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クースクリド・メン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

クースクリド・メンアイルランド語: Cúscraid Mend Macha[1]; 異綴り Cumscraid[2]) (発音ガイド: /'ku:skrid m'eN 'maxa / (Maier 1997) /cŏŏs'crĭ/ (Cross & Slover 1936) /KOOS-kridh/ (Paddy Brown)[3]) は、「メン」=「どもり(吃音症)」または「唖者」の異名をとるアルスター伝説の戦士で、アイルランド神話の登場人物。アルスターの王コンホヴァル・マク・ネサの王子。兄のコルマク・コン・ロンガスに次ぐ王位後継者に認められた。綽名は、「メン・マハ」(「アルスター王都エヴァン・マハ英語版のどもり男」の意)ともつくる。

国では若者が武具装備帯刀を許される年齢になると、宿敵国コナハトに(単独ではなく仲間をひきつれて)行って、敵国人を一人の討ち取ってくるしきたりであった。しかしクースクリドはこの通過儀礼をおこなう際、強敵 ケト・マク・マーガハ英語版によって負傷し、言葉の自由を失った。説明は二通りあって委細が異なる。

古典の人名由来集によれば、口(を襲った武器に)より、舌の先端を失って「メン(唖者/吃音者)」となったとされる[4])。

別の短編物語によれば、初武装(初陣)[5]のとき、国境近くでケトと遭遇し、仲間の1/3を置き去りにして逃げたが、槍で喉をつかれ、喉の筋を損傷して正しく言葉を発音できなくなった[6][7]

また、ある短編のなかでは、クースクリド、クー・フリンコナル・ケルナハの三人を思い慕うアルスターの女性たちは、その愛情ありあまり、彼らにそなわる不具までも、そっくり真似て見せたと記されている。すなわち、クースクリド熱愛者はそのどもりを真似、コナル・ケルナハ心酔者は(背筋/首筋が?)ひん曲がった歩行をなぞり、クー・フリン支持者はその容体をゆがませた狂戦士状態(アイルランド語: ríastrad; 英訳:battle fury, warp spasm)に模して片目が見えないふりを装った[8]

後年、コンホヴァルの死後、アルスターの臣民はまず、長子のコルマク・コン・ロンガスを王として奉戴しようとしたが、帰途につく途中で戦死した。そこで従兄弟コナル・ケルナハに王位を継がせる意見もでたが、コナルは自分の里子として養育したクースクリドを推したので、クースクリドがアルスター王に即位した[9]

クースクリドは、「勝利の」を意味するコスグラハ (アイルランド語: Coscrach)という盾または剣をもつ[10]。さらには、『クアルンゲの牛捕り』では、 クースクリドの槍が「蝋燭」を意味するカネル(?)(現代発音 キニェル アイルランド語: Caindel, Cainnel)と呼ばれているふしがあるが、単に「蝋燭(松明)のようにまばゆい」とも解釈される[11]

ほんの噂ほどの記述だが、クースクリドは、ルーン(ルイン)の凶刃に倒れたという記述がある[12]

脚注

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  1. ^ 『マク・ダトーの豚の話』 Chadwick 1927編訳本や、その他作品にみられる標準綴り
  2. ^ 『マク・ダトーの豚の話』異本Meyer 1894, pp. 51–64編訳本, The Story of Mac Dáthó's Pig and Hound, ¶14
  3. ^ Paddy Brown. “The Ulster Cycle”. February 10, 2012閲覧。(個人サイト)
  4. ^ 『コール・アンマン(名字義)』:Stokes 1897, pp. 404–5 編訳 Coire Anmann, #279 Cuscraid Mend Macha ('the Dumb of Macha'):"Cet wounded Cuscraid through his mouth, and shore off the point of his tongue.."
  5. ^ cetgaihaiscedh=cet "first-" + "weapon; feat with arms" eDIL
  6. ^ 『マク・ダトーの豚の話』 Story of Mac Da Thó's Pig, Chadwick 1927, ¶14(p.13 原文, p.21 英訳); Meyer 1894, ¶14 (p.54 原文 p.61 英訳) "Thou (left) with a spear through thy throat so that no word comes rightly over thy lips,.."
  7. ^ 前述『コール・アンマン(名字義)』#278 によれば、ケトが喉を怪我させ言語障害者にさせた相手は、サール=ホルグの息子メンであった("..Mend son of Sál-cholg 'Heel-sword' in the throat")
  8. ^ クー・フリンの衰弱英語版』。英訳: Leahy 1905, HRI, p.58, "each woman who loved Cuscraid Mend, .. stammered in her speech"
  9. ^ 『アルデフの戦い』(?) Best 1915編訳本 The Battle of Airtech
  10. ^ コンホヴァルの話』。Stokes 英訳や O'Curry 訳では盾とみなすが、Kinsella 英訳 The Tain, p.5 では "Cúscraid's triumphant sword Coscrach"として剣に見立てる。
  11. ^ Kinsella 英訳 The Tain, p.226, "a great spear in his hand like a palace-torch"
  12. ^ Stokes 編訳 "On the Deaths of Some Irish heroes" Revue Celtique 23, p. 308(第16詩節)。ルーン (槍)の項目参照

参考文献

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