ダース
ダース (dozen, 打) とは個数の単位で、12個の組を表す。
語源
[編集]英語の dozen /ˈdʌzn/(ダズン)の転訛。
dozen は古フランス語に由来する[1]。現代フランス語では douzaine /duzɛn/(ドゥゼンヌ)で、これは場合によっては正確に十二ではなく「十二くらい」という意味になる。これは本来は基数詞 douze (12) から派生した集合数詞で、「12の同種のものの集まり」という意味である。フランス語の集合数詞の使用は限定的だが、他に huit (8) からの huitaine 、dix (10) からの dizaine 、quinze (15) からの quinzaine 、vingt (20) からの vingtaine などがある。
douze のさらに語源はラテン語の duodecim である。
用法
[編集]日本語
[編集]例えば鉛筆が「12本」という代わりに「1ダース」という。文例としては「鉛筆1ダース(がある)」「1ダースの鉛筆(がある)」「鉛筆が1ダース(ある)」など。これらの「1ダース」は「12本」と同義語であり、「ダース」は助数詞の一種として扱われる。それ故に、(「十」のような数詞と異なり)本来の助数詞「本」を後ろに付けない。
離散的な個数に対してのみ使い、量(誤例:長さが1ダースメートル、30日を「2ダース6日」)や序数(誤例:順位が1ダース)には使わない。
通常は12の倍数にのみ使用され、12の倍数以外では使われない例が多い。例えば、36個を「3ダース」(3012)、60個を「5ダース」(5012)という用法が通例で、45個や100個をわざわざ「3ダースと9個」「8ダースと4個」という用法は稀である。6で割り切れて12で割り切れない数は、6個が「半ダース」、30個が「2ダース半」(2612)、90個が「7ダース半」(7612)というように「Mダース半」というように用いられる。
英語
[編集]英語では a dozen pencils が通例で、a dozen of pencils はまれ[1]。
数詞や some 以外の相当語を伴う場合は単複同形 (two dozen pencils, several dozen pencils) だが、some を伴う場合は複数形をとる (some dozens pencils)[1]。
a dozen や dozens は漠然と「たくさん」を意味することもある[1]。
グロス
[編集]ダースの上の単位で、12ダース(122=144個)をグロス (gross)、12グロス(123=1728個)をグレートグロスや大グロス (great gross)という。他には10ダースすなわち5/6グロス(12×10=144×(5/6)=120個)をスモールグロスや小グロス (small gross) という。なお、漢字表記では、ダースは「打」と表記されるが[2][3]、グロスは「哥」と表記されることがある[4][5][6]。
これらの用法は「ダース」と同じで、離散的な物の個数のみに使用され、量や序数には使用されない。例えば、「画用紙5グロスを、16学級で45枚ずつ配る。」(720枚÷16学級=45枚)や「1ヶ月で6グロス、1年で6大グロス生産する。」(864個×12ヶ月=10368個)というように使用される。人数、金額、角度、西暦年などにはまずもって使用されない。
「グロス」も通常は144の倍数、「大グロス」も通常は1728の倍数に用いられるのが通例で、倍数以外には用いないことが多い。例えば、432個を「3グロス」(30012)、8640個を「5大グロス」(500012)という用法が通例で、270個を「1グロス10ダース6個」(1A612)、2010個を「1大グロス1グロス11ダース6個」(11B612)という用法は稀である。144で割り切れて1728で割り切れない数は、2016個が「14グロス」(120012)、2592個が「18グロス」(160012)というように、「M大グロスMグロス」ではなく「Mグロス」というように用いられる例もある。
パン屋の1ダース
[編集]英語で、パン屋の1ダース (Baker's dozen) は13を表す。
悪魔の1ダース
[編集]ロシア語圏で、悪魔の1ダース (devil's dozen) は、13を表す[7]。これは悪魔を召喚する際に13人の魔女が集まるという迷信に由来しており[8]、そのため、魔女の1ダース (witch's dozen) と呼ばれることもある。
脚注
[編集]- ^ a b c d 『リーダーズ英和辞典』「dozen」
- ^ フランセス・ホッヂソン・バァネット 著、菊池寛 訳『小學生全集第五十二卷 小公女』興文社、1927年12月10日、197頁。
- ^ コナン・ドイル 著、三上於莵吉 訳『世界探偵小説全集 第四卷 シヤーロツク・ホームズの歸還』平凡社、1929年10月5日、241頁。
- ^ 粟津清達 編『最新外来語辞典』先進堂書店、1930年5月11日、69頁。NDLJP:1110226。
- ^ 外務省通商局 編『日刊海外商報 臨時増刊』114号、中屋印刷所、1925年4月29日、45頁。NDLJP:1574935。
- ^ 外務省通商局 編『日刊海外商報』419号、中屋印刷所、1926年3月11日、1570頁。NDLJP:1575234。
- ^ “Fear of number 13 develops triskaidekaphobia and ridiculous sarcasm”. Pravda.ru. 2011年2月25日閲覧。
- ^ “baker's dozen”. Theidioms.com. 2020年1月29日閲覧。