に取材する記者
- 土田義雄 - 熱海の宴席の客・会議の警察関係者
- 市原久 - 宴席の客・結婚記念撮影のカメラマン
- 千代田弘・新津邦夫・池沢竜・久遠利三・山岡正義 - 熱海の宴席の客
- 伊豆見英輔 - 宴席の客・結婚記念出席者
- 宮沢尚子・本間節子 - 熱海の芸妓
- 佐川明子・高橋明 - 熱海の避難民
- 賀川修嗣・水木京一・新村猛 - 会議室の前の記者
- 伊丹慶治・八代康二・緑川宏 - 緊急対策本部会議の自衛隊幹部
- 村田寿男・伊達満・上原一二三 - 緊急対策本部会議出席者
- 山之辺潤一 - 河口湖の対策本部の自衛隊幹部
- 東郷秀美 - 緊急対策本部のメガネの記者
スタッフ
[編集]- 監督:野口晴康
- 企画:児井英生
- 原案・特技監督:渡辺明
- 脚本:山崎巌、中西隆三
- 撮影:上田宗男
- 照明:土田守保
- 編集:辻井正則
- 美術:小池一美
- 録音:高橋三郎
- 現像:東洋現像所
- 音楽:大森盛太郎
- 助監督:橋本裕、林功、小沼勝
特殊撮影スタッフ
[編集]- 撮影:柿田勇、金田啓治、中村義幸
- 照明:高橋勇
- 美術:山本陽一
- 協力:株式会社日本特撮映画
- 渡辺明、菅沼峻、真野田幸雄、大隅銀蔵
主題歌
[編集]特徴
[編集]ゴジラやウルトラ怪獣など、他社の怪獣作品が積極的に建造物を破壊するのに対し、ガッパはあくまで行く手を阻むもののみを破壊する。これは、「子供に見せる映画として、破壊に快楽を求めさせてはいけない」という意図的な演出である。
「怪獣が主人公らの機転によって怒りを静め、空港から飛び発って南の島へ帰る」という結末は、東宝の『モスラ』に似ている。また、日本製の怪獣映画としては数少ない、人類・怪獣ともにハッピーエンドを迎える作品となっている。
本作は、社団法人「映画輸出振興協会」による輸出映画産業振興金融措置の融資を受けて製作された[4][1]。また、ストーリーはイギリスの怪獣映画『怪獣ゴルゴ』(1961年)を下敷きにしたと言われている[5][6]。
なお、米軍の扱いであるが、カーラジオから「対策本部が自衛隊と米軍に撃退協力を依頼」「まもなく攻撃が始まる予定」と言及されるに留まっている[注釈 7]。
熱海城に迫ったガッパを戦闘機が攻撃するシーンで、スタジオ天井の照明器具が写ってしまっているカットがある。(53'42")
本作品の合成には、飯塚定雄や石井義雄ら東宝の合成スタッフが同社に無断で参加している[7][8]。石井によれば、本作品への参加は日活の特撮スタッフである金田啓治からの依頼であったといい、撮影所には行かず自宅で作業を行っていたため、問題にはならなかったという[7]。
漫画
[編集]映像ソフト
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
サウンドトラック
[編集]- 大巨獣ガッパ オリジナル・サウンドトラック(2020年8月19日/CINEMA-KAN/規格番号CINK-102)
本編で使用された音源に加えて海外公開版で使用された音楽も収録されているほか、付属のブックレットに撮影中やスーツ製作時の貴重な写真が掲載されている。
関連項目
[編集]- 第一次怪獣ブーム
- 宇宙大怪獣ギララ - 同じ1967年(昭和42年)の怪獣映画。特撮は本作品と同じく日本特撮映画が手掛けた[1]。
- 宇宙船レッド・ドワーフ号 - イギリスのSFコメディドラマ。第24話にガッパが登場している、映像は本作のフィルムを流用。
- デスカッパ - 2010年11月27日公開。本作モチーフのアメリカ完全出資・日本製作の映画。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c 電撃ホビーマガジン編集部 編「プロジェクト東宝チャンピオンまつり 祭り囃子は遠くに」『ゴジラ 東宝チャンピオンまつり パーフェクション』KADOKAWA(アスキー・メディアワークス)〈DENGEKI HOBBY BOOKS〉、2014年11月29日、123頁。ISBN 978-4-04-866999-3。
- ^ 天野ミチヒロ, 2017年, 第57回<怪獣ブーム50周年企画 PART-8>『大巨獣ガッパ』, BOOKSTAND映画部! , ブックスタンド
- ^ 『マグマ大使』LDBOX解説書より。
- ^ “参議院会議録情報 第063回国会 文教委員会 第4号”. 参議院 (1970年10月23日). 2015年8月14日閲覧。
- ^ トライワークス (2012年2月26日). “ゴジラやガメラにはなれなかった不遇な二大怪獣って知ってる?”. MOVIE WALKER PRESS (MOVIE WALKER) 2024年11月25日閲覧。
- ^ 望月苑巳 (2024年5月11日). “〝山本陽子のための映画〟ガッパよりも観客を魅了した美貌 日活が作った唯一の怪獣映画 「大巨獣ガッパ」(1967年)”. zakzak (産経デジタル) 2024年11月25日閲覧。
- ^ a b 東宝ゴジラ会 2010, p. 97, 「第二章 円谷組スタッフインタビュー INTERVIEW6 石井義雄」
- ^ 東宝ゴジラ会 2010, p. 105, 「第二章 円谷組スタッフインタビュー INTERVIEW7 飯塚定雄」
- ^ 「'99TV・映画 特撮DVD・LD・ビデオ&CD」『宇宙船YEAR BOOK 2000』朝日ソノラマ〈宇宙船別冊〉、2000年4月20日、59頁。雑誌コード:01844-04。
- ^ 「2000TV・映画 特撮DVD・LD・ビデオ&CD」『宇宙船YEAR BOOK 2001』朝日ソノラマ〈宇宙船別冊〉、2001年4月30日、67頁。雑誌コード:01844-04。
参考文献
[編集]- 東宝ゴジラ会『特撮 円谷組 ゴジラと東宝特撮にかけた青春』洋泉社、2010年10月9日。ISBN 978-4-86248-622-6。