コピヨー (レーダー)
コピヨー(ロシア語: Копье)はロシア連邦のファゾトロン-NIIRが開発した小型のパルス・ドップラー・レーダーおよびパッシブ・フェーズドアレイ・レーダーである。コピヨーはロシア語で槍を意味する。型式はFK-04。
概要
[編集]コピヨーはフォゾトロンがプライベートベンチャーで開発した最初のレーダーである。ファゾトロンはジュークレーダー用に開発された技術を元にMiG-21のような旧式の航空機のアップグレードや練習機・軽攻撃機に搭載するレーダーとしてコピヨーを開発した[1]。
コピヨーは、Xバンド帯域で16の異なる周波数で動作する。アンテナは直径が500mm、FB比29デシベルのスロットアレイで、雑音指数4デシベルの受信機を2つ装備し出力は最大5kW、平均1kWである。処理にはMPSデータプロセッサおよびTS175デジタルコンピュータを用いる[2]。
レーダー方式は、コヒーレント・パルス・ドップラー・レーダーと呼ばれる方式である。目標の最適な検出および追跡のためにパルス繰り返し周波数(PRF)は、高・中・低の3つに分かれており、高PRFモードはルックダウンおよび高クラッター環境での捜索、低PRFモードはルックダウンでの測距および全周捜索に使用される。グランドマッピングモードとしては低解像度のリアルビーム、中解像度のドップラービームシャープニング(精度10:1)、高解像度の合成開口(精度100:1)の3種類が用意される。そのほか、地上移動目標識別・追尾(GMTI/GMTT)や海上目標追尾などのモードを有する[1]。
探知能力は、レーダー反射断面積が3m2の相手に対して45km、ヘッドオンで57km、追尾時に25-30kmで、捜索中追尾(TWS)モード時に10目標を探知して2目標を追尾できる。マッピング時の分解能は低解像度時かつ80kmの距離からで300x300m、中解像度かつ60kmの距離からで30x30m、高解像度時かつ60kmの距離からで10x5mである[1]。
ミサイル(R-27、R-73、R-77、Kh-31Aを含む)や航空機関砲、ロケット弾、爆弾の管制が可能である[1][3]。
派生型
[編集]- コピヨー21I
- MiG-21-93に搭載されたタイプ[2]。
- コマール
- Su-22向けにアジマス方向へのスキャン範囲を±60度としたモデル。FC-1に重量105kgのものが提案された[4]。
- コピヨー25(N027)
- Su-39向けでポッド内に収められている。
- コピヨー29
- インド空軍が運用するMiG-29の迅速かつ安価なアップグレードのための提案されたモデル[2]。
- コピヨーM
- 再プログラム可能なTS501FデータプロセッサーとTS181Fデジタルコンピュータの採用により大幅に近代化したモデル。
- 重量は90kg、体積は230dm3に減少し、平均故障間隔は200時間に増加した。データ処理能力の向上で探知距離は75km、追尾距離は56kmとなった。合成開口モードの解像度も3x3mに改善されている。そのほか、レイドアセスメント、新しい広角近接戦闘モードが新たに追加された[2]。Yak-130にオサとの選択式で搭載可能[5]。
- コピヨー25M
- コピヨーMをSu-25SM/UBM向けにコピヨー25と同様のアプローチでポッド内に装備したもの。探知距離が20%増加し、地上の監視機能が強化されている[6]。
- コピヨーShch
- 2005年に公開されたコピヨーMのYak-130向け改良型で空中目標を80km、複数の地上目標に関して25km、小さなスタンドアローンの海上目標に関して150kmである[7]。
- コピヨーF(ファラオン)
- アンテナを雑音指数28デシベルのパッシブ・フェーズドアレイ・アンテナ(PESA)にしたモデル。MiG-21MF、MiG-21bis、Su-22、Su-25、Yak-130、MiG-ATに装備するために開発された[8]。
- PESAアンテナには従来の線状型でなく非等間隔型を採用して1/5にコストを抑えている。PESA化により電子妨害に対する耐性が向上し、低被探知の動作モードも追加された。進行波管(TWT)型の送信機は、搭載航空機に応じて1,000W、400W、150Wより選択可能である。
- Su-34やSu-35/37、Su-33UBなどの尾部に搭載する後方探知レーダーとしても提案が行われていた[2][9]。
- ファラオン-M
- ファラオンの改良型で最新のデジタル技術やソリッドステート化で重量を45kgまで減少させている[2][9]。
仕様
[編集]コピヨー | コピヨー21I | コピヨー25 | コピヨーM | コピヨーF | |
---|---|---|---|---|---|
周波数 | Xバンド | ||||
アンテナ形式 | スロットアンテナ | PESA | |||
平均送信出力 | 1kW | 0.3kW | |||
5kW | 3kW | ||||
方位角 | ±40 | ±60 | ±70 | ||
仰俯角 | ±40 | +60...-40 | ±70 | ||
探知距離[注釈 1] | 57km[注釈 2] | 57km[注釈 3] | 70km[注釈 4] | 80km[注釈 3] | 75km(ルックアップ) 30km(ルックダウン) |
探知距離[注釈 5] | 20-30km[注釈 2] | 30km(ルックアップ) 25km(ルックダウン) |
35km[注釈 4] | 40km[注釈 3] | 30km(ルックアップ) 20km(ルックダウン) |
装甲車・戦車に対する探知距離 | 20km(移動車列) | 20km | 25-30km(車列) | 25km | 20km(移動中) |
鉄道橋に対する探知距離 | 100km | 80km | 100km | 80km | |
艦船に関する探知距離 | 80km(ミサイル艇) 200km(駆逐艦) |
100km(モーターボート) 200km(駆逐艦) |
75km(RCS 300m2) | 80km(モーターボート) 150km(駆逐艦) |
100km(ミサイル艇) 200km(駆逐艦) |
探知数 | 10 | 8 | 10 | 20 | |
追尾数 | 2 | 4 | |||
重量 | 120kg | 100kg | 85kg | 90kg | 75kg |
体積 | 250dm3 | 230dm3 | 165dm3 | ||
アンテナ直径 | 500mm | 440mm | |||
平均故障間隔 | 120時間 | 200時間 |
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e Kopyo Radar
- ^ a b c d e f g Overscan's guide to Russian Military Avionics
- ^ KOPYO AIRBORNE RADAR
- ^ Bidders line up for FC-1 Super 7 avionics
- ^ «HOW THE YAK WON THE BATTLE OF THE RUSSIAN TRAINER»
- ^ Russia is set to test upgraded Su-25SM
- ^ take-off december 2005 P.19
- ^ FARAON AIRBORNE PHASED-ARRAY RADAR
- ^ a b Agat and Phazotron work on new and upgraded radars
- ^ Rosoboronexport Air Force Department and Media & PR Service, AEROSPACE SYSTEMS export catalogue, Rosoboronexport State Corporation, p. 101-102
関連項目
[編集]- オサ - 本レーダーに対抗するためV・V・チホーノフ記念機器製作所が開発した同級機
- AN/APG-67 - ゼネラル・エレクトリック社の同級機
- AN/APG-69 - エマソン・エレクトリック社の同級機
- ブルーホーク - フェランティ社の同級機
- EL/M-2032 - エルタ・システムズ社の同級機