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コミミイヌ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コミミイヌ属から転送)
コミミイヌ
保全状況評価[1]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
: イヌ科 Canidae
亜科 : イヌ亜科 Caninae
: コミミイヌ属 Atelocynus
Cabrera, 1940
: コミミイヌ A. microtis
学名
Atelocynus microtis
P.L.Sclater1883
英名
Short-eared dog[2]
分布

コミミイヌ (Atelocynus microtis) はイヌ科の哺乳類の1種。アマゾン川流域固有種である[2][1]コミミイヌ属 Atelocynus単型である[2]

名称

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英語では”short-eared fox”・”short-eared zorro”・”small-eared dog”[1]、ポルトガル語で”cachorro-do-mato-de-orelha-curta”、スペイン語で”zorro de oreja corta”・”zorro ojizarco”・”zorro sabanero”・”zorro negro”、チキタノ語で”nomensarixi”、ユクナ語で”uálaca”などの呼び方がある[3]

分類

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他の南米の地上性有胎盤類と同じように、パナマ地峡が形成された鮮新世の後に、アメリカ大陸間大交差によって南米に進出したと考えられる。その後、熱帯雨林に適応したことで、独特な形態的特徴を得たとされる。ヤブイヌとは類似点が多いが、他のイヌ科動物とは似た点が少ない[4]。現生種で最も近縁なのはカニクイイヌだと考えられている[5]染色体数は2n=74で、1対の性染色体を含む[3]

分布

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アマゾン熱帯雨林 (ペルーボリビアブラジルコロンビアエクアドルベネズエラ) に分布する[2]セルバテラフィルメ林沼沢林竹林雲霧林など様々な森林環境で見られる[1]

形態

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四肢は細くて短い。ふさふさした尾を持つ。雌は雄より1/3程度大きい[3]。体毛は滑らかで分厚く、足には水かきがあり、部分的に水生であることを示唆していると考えられる[6]。肩高25–30 cm、頭胴長100 cm、尾長30–35 cmになる。体重は9–10 kg[7]。耳は短く丸い。耳介の長さは34–56 mmと小さく、アレンの法則に該当しない部分もある一方、尾は小さくない[8]

頭部は細長く、吻はキツネに似る。上顎の犬歯は非常に長く、口を閉じていても確認することができる。歯式は他のイヌ科と同じで、42本の歯を持つ[3]

体色は暗灰色から灰赤色だが、濃紺・焦茶・黒などになることもあり、年齢・分布域・換毛などにより変化すると考えられている。背の正中線上は黒い。腹面は赤色がかる。腰から尾の付け根の腹面には、斑に明るい色の毛が生える[6]

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主に肉食で、魚・昆虫・小型哺乳類などを食べる。ペルーコチャ・カシュ生物学研究拠点英語版での調査では、魚28%、昆虫17%、小型哺乳類13%、果物10%、鳥10%、カニ10%、カエル4%、爬虫類3%という構成だった[9]

生態

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非常に稀な種であり、詳細な生態は不明である[1]

猫のように忍び足で歩く。多くのイヌ科動物が比較的開けた場所に住むのに対し、コミミイヌは密林に住んでおり、獲物に忍び寄る習性があると推測されている[8]。主に森林で単独生活し、人を避ける。雄は興奮すると、臭腺から麝香様の匂いを出す[7]

寿命や妊娠期間は不明だが、1歳ほどで性成熟すると推定されている[7]

保全状況

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ペルーのマヌー国立公園。生息地の一つ。

ジャガーピューマオセロットマーゲイオオカワウソ等と餌の面で、ヤブイヌとは縄張りの面で競合する。

個体数は15000以下と推定される[10]野犬は顕著な脅威となっており、犬ジステンパー狂犬病が野生個体群に拡散する原因となっている。熱帯林の破壊による影響も受けていると考えられる。IUCN保全状況準絶滅危惧としている[1]

脚注

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  1. ^ a b c d e f Leite-Pitman, M.R.P. & Williams, R.S.R. (2011). "Atelocynus microtis". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2014.1. International Union for Conservation of Nature. 2014年6月17日閲覧
  2. ^ a b c d Wozencraft, W.C. (2005). "Order Carnivora". In Wilson, D.E.; Reeder, D.M (eds.). Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.). Johns Hopkins University Press. pp. 532–628. ISBN 978-0-8018-8221-0. OCLC 62265494
  3. ^ a b c d Atelocynus microtis in canids.org
  4. ^ R. Burton; International Wildlife Encyclopedia, 2002
  5. ^ Pietrzak, 2007
  6. ^ a b ADW: Atelocynus microtis: Information
  7. ^ a b c ECOLOGY AND CONSERVATION OF THE SHORT-EARED DOG (Atelocynus microtis) AT COCHA CASHU BIOLOGICAL STATION, PERU
  8. ^ a b 今泉忠明著、『野生イヌの百科』データハウス社刊行、1993年、130-131頁
  9. ^ Lioncrusher's Domain - Small Eared Zorro (Atelocynus microtis) facts and pictures
  10. ^ IUCN/SSC Canid Specialist Group: Small Eared Zorro

参考文献

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  • M.R.P Leite Pitman and R.S.R. Williams. Short-eared dog;Atelocynus microtis (Sclater, 1883).C-S. Zubiri, M. Hoffmann and D. W. Macdonald. Canids: Foxes, Wolves, Jackals and Dogs - 2004 Status Survey and Conservation Action Plan. IUCN Publications Services Unit, 219c Huntingdon Road, Cambridge CB3 0DL, United Kingdom, 2004.
  • Alderton, David. Foxes, Wolves and Wild Dogs of the World. Blandford Press: United Kingdom, 1998.
  • Nowak, Ronald. Walker's Carnivores of the World. The Johns Hopkins University Press: Baltimore, 2005.

外部リンク

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