グラミスチン
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グラミスチン(英: Grammistin)は粘液毒の一種で、ハタ科ヌノサラシ亜科のルリハタや、ヌノサラシなどに見られるペプチド毒素である[1][2]。グラミスチンには溶血作用と魚毒性がある。グラミスチンはハチの毒針にみられるメリチンやウシノシタ類の皮膚にみられるパラダキシンなどの他のペプチド毒素と似た二次構造と生物作用を持つ[3]。類似の毒素はウバウオの仲間からも見つかっている[4]。
グラミスチンは特徴的な苦い味を持ち、魚類の皮膚から分泌される。そしてこの毒を持つ魚類が警戒状態にある時や、ストレスを受けた時には分泌量が増える。このとき、同じ水槽中で飼われている他の魚を殺してしまう程度に毒性は強い。哺乳類もこの毒を多量に取り込むと死にいたる危険があり、その時の症状のいくつかはシガトキシンによるものとも似ている[5]。ニューギニアではグラミスチンを持つヌノサラシを食べた人がその毒により死亡したという報告もある[6]。グラミスチンは哺乳類の血球においても溶血作用を示す。グラミスチンを持つ種がこの毒を放出する目的は、自らの身を守るためだと考えられている。ミノカサゴ属のPterois miles がヌノサラシの仲間を捕食しようとしたところ、すぐに口から吐き出したことが報告されている。これはグラミスチンの味を感知したためだと考えられる[5]。グラミスチンには細胞溶解作用があるため、 毒性だけでなく抗菌作用も示すとされている[1]。
1993年、研究者の大貫らにより構造決定された[7]。
出典
[編集]- ^ a b “UniProtKB - P69836 (GRAG_GRASX)”. Uniprot. 11 September 2020閲覧。
- ^ J. S. Nelson; T. C. Grande; M. V. H. Wilson (2016). Fishes of the World (5th ed.). Wiley. pp. 446-448. ISBN 978-1-118-34233-6
- ^ K Shiomi; T Igarashi; H Yokota; Y Nagashima; M Ishida (2000). “Isolation and structures of grammistins, peptide toxins from the skin secretion of the soapfish Grammistes sexlineatus”. Toxicon 38 (1): 98-113. doi:10.1016/s0041-0101(99)00136-1. PMID 10669014.
- ^ Hori, K.; N. Fusetani; K. Hashimoto; K. Aida; J.E. Randall (1979). “Occurrence of a grammistin-like mucous toxin in the clingfish Diademichthys lineatus”. Toxicon 17 (4): 418-424. doi:10.1016/0041-0101(79)90271-X. PMID 494325.
- ^ a b John E. Randall; Kasumi Aida; Takashi Hibiya; Nobuhiro Mitsuura; Hisao Kamiya & Yoshiri Hishimoto (1971). “Grammistin, the skin toxin of soapfishes, and it significance in the classification of the Grammistidae”. Publications of the Seto Marine Biological Laboratory 19 (2/3): 157-190. doi:10.5134/175661. NAID 120005296221 .
- ^ 吉田朋弘, 岩坪洸樹, 本村浩之「九州初記録のハタ科魚類ヌノサラシGrammistes sexlineatus」 『Nature of Kagoshima』42巻、2016年、135-138頁
- ^ 大貫裕之, 伊藤圭, 松森信明, 橘和夫, 伏谷伸宏「80 ヌノサラシ科魚の脂溶性皮膚毒の化学構造(ポスター発表の部)」『天然有機化合物討論会講演要旨集』第35巻、天然有機化合物討論会実行委員会、1993年、622-629頁、doi:10.24496/tennenyuki.35.0_622、NAID 110006679244。