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コケコゴメグサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コケコゴメグサ
コケコゴメグサ、木曽山脈の木曽駒ヶ岳、長野県木曽郡木曽町にて、2016年8月10日撮影
コケコゴメグサ、2016年8月
木曽駒ヶ岳長野県木曽郡にて
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: シソ目 Lamiales
: ハマウツボ科 Orobanchaceae
: コゴメグサ属 Euphrasia
: コケコゴメグサ
E. kisoalpina
学名
Euphrasia kisoalpina Hid.Takah. et Ohba[1]
和名
コケコゴメグサ

コケコゴメグサ(苔小米草、学名Euphrasia kisoalpina Hid.Takah. et Ohba[1])は、ハマウツボ科コゴメグサ属分類される一年草高山植物の1[2][3][4][5][6]半寄生植物といわれる[5]。従来の新エングラー体系クロンキスト体系では、ゴマノハグサ科に分類されていた[1][2]高橋秀男昭和53年に新種として発表した[5][7]

特徴

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草丈は高さ2-6 cmと非常に小さい[2]には下向きの屈毛とやや開出する腺毛がある[2]。茎は分枝しない個体が多い[7]は長さ3-5 mm、幅2.5-4.5 mmの広倒卵形で両面に細毛と腺毛がある[2]。葉の牙歯は1対(まれに2対)[8]はやや多肉質で、密集して多数が重なるようにつく[8]花冠は白色で紫色のすじがあり[2]、長さ3.5-5.5 mm、花柱はやや太く、長さ約4 mm、花柱は少し肥大し、先は著しく湾曲して花冠外につきでない[8]。下唇の中裂片に黄色の斑がある[2]花柱の上半分は下向きに[3]湾曲する[2]の長さは0.8-1 mm、花糸は短花糸で1.5-1.7 mm、長花糸で2.2-2.5 mm[8]は鐘形で長さ4 mm[3]、2深裂し、裂片は浅裂する[2]。花期は7月下旬-8月中旬[5]

分布と生育環境

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高山帯の風当たりの強い乾いた草地に生育するコケコゴメグサ、コメバツガザクラと混生

日本固有種[2][4]本州木曽山脈[9][6]将棊頭山、濃ヶ池付近、伊那前岳、木曽駒ヶ岳、中岳、極楽平、檜尾岳空木岳など)に分布する[10]個体数は少ないが、木曽山脈の主要部の全域にわたっている[10]基準標本は木曽駒ヶ岳のもの[2][4]ヒメウスユキソウ(コマウスユキソウ)と共に木曽山脈の固有種[11]

高山帯の風当たりの強い乾いた草地や岩場[4]に生育する[2][10]。ヒメウスユキソウが生育する砂礫地などで見られる[6]

コバノコゴメグサとの識別ポイント

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で同じミヤマコゴメグサ群のコバノコゴメグサ[12]との識別ポイントを下表に示す。茎や萼に腺毛があり、萼は上下に深裂し、裂片はさらに浅く裂け、先は尖らない共通の特長がある近縁種で[12]、本種が花柱の上半分が湾曲するのに対して、コバノコゴメグサは花柱がまっすぐ[12]

和名
学名
画像 識別のポイント
コケコゴメグサ
E. kisoalpina
コケコゴメグサ、木曽山脈の木曽駒ヶ岳、長野県木曽郡木曽町にて、2016年8月10日撮影 高さ2-6 cm
花柱の上半分は湾曲する[12]
分布域:本州(木曽山脈)[6]
7月下旬-8月中旬[5]
コバノコゴメグサ
E. insignis subsp. insignis
コバノコゴメグサ、赤石山脈、長野県飯田市にて、2014年7月25日撮影 高さ3-15 cm
花柱はまっすぐ[12]
分布域:本州(那須山地日光山秩父山地八ヶ岳赤石山脈など)[2]の主に太平洋側[13]
開花時期:8-9月[2]

本種とコバノコゴメグサとの外部形態の比較を下表に示す[8]

項目 コケコゴメグサ
E. kisoalpina
コバノコゴメグサ
E. insignis subsp. insignis
花冠の長さ 3.5-5.5 mm 8-11 mm
雄ずい 葯長 0.8-1.0 mm 1.5-1.7 mm
短花糸 1.5-1.7 mm 2.5-2.7 mm
長花糸 2.2-2.5 mm 約4.5 mm
花柱 長さ 約4 mm 6-9 mm
形状 先は緩やに湾曲して
花冠外へつきでない
先は著しく湾曲して
花冠外へつきでる
長さ 3-5 mm 4-8 mm
2.5-4.5 mm 3-6 mm
牙歯の数 1対(まれに2対) 2-3対
高さ 3-6 cm 3-18 cm
分枝 単純
まれに分枝する
多くは分枝する
時に単純

種の保全状況評価

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分布する個体数は少ない[5]環境省によるレッドリストの絶滅危惧II類(VU)の指定を受けていて[14]、分布域の長野県では絶滅危惧IB類の指定を受けている[15]

絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト

[14]

脚注

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  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “コケコゴメグサ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月7日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 豊国 (1988)、177頁
  3. ^ a b c 小野 (1987)、25頁
  4. ^ a b c d 清水 (2014)、319頁
  5. ^ a b c d e f 林 (2002)、26頁
  6. ^ a b c d 久保田 (2007)、74頁
  7. ^ a b 高橋 (1982)、120頁
  8. ^ a b c d e 高橋 (1982)、121頁
  9. ^ 林 (2002)、76頁
  10. ^ a b c 高橋 (1982)、122頁
  11. ^ 中央アルプスの魅力再発見”. 駒ヶ根市. 2021年10月7日閲覧。
  12. ^ a b c d e 豊国 (1988)、178頁
  13. ^ 高橋 (1993)、44頁
  14. ^ a b 環境省レッドリスト2019の公表について”. 環境省. 2021年10月7日閲覧。
  15. ^ 「長野県版レッドリスト(植物編)2014」”. 長野県 (2020年11月30日). 2021年10月7日閲覧。

参考文献

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  • 小野幹雄林弥栄『原色高山植物大図鑑』北隆館、1987年3月30日。ISBN 4832600079 
  • 久保田修『高山の花―イラストでちがいがわかる名前がわかる』学習研究社、2007年6月。ISBN 978-4054029033 
  • 清水建美門田裕一、木原浩『高山に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑8〉、2014年3月22日。ISBN 978-4635070300 
  • 高橋秀男「木曽山脈産コゴメグサ属の1新種」『植物研究雑誌』第57巻第4号、津村研究所、1982年4月、120-124頁、NAID 40001849741 
  • 高橋秀男「長野県産ゴマノハグサ科・コゴメグサ属とゴマノハグサ属の検討」『神奈川県立博物館研究報告 自然科学』第22巻、神奈川県立博物館、1993年1月、43-52頁、NAID 40000509062 
  • 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1 
  • 林芳一『中央アルプス駒ヶ岳の高山植物』ほおずき書籍、2002年8月31日。ISBN 978-4434022678 

関連項目

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外部リンク

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