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コンピュータの数値表現

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

本稿、コンピュータの数値表現(コンピュータのすうちひょうげん)では、コンピュータにおけるデジタル方式による数値の表現方法について解説する。

概要

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コンピュータにおける数値表現、もう少し具体的に言うと、コンピュータCPU内部のレジスタ演算装置での数値の表現や、プログラミング言語での数値の表現や、OSでの数値の表現について解説する。

そもそもCPU内部のレジスタや演算器においては、数値は、たかだか 8ビット〜128ビット程度の[注釈 1]、限られた個数の、固定長のビット列で表わされている。そうした物理的な制約下で表現されたものであるので、コンピュータで扱われる「数値」というのは、数学で扱う(純粋に、概念的な)「数」とはしばしば、性質が異なっているもの、しばしば「別もの」の性質を示す、と考えたほうがよい。[注釈 2][注釈 3]

データ単位

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コンピュータにおける数値表現は、以下に説明するビットを最小単位として、ビット列によってなされる。ビットは2通りの状態を持ち、ビット列は2の冪乗通りの状態を持つ。二進整数に対応づけられる。ただし、それをどのように扱うかはCPUの設計方法にもより、たとえば8ビットの0000000〜1111111を十進数の「0〜255」として扱うCPU設計法があり、それが一般的ではあるが、同じ8ビットを「-128〜0〜127」として扱う設計法もある。

ビット

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ビット: bit)の実体は、現代的なコンピュータでは電子的な切り替えスイッチであり、電圧のLow / Highである[注釈 4]。一つの電気的なスイッチの状態を抽象概念化したものがビットであるといえる。

2つの状態「0または1」「Off または On」「no または yes 」などと解釈できる。単一のビットは下表の2種類の状態のどちらかを必ず表す。コンピュータの論理回路である電子回路では、電位の高い (High) 低い (Low) を使うことも多いから、HとLという表現が使われることも多い。この対応は逆でもよく、その場合を負論理という。[注釈 5]

1ビットの状態と数の対応
ビットの状態 対応する数
L 0
H 1

単一のビットでは2種類の値しか表せないが、2ビット、3ビットとビットを増やすことで倍々に組合せの数を増やせる(2ビットで4通り、3ビットで8通り)。

2ビットの状態と数の対応
ビットの状態 二進表示 対応する数
LL 00 0
LH 01 1
HL 10 2
HH 11 3

一般に b 個のビットが取れる状態の個数 NN = 2b である。

ビット数とビット列の状態の個数の対応(8ビットまで)
ビット数 b ビット列の状態の個数 N
1 2
2 4
3 8
4 16
5 32
6 64
7 128
8 256

バイト

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バイト: byte)はコンピュータ上で1つの文字を表す単位で、その長さは文字コード表の大きさに依存するが、典型的には8ビットのビット列を指す。コンピュータ上で計算処理を行う際のデータ単位としてワードがある。1ワードに相当するビット列の長さはコンピュータ・アーキテクチャに依存して、バイトの倍数で表せる長さが選ばれる。1バイトが8ビットのコンピュータであれば、1ワードは従って8の倍数(特に2の冪)個のビットに相当する。


オクテット・ニブル

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オクテット: octet)は8個のビットからなるデータ単位である。多くのコンピュータにおいて1バイトは8ビットであり、従ってバイトとオクテットは同義語となる。 しかしコンピュータネットワークの分野ではアーキテクチャに依存しないデータ単位が必要となるため、オクテットのような単位が主に使われ、(特定のアーキテクチャでは同義語であっても)バイトとは区別される。

ニブル: nibble)は4個のビットからなるデータ単位である。従って、オクテットの半分がニブルであり、1オクテットは2ニブルである。ニブルは16通りの状態を表わせる。0 から 15 の整数との対応例を表に示す。

1ニブルの二進数表示と対応する数
ニブルの二進表現 対応する数 ニブルの二進表現 対応する数
0000 0 1000 8
0001 1 1001 9
0010 2 1010 10
0011 3 1011 11
0100 4 1100 12
0101 5 1101 13
0110 6 1110 14
0111 7 1111 15

なぜ二進法なのか?

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  • 3値以上の値を識別するハードウェアは2値のハードウェアよりも複雑になる。
  • 二進法は十進法よりもかなり効率がよい。初期のコンピュータは十進(二進化十進表現)を使っているものも多かった。しかし、電気回路のオンオフをそのまま利用できる二進法のほうが圧倒的に効率が良い。近年では、10ビット(二進法では 0〜1023 の1024通りが表現可能)を使って 0〜999 の1000通りを表現する、効率の良い Densely packed decimal といったものも考案されている。なお、初期のコンピュータ、特にリレー式の場合、入出力機器と比べ本体がたいして速くないため、入出力を十進でおこなうのであれば、二進←→十進の変換はそれなりに計算量が必要なので、むしろそのまま十進で扱ってしまったほうが効率が良いという場合もあった。なお「二進に比べて回路量が増え、信頼性が低くなるためである」といった説明が一般的だが、回路の冗長さを利用してエラーを検出する手法を併用し信頼性を上げているものがある。例えば、最初期のFACOMなどが挙げられる。一方で信頼性が低下する根拠としては、回路の持つインピーダンスによる電圧降下や電源や周辺回路によるノイズなどによって、本来の電圧が予定外の数値を表す電圧に変化してしまうことによる。
  • かつては、十以外の底を採用しようとした例もあったが、あまりうまく行かなかった。かつて、「三進法を使ったコンピュータは二進法よりも効率がよいのではないか?」と期待する人が一部におり、実験的に開発されたことがあった。「一般に数値を記号で表現するとき、三進法が最も効率がよいとされるが、二進法もそれとほぼ同程度の効率だ」などと考えた人がいたのである。だが、この効率に関する計算は、n状態の表現にはn個の素子が必要という仮定に問題があり、現実的には二進法を1素子の2状態で表現するのが圧倒的に有利である。三進法#経済性の記述も参照[1]

[注釈 6] [注釈 7]

八進と十六進

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八進法十六進法は二進法の3桁と4桁に直接対応するので、コンピュータ関連の数を表現するためなどによく使われている。たとえば、整数値を二進法で 1001001101010001 などと表示しても、ぱっとその値を把握することはできない。なので、八進法や十六進法がよく使われる。

十進の体系では、10種類の数字(0 から 9)を組み合わせて数値を以下のように表す。

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 ...

八進の場合、8種類の数字を使う(0 から 7)。

0 1 2 3 4 5 6 7 10 11 12 13 14 15 16 17 20 21 22 23 24 25 26 ...

すなわち、八進の "10" は十進の "8" に等しく、八進の "20" は十進の "16" に等しい。

十六進では、16種類の数字を使う(0 から 9 の後に一般に A から F までが続く)。

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 1A 1B...

すなわち、十六進の "10" は十進の "16" に等しく、十六進の "20" は十進の "32" に等しい。

底変換

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これらはいずれも位取り記数法だが、十進法の桁の重み付けが10のべき乗であるのに対して、八進法では8のべき乗、十六進法では16のべき乗になっている。十六進や八進による表現から整数値を得るには、十進や二進などの他の記法の場合と全く同様に、各桁の数字にその桁位置の重み付け値をかけ、それらの総和を求めればよい。例えば、

八進 756
= (7 × 82) + (5 × 81) + (6 × 80)
= (7 × 64) + (5 × 8) + (6 × 1)
= 448 + 40 + 6 = 十進 494
十六進 3b2
= (3 × 162) + (11 × 161) + (2 × 160)
= (3 × 256) + (11 × 16) + (2 × 1)
= 768 + 176 + 2 = 十進 946

また、八進法の1桁は二進法の3桁にそのまま対応する。

  000  =  八進 0
  001  =  八進 1
  010  =  八進 2
  011  =  八進 3
  100  =  八進 4
  101  =  八進 5
  110  =  八進 6
  111  =  八進 7

同様に、十六進法の1桁は二進法の4桁にそのまま対応する。

  0000  =  十六進 0       1000  =  十六進 8
  0001  =  十六進 1       1001  =  十六進 9
  0010  =  十六進 2       1010  =  十六進 a
  0011  =  十六進 3       1011  =  十六進 b
  0100  =  十六進 4       1100  =  十六進 c
  0101  =  十六進 5       1101  =  十六進 d
  0110  =  十六進 6       1110  =  十六進 e
  0111  =  十六進 7       1111  =  十六進 f

そのため、二進による表現は、1001001101010001 のように長くても、単に数桁毎に区切って、そのまま書き換えるだけで、八進や十六進による表現に、書き換えできる。

  001 001 001 101 010 001 二進 = 
    1   1   1   5   2   1          111521 八進
  1001 0011 0101 0001 二進 =
     9    3    5    1          9351 十六進

しかし、十進には、これらのような単純な書き換えで変換することはできず、整数値を経由して普通に変換することになる。

符号付数値表現

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符号付きの数値の表現法はいくつか存在する。必ずしも「符号ビット」があるとは限らない。例えば、ゲタ履き表現では、ゲタの値によっては「符号ビット」としては扱えない。符号ビットがある場合は、最上位ビットが符号ビットのことが多い。なお、符号ビットについて「1なら負の数を表し、0なら正の数を表す」といったように考えるのが自然なのは「符号と絶対値」表現の場合だけであり、たとえば「2の補数」表現であれば、最上位ビットは −(2N) の重みを持つ桁である、と解するのが自然である。

符号と絶対値

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「符号と絶対値」表現は、1ビットの符号ビットと、絶対値を表す残りのビット群からなる。例えば、4ビットの場合で、MSBの、0が正、1が負を示すものとすると、

0101 = +5
1101 = −5

となる。浮動小数点数はたいていがこのような形をしている。ただし、絶対値の部分が指数部と仮数部に分かれている。

1の補数

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1の補数とは、数のビット毎の反転が符号を反転させるとする表現である。これはビット単位のNOT演算に他ならない。例えば、

0101 = +5
1010 = −5

1の補数でも符号-仮数部表現でも、ゼロの表現が二種類存在するという問題がある。このため、どちらも最近のコンピュータでは滅多に使われない。1の補数では、

0000 = +0
1111 = −0

符号-仮数では、

0000 = +0
1000 = −0

2の補数

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2の補数は、ビット毎のNOT演算を施した後に1を加算することで得られる。例えば、

0101  =  +5
1011  =  −5

したがって、

  0000  =  十進 0    1000  =  十進 −8
  0001  =  十進 1    1001  =  十進 −7
  0010  =  十進 2    1010  =  十進 −6
  0011  =  十進 3    1011  =  十進 −5
  0100  =  十進 4    1100  =  十進 −4
  0101  =  十進 5    1101  =  十進 −3
  0110  =  十進 6    1110  =  十進 −2
  0111  =  十進 7    1111  =  十進 −1

この方式では整数であれば、16ビットで −32768 から 32767 の範囲、32ビットでは −2147483648 から 2147483647 の範囲を表現する。

2の補数の利点は、加減算かつオーバーフローを考えない範囲に結果が収まるような範囲に限定すれば、符号を気にせず符号無しの整数と同様に扱える点である。

例えば、5 + (−5) は以下のようになる。

  0101
 +1011
 10000

ここで、数値は4ビットで表しているので、演算結果も4ビットでなければならず、したがって先頭の1は捨てられ、結果として期待した通りの0が得られる。

演算において符号を気にする必要がないのは、2n を法とした合同式になっているためである。例えば、15 ≡ −1 (mod 16) である。コンピュータは一般に固定のビット数で数値を表すので、法が一定であり理想的である。2の補数表現と符号なし表現の違いは、大小比較方法と表示方法である。

[注釈 8]

小数の表現

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固定小数点数

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固定小数点数形式は、金銭勘定など浮動小数方式と相性が悪い場合、すなわちビジネスにおける計算(表計算ソフトやCOBOLなど)でよく使われる。「浮動小数点数の精度では十分ではない場合に採用される」というのは誤解である。単精度の場合に足りないようであれば、それは同じ長さの固定小数方式であっても足りてない。

整数部と小数部のビット数は、必要とされる精度や範囲に十分なように選ばれる。例えば、32ビット形式では、整数部に16ビット、小数部に16ビットといったように設定される。

桁位置の重み付けは、整数部と小数部で連続的となる。例えば整数部が、8の位、4の位、2の位、1の位となっている場合、小数部は0.5の位、0.25の位、0.125の位と続く。

例:

                          整数ビット群      小数ビット群
   0.5    =   1/2  =  00000000 00000000.10000000 00000000
   1.25   =   5/4  =  00000000 00000001.01000000 00000000
   7.375  =  21/8  =  00000000 00000111.01100000 00000000

ただし、この形式では二進では表せない数が出てくる。例えば、1/5(十進では 0.2)は正確に表すことはできず、最も近い値は以下のようになる。

  13107/65536  =  00000000 00000000.00110011 00110011  =  0.1999969... 十進の場合
  13108/65536  =  00000000 00000000.00110011 00110100  =  0.2000122... 十進の場合

これは、桁を増やしても正確に表すことはできない。1/3 という数値を考えてみよう。これを十進の小数で表すと 0.333333... となって永遠に続く。これを適当な桁で止めると、その数値表現は 1/3 を正確に表すことはできていない。

つまり、十進で有限小数で表せる数が二進で有限小数になるとは限らない。これを回避する方法として、小数ではなく分子と分母を別々に格納した一種の分数として内部で保持する方式がある。しかし、平方根を求めるなどといった演算はできない。また、分数同士の加減算では通分によって分母が表現できないほど大きな値になる可能性があるため、「有理数型」というデータ型として、分母分子ともに多倍長整数で表すことが普通である。

浮動小数点表現

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絶対値が非常に大きな数や非常に小さな数を扱うには、浮動小数点方式を使う。

浮動小数点数は以下のような指数表記で数値を表現する形式である。

1.1030402E5 = 1.1030402×105

この方式の利点は、仮数の桁数だけでは表せない範囲の値を指数をかけることで表せる点にある。この方式の二進版がコンピュータ向けに定義されている。近年において最も一般的なものとして IEEE 754 があり、一例として以下のような「倍精度」の二進浮動小数点数形式(binary64)を定義している。

  • 1ビットの符号部。符号を与える。
  • 11ビットの指数部。「エクセス1023」形式。エクセス1023とは、指数を符号なしの整数 0 から 2047 で表し、実際の指数の値はそこから 1023 を減算したものとする方式である。
  • 52ビットの仮数部。符号なしで、小数点以下の部分だけを保持し、小数点のすぐ上には常に "1" があるものとみなす(ケチ表現。ただし非正規化数の場合を除く)。

メモリ上では上位ビットから見て符号部、指数部、仮数部の順に並ぶ。

ここで s を符号部、e を指数部、b を指数のバイアス、f を仮数部とするとき、以下の値を表す。

ただし、e = 0のときは非正規化数

となり、e = b * 2 + 1のときは ±∞ や NaN を表す。

binary64で、十進数で精度約15桁の数値を有効数字の以下の範囲の値を表現できる。

最大 最小
正の数 1.797693134862231E+308 4.940656458412465E-324
負の数 -4.940656458412465E-324 -1.797693134862231E+308

これ以外に特別な値として NaN(Not A Number)があるが、ここでは解説しない。

浮動小数点数も整数と同様、表せる値の範囲がある。また、精度も制限されている。binary64は十進で15桁程度の精度である。演算結果の桁数がそれより多い場合、誤差が生じる。例えば、非常に大きな数に非常に小さな数(ゼロに近い数)を加算すると、有効数字の桁の範囲が違いすぎるため元の大きな数が得られる場合がある。なお、拡大解釈して「浮動小数点数を使った演算では常に誤差が生じる」などというのは間違いである。たとえば、1.0 + 1.0 は厳密に 2.0 になる。

また、二進の浮動小数点表現の問題として、人類が多用する十進の小数表現でいわゆる「きりが良い」数との相性が悪い場合の存在がある。すなわち、0.75 のような十進でも二進でも有限小数で表せる数なら何の問題もない。しかし、例えば 0.1 という十進の小数は、二進では 0.000110011... というように無限小数になる。

1980年代頃には、仮数部16ビット、指数部6ビットであるような浮動小数点形式の半導体チップがTRW社からTDC1022Jという名称で発売されていた[2]

プログラミング言語における数値表現

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低水準言語では、符号の有無や固定小数点か浮動小数点かを気にする必要がある。例えば浮動小数点の加算なのか整数の加算なのかによって、使用する命令が全く違ったものとなる。

LISPPythonといった高水準言語では数値のデータ型はより抽象的であり、rationalbignumcomplex などがある。それらの言語では、低水準言語と比べ、より抽象化され扱いやすいものとしてそれらの値が提供される。しかし「どんな数値であっても算術演算を正しく処理することができるはず」というのはただの幻想にすぎない。

コンピュータでは真の実数を扱うことはできないのだから、これらのデータ型でも同様に、それぞれの性質に注意して扱わねばならないことに違いは無い。演算子オーバーロードなどによって、符号無し整数、符号付整数、浮動小数点数、複素数など、複数のデータ型に対して、同じ見た目の式になるような言語もある。

誤差

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特に浮動小数点方式で演算する場合は誤差が生じるということには注意を払う必要があり、数値が表現可能な数値範囲を超えてしまう可能性にも十分に用心する必要がある[3][注釈 9]。分かりやすい出来事を紹介すると、たとえば1991年、アメリカ軍のパトリオットミサイルは時間計算の誤差が原因で誤作動して死者が出てしまったし[3]、欧州宇宙機構のアリアン5型ロケットなどは1996年の打ち上げ時にわずか40秒で爆発し、このロケットのために費やした10年の歳月および70億ドルの開発費および搭載した5億ドル相当の装置が失われてしまった[3]。アリアン5型の爆発の直接の原因は、慣性基準装置(IRS)のソフトウェアが水平方向の速度を表現する64ビット浮動小数点数を16ビット整数に変換したため、16ビット整数の最大値である32768を越えてしまい変換に失敗したことであった[3]

脚注

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注釈

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  1. ^ 台数が圧倒的に多い組み込みシステムでは8ビット64ビットパーソナルコンピュータでは1980年代から1990年代は8ビット〜16ビット、現在は一般的に32ビット〜64ビット程度。128ビットのものは、今のところ、かなり特殊な業務用の高性能のコンピュータに限られる。
  2. ^ 「数学の数」と「コンピュータ内部の数値」は、基本的に別ものであり、多くの場面で異なった性質を示す。デジタルコンピュータのCPU内部に存在する数値はすべて、スイッチが8個から128個程度並んだものにすぎない。コンピュータのCPUは、そもそも基本的に、「数学的な概念」はまったく扱っていない。 たとえば数学では中学・高校レベルでも「有理数」や「無限」などという数学的概念が登場するが、CPU内部のレジスタや演算器では「有理数」や「無限」などの概念も扱えず、扱わない。「代数的数」という概念も同様で、CPU内部では全く扱われていない。たとえば、純粋な数学ではある自然数 n に「1を足す」ということは無限に繰り返すことができるが、8ビットコンピュータの内部では8ビットの0000000〜1111111は十進数の「0〜255」あるいは「-128〜0〜127」として扱われており、CPUで「0〜255」として扱っている場合、演算器で00000001に1を足すと00000010でこれは十進の2に相当し数学的にも正しいが、11111111(十進の255)に「1を足す」と、00000000となってしまい、演算結果は「0(ゼロ)」となる(あるいは演算器がオーバーフローのフラグを立てる)。「255に1を足すとゼロになる」という性質は、「数学における数」とは全く異なる性質である。数学の世界では、何か特殊な宣言をしていないのに、勝手に「自然数が255で終わってしまい、255の次はゼロになる」などということはありえない。だが純粋数学の数学者から見れば「ありえない」ことが起きるのがコンピュータの数値の世界である。そして数学者の視点から見れば、「とてつもなく杜撰」と思えるような、とんでもない誤差も生じるのが、コンピュータ内部の数値の世界である。
  3. ^ 一例だがもっというと、数学的には、単に、8ビットならmod256(整数の合同を参照、剰余類環#計算機に簡単に述べられている)だ、というだけである。合同算術の歴史はコンピュータよりも数学のほうが古く、コンピュータ科学者や技術者はそういったごく当たり前の数学をおおいに勉強し、参照し、活用しているものである。当然ながらコンピュータの誤差論も、数学のそれを大いに参照して成り立っている。
  4. ^ しばしばOff / Onともされるが、電気的に電流の接続が断たれる Off 状態は、電子的には電圧不定の状態であり特に集積回路では不安定な動作を起こす。そのため、Off ではなく、0V に接続した Low 状態を使う。なお内部的には Off 状態に相当する Hi-Z 状態(デジタル回路#ハイ・インピーダンス)も使われているが、ここでは扱わない。
  5. ^ 電子回路では正負を交互に使うと便利なこともある。
  6. ^ 一時期は十進法のコンピュータが作られた時期もあったが、最終的に二進法が圧倒的に選ばれることになったことで、結果として、コンピュータはブール論理と相性が良くなった。二進法の2値とブール論理体系における2状態はハードウェアレベルで直接的に対応させることができ、CPUの演算装置でブール論理演算を高速に演算できるということになり、この論理演算はコンピュータ内部の様々なレベル(機械語、高級プログラミング言語、システムソフトウェア、OS、アプリケーションソフトなどさまざまなレベル)でさまざまに活用されている。なお、ブール論理はあまりにも単純な論理であり、それだけで知的で柔軟な反応をするコンピュータを構築することは困難だったので、いろいろと模索する中で、ソフトウェアレベルでファジー論理も開発された。
  7. ^ 他にも、一部の研究者によるマイナーな研究にすぎず実用的なコンピュータは開発できていないが、DNAコンピューティングでは、DNAの分子を使いアデニン (A) 、チミン (T)、グアニン (G) 、シトシン (C)の4値(A、T、G、C)で作動するコンピュータを作ることを夢見て研究している人もいる。また目的によっては、以上のような方法とは異なる表現法が便利なこともあり、例えば、グレイコードなどもある。
  8. ^ 2の補数表現の唯一の奇妙な点として、表現可能な最も小さい数(16ビットなら −32768)の2の補数をとると自分自身になる点が上げられる。しかし、それが問題となることは滅多に無い。むしろ、符号無しの場合にオーバーフローになる演算が、2の補数表現ではごくあたりまえの、0をまたいだ計算(正確には、負の整数と非負整数にまたがった計算)であることのほうが、慣れるまでは非直感的かもしれない。
  9. ^ これを指摘している出典の著者は、世界的に有名なプログラミング言語Rubyの開発者の「まつもとゆきひろ」氏。筑波大学第三学群情報学類卒業。1993年にオブジェクト指向スクリプト言語Rubyの開発に着手し1995年に公開。その後、ネットワーク応用通信研究所のフェロー、楽天技術研究所のフェロー

出典

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  1. ^ Brian Hayes, "Third Base", American Scientist 89(6): 490-494 (2001), doi:10.1511/2001.6.490
  2. ^ 『ASCII 1983年7月号』 7巻、7号、株式会社アスキー出版、1983年7月1日、94頁。 
  3. ^ a b c d まつもとゆきひろ著『まつもとゆきひろ コードの世界』日経BP、2009年。p.241

関連項目

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外部リンク

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