ゲルハルト・リヒター
ゲルハルト・リヒター | |
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ゲルハルト・リヒター、 2017 年 | |
生誕 |
1932年2月9日(92歳) ドイツ国 ザクセン自由州 ドレスデン |
国籍 | ドイツ |
教育 | ドレスデン美術大学、デュッセルドルフ美術アカデミー |
著名な実績 | 絵画、写真 |
公式サイト |
www |
ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter, 1932年2月9日 - )は、ドイツの抽象画家。現在、世界で最も注目を浴びる重要な芸術家のひとりであり、若者にも人気があり、「ドイツ最高峰の画家」と呼ばれている。
略歴
[編集]ドレスデンに生まれる。地元の芸術アカデミーで1951年から1956年まで絵画を学ぶが、東ドイツの共産主義体制に制約を感じ、ベルリンの壁によって東西ドイツの行き来が禁止される寸前の1961年、西ドイツのデュッセルドルフに移住[1]。デュッセルドルフ芸術大学に入学。独自の作風を展開していく。1971年からデュッセルドルフ芸術大学教授を15年以上にわたり務めた。
2012年、競売大手サザビーズがロンドンで行った競売で、エリック・クラプトンが所有していたリヒターの抽象画『アプストラクテス・ビルト(809-4)』が約2132万ポンド(約26億9000万円)で落札された。生存する画家の作品としては当時史上最高額。
2014年、第二次世界大戦中の1944年8月にアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で囚人が隠し撮りしたとされるホロコーストの写真を元に描かれた4点の抽象画「ビルケナウ」シリーズを制作し、ベルリンのナショナル・ギャラリーに永久貸与された[2]。
2022年、生誕90周年、画業60周年を迎え、東京では初となる美術館での個展が東京国立近代美術館にて開催された[3][4]。
作風
[編集]初期の頃から製作されているフォト・ペインティングは、新聞や雑誌の写真を大きくカンバスに描き写し、画面全体をぼかした手法である。モザイクのように多くの色を並べた「カラー・チャート」、カンバス全体を灰色の絵具で塗りこめた「グレイ・ペインティング」、様々な色を折りこまれた「アブストラクト・ペインティング」、幾枚ものガラスを用いて周囲の風景の映り込む作品など、多様な表現に取り組んでいる。
これらの基礎資料であるかのような五千枚以上のドローイングや写真からなる数百を越えるパネルからなる作品として『アトラス』がある。これはアビ・ヴァールブルクの『ムネモシュネ・アトラス』の影響を受けた物である。初期の作品は主として油彩であったが、近年ではエナメルや印刷技術を用いたものが多くなっている。
日本で展示されている作品
[編集]日本には瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ無人島の豊島(とよしま=愛媛県上島町)「ゲルハルト・リヒター 14枚のガラス/豊島」が展示されている。この作品は、190センチ×180センチの透明な14枚のガラス板が、連続してハの字を描くように少しずつ角度を変えて並ぶ作品。全長約8メートルで、リヒターによるガラスの立体作品としては現時点で最大のもの。
また、高知県立美術館に「ステイション」が所蔵されている。
ギャラリー
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リヒターとゴットフリート・ヘルンヴァインによる「48 Portraits」1991-92年と「Undeniable me」1971-72年
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デュイスブルク・シュタットバーン(デュイスブルク停留所)のリヒターと彫刻家の元妻イザ・ゲンツケンによる壁画(1980-92)
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リヒターが制作したケルン大聖堂のステンドグラス
脚注
[編集]- ^ “ゲルハルト・リヒター展 「ビルケナウ」が語るもの”. 産経ニュース (2022年9月13日). 2022年9月13日閲覧。
- ^ “ホロコーストを描くことは可能か?――ドイツ人画家、ゲルハルト・リヒターが自作をベルリンのナショナルギャラリーに永久貸与した理由”. Relations Tokyo (2021年4月23日). 2022年9月12日閲覧。
- ^ 東京国立近代美術館にて生誕90周年、画業60周年記念「ゲルハルト・リヒター展」6月7日開催。東京国立近代美術館 広報 (momat.pr) - Facebook参照
- ^ “リヒターと「戦争」。ゲルハルト・リヒターを知るうえで避けて通れない3つのキーワード”. Tokyo Art beat (2022年5月10日). 2022年9月12日閲覧。
参考文献
[編集]- ゲルハルト・リヒター 『ゲルハルト・リヒター写真論/絵画論』清水穣訳(淡交社、1996年 増訂版2005年)ISBN 4473032558
- 展覧会図録 『ゲルハルト・リヒター』(淡交社、2005年)、金沢21世紀美術館/川村記念美術館監修
評伝・論集
[編集]- ディートマー・エルガー『評伝 ゲルハルト・リヒター』清水穣訳、美術出版社、2017年
- 『ユリイカ 詩と批評 特集 ゲルハルト・リヒター 生誕90年記念特集』2022年6月号、青土社
- 画集・論集『ゲルハルト・リヒター』(青幻舎、2022年)桝田倫広・鈴木俊晴監修
- 林寿美『ゲルハルト・リヒター 絵画の未来へ』水声社、2022年 ISBN 4801006477、上記の企画者
関連項目
[編集]- ある画家の数奇な運命
- ケルン大聖堂
- レンバッハハウス美術館
- ウルフ賞芸術部門
- 資本主義リアリズム
- ジグマー・ポルケ
- コンラート・フィッシャー
- ゲオルグ・バゼリッツ
- アンゼルム・キーファー
- 「デイドリーム・ネイション」ソニック・ユースのアルバム
- スーパーリアリズム (リヒターのフォトペインテングに似た手法)
- ハインリッヒ・ユーフィンガー婦人科医、最初の妻のエマ(マリアンヌ)の父
- ザビーネ・モリッツ・リヒター現在の妻(画家)