コケコゴメグサ
コケコゴメグサ | ||||||||||||||||||||||||
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Euphrasia kisoalpina Hid.Takah. et Ohba[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
コケコゴメグサ |
コケコゴメグサ(苔小米草、学名: Euphrasia kisoalpina Hid.Takah. et Ohba[1])は、ハマウツボ科コゴメグサ属に分類される一年草の高山植物の1種[2][3][4][5][6]。半寄生植物といわれる[5]。従来の新エングラー体系、クロンキスト体系では、ゴマノハグサ科に分類されていた[1][2]。高橋秀男が昭和53年に新種として発表した[5][7]。
特徴
[編集]草丈は高さ2-6 cmと非常に小さい[2]。茎には下向きの屈毛とやや開出する腺毛がある[2]。茎は分枝しない個体が多い[7]。葉は長さ3-5 mm、幅2.5-4.5 mmの広倒卵形で両面に細毛と腺毛がある[2]。葉の牙歯は1対(まれに2対)[8]。苞はやや多肉質で、密集して多数が重なるようにつく[8]。花冠は白色で紫色のすじがあり[2]、長さ3.5-5.5 mm、花柱はやや太く、長さ約4 mm、花柱は少し肥大し、先は著しく湾曲して花冠外につきでない[8]。下唇の中裂片に黄色の斑がある[2]。花柱の上半分は下向きに[3]湾曲する[2]。葯の長さは0.8-1 mm、花糸は短花糸で1.5-1.7 mm、長花糸で2.2-2.5 mm[8]。萼は鐘形で長さ4 mm[3]、2深裂し、裂片は浅裂する[2]。花期は7月下旬-8月中旬[5]。
分布と生育環境
[編集]日本の固有種[2][4]。本州の木曽山脈[9][6](将棊頭山、濃ヶ池付近、伊那前岳、木曽駒ヶ岳、中岳、極楽平、檜尾岳、空木岳など)に分布する[10]個体数は少ないが、木曽山脈の主要部の全域にわたっている[10]。基準標本は木曽駒ヶ岳のもの[2][4]。ヒメウスユキソウ(コマウスユキソウ)と共に木曽山脈の固有種[11]。
高山帯の風当たりの強い乾いた草地や岩場[4]に生育する[2][10]。ヒメウスユキソウが生育する砂礫地などで見られる[6]。
コバノコゴメグサとの識別ポイント
[編集]同属で同じミヤマコゴメグサ群のコバノコゴメグサ[12]との識別ポイントを下表に示す。茎や萼に腺毛があり、萼は上下に深裂し、裂片はさらに浅く裂け、先は尖らない共通の特長がある近縁種で[12]、本種が花柱の上半分が湾曲するのに対して、コバノコゴメグサは花柱がまっすぐ[12]。
和名 学名 |
画像 | 識別のポイント |
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コケコゴメグサ E. kisoalpina |
高さ2-6 cm 花柱の上半分は湾曲する[12] 分布域:本州(木曽山脈)[6] 7月下旬-8月中旬[5] | |
コバノコゴメグサ E. insignis subsp. insignis |
高さ3-15 cm 花柱はまっすぐ[12] 分布域:本州(那須山地、日光山、秩父山地、八ヶ岳、赤石山脈など)[2]の主に太平洋側[13] 開花時期:8-9月[2] |
本種とコバノコゴメグサとの外部形態の比較を下表に示す[8]。
項目 | コケコゴメグサ E. kisoalpina |
コバノコゴメグサ E. insignis subsp. insignis | |
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花冠の長さ | 3.5-5.5 mm | 8-11 mm | |
雄ずい | 葯長 | 0.8-1.0 mm | 1.5-1.7 mm |
短花糸 | 1.5-1.7 mm | 2.5-2.7 mm | |
長花糸 | 2.2-2.5 mm | 約4.5 mm | |
花柱 | 長さ | 約4 mm | 6-9 mm |
形状 | 先は緩やに湾曲して 花冠外へつきでない |
先は著しく湾曲して 花冠外へつきでる | |
葉 | 長さ | 3-5 mm | 4-8 mm |
幅 | 2.5-4.5 mm | 3-6 mm | |
牙歯の数 | 1対(まれに2対) | 2-3対 | |
茎 | 高さ | 3-6 cm | 3-18 cm |
分枝 | 単純 まれに分枝する |
多くは分枝する 時に単純 |
種の保全状況評価
[編集]分布する個体数は少ない[5]。 環境省によるレッドリストの絶滅危惧II類(VU)の指定を受けていて[14]、分布域の長野県では絶滅危惧IB類の指定を受けている[15]。
絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
脚注
[編集]- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “コケコゴメグサ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 豊国 (1988)、177頁
- ^ a b c 小野 (1987)、25頁
- ^ a b c d 清水 (2014)、319頁
- ^ a b c d e f 林 (2002)、26頁
- ^ a b c d 久保田 (2007)、74頁
- ^ a b 高橋 (1982)、120頁
- ^ a b c d e 高橋 (1982)、121頁
- ^ 林 (2002)、76頁
- ^ a b c 高橋 (1982)、122頁
- ^ “中央アルプスの魅力再発見”. 駒ヶ根市. 2021年10月7日閲覧。
- ^ a b c d e 豊国 (1988)、178頁
- ^ 高橋 (1993)、44頁
- ^ a b “環境省レッドリスト2019の公表について”. 環境省. 2021年10月7日閲覧。
- ^ “「長野県版レッドリスト(植物編)2014」”. 長野県 (2020年11月30日). 2021年10月7日閲覧。
参考文献
[編集]- 小野幹雄、林弥栄『原色高山植物大図鑑』北隆館、1987年3月30日。ISBN 4832600079。
- 久保田修『高山の花―イラストでちがいがわかる名前がわかる』学習研究社、2007年6月。ISBN 978-4054029033。
- 清水建美、門田裕一、木原浩『高山に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑8〉、2014年3月22日。ISBN 978-4635070300。
- 高橋秀男「木曽山脈産コゴメグサ属の1新種」『植物研究雑誌』第57巻第4号、津村研究所、1982年4月、120-124頁、NAID 40001849741。
- 高橋秀男「長野県産ゴマノハグサ科・コゴメグサ属とゴマノハグサ属の検討」『神奈川県立博物館研究報告 自然科学』第22巻、神奈川県立博物館、1993年1月、43-52頁、NAID 40000509062。
- 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1。
- 林芳一『中央アルプス駒ヶ岳の高山植物』ほおずき書籍、2002年8月31日。ISBN 978-4434022678。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- コケコゴメグサの標本 国立科学博物館標本・資料統合データベース
- Euphrasia kisoalpina Hid.Takah. & Ohba (The Plant List)