ガリア戦記
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『ガリア戦記』(ガリアせんき、ラテン語: Commentarii de Bello Gallico)は、共和政ローマ期の政治家・軍人のガイウス・ユリウス・カエサルが自らの手で書き記した、「ガリア戦争」の遠征記録である。続篇として、ルビコン渡河以降の「ローマ内戦」を記録した『内乱記』がある。
指揮官カエサル自らが書いた本書は、もともとは元老院への戦況報告の体裁を取っていたと考えられ、文中において自己に言及するときは「カエサル」もしくは三人称で書かれていることが特徴である。また文中の所々にガリア人・ゲルマン人の風俗についての記述がある。
タイトル
[編集]中世の写本などから、カエサルが刊行した当初の題名は、『ガイウス・ユリウス・カエサルの業績に関する覚書』(C.Iulii Caesaris Commentarii Rerum Gestarum) であり、今日では『ガリア戦記』と分離されている続篇『内乱記』とひとまとめの書物であったと推測される。後に便宜上、『ガリア戦記』の方を「~ de Bello Gallico」、『内乱記』の方を「~ de Bello Civili」等と区別・分離するようになっていった。ルネサンス以降の刊行における題名は『カエサルのガリア戦争に関する覚書』(Caesaris Commentarii de Bello Gallico) であり、さらに省略され今日流布している題名になった。
構成
[編集]本書は全8巻からなり、紀元前58年から同51年にかけて8年間にわたるガリア、ゲルマニア、ブリタンニアへの遠征について記述している。なお第8巻のみ、カエサルでは無く、元同僚のアウルス・ヒルティウスが執筆している。
- 第1巻(紀元前58年)
- ヘルウェティイ族との戦闘、アリオウィストゥス率いるゲルマニア人との戦い
- 第2巻(紀元前57年)
- ガリア北東部(ベルガエ人たちの居住地)への遠征
- 第3巻(紀元前57年-56年)
- 大西洋岸諸部族との戦争(山岳部族、アクィタニー人、北方部族との各・戦い)
- 第4巻(紀元前55年)
- 第一次ゲルマニア遠征、第一次ブリタンニア遠征
- 第5巻(紀元前54年)
- 第二次ブリタンニア遠征、ガリア遠征初の大敗
- 第6巻(紀元前53年)
- 第二次ゲルマニア遠征
- 第7巻(紀元前52年)
- ウェルキンゲトリクス率いるガリア人の大反攻、アレシアの戦い
- 第8巻(紀元前51年-50年)
- 戦後処理。本巻のみアウルス・ヒルティウスの著
日本語訳
[編集]- 『ガリア戦記』 近山金次訳、岩波文庫※、改版2010年。ワイド版1991年[1]
- 『ガリア戦記』 國原吉之助訳、講談社学術文庫※、1994年[2]
- 『新訳 ガリア戦記』 中倉玄喜訳・解説、PHP研究所、2008年。同・普及版(新書判、上・下)※、2013年。PHP文庫※、2024年
- 『ガリア戦記』 石垣憲一ほか訳、解説青柳正規、平凡社ライブラリー※、2009年
- 『カエサル戦記集 ガリア戦記』 高橋宏幸訳・注解、岩波書店、2015年
- ※は電子書籍も刊
脚注・出典
[編集]参考文献
[編集]- 高橋宏幸 『カエサル「ガリア戦記」 歴史を刻む剣とペン』 岩波書店〈書物誕生 あたらしい古典入門〉、2009年。ISBN 978-4-00-028291-8
- 『ケルト文明とローマ帝国 ガリア戦記の舞台』 創元社〈「知の再発見」双書〉、2004年
- フランソワーズ・ベック、エレーヌ・シュー、遠藤ゆかり訳、鶴岡真弓監修。ISBN 4-422-21174-9
- トム・ホランド 『ルビコン 共和政ローマ崩壊への物語』 中央公論新社、2006年
- 小林朋則訳、本村凌二監修。ISBN 4-12-003764-9
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 対訳ガリア戦記(ウィキブックス)
- "ガリア戦記を読む". 2021年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月18日閲覧。