コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

コーヒー嗅ぎ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『コーヒー嗅ぎ』、1892年出版。中央にいる女性がコーヒーポットを机の下に隠している。

コーヒー嗅ぎ(コーヒーかぎ、ドイツ語: KaffeeriecherまたはKaffeeschnüffler)は、密輸コーヒーが焙煎、消費されるところを匂いで見つけ出す仕事。プロイセン王フリードリヒ2世は富の流出を防ぐため、および国内で生産されるビールチコリーといったコーヒーの代替品の消費を促進するため、コーヒーに対し税率の高い奢侈税を徴収しており、その実施の一環として1781年から1787年まで傷病兵約400名がコーヒー嗅ぎに雇用された。コーヒー嗅ぎは住民に嫌われたが、賃金が高く、密輸者を捕まえると罰金から奨励金が支払われた。

プロイセン以外ではヘッセン=カッセル方伯領の方伯フリードリヒ2世が1766年にコーヒーを禁止した後、1774年に規制を強化して、その施行のためにコーヒー嗅ぎを雇用した。

プロイセン

[編集]

プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム1世(在位:1713年 – 1740年)はコーヒースパークリングワイン、フルーツアイスクリーム贅沢品英語版に指定した[1][2][3]。これによりコーヒーを出すことが特別とみなされたため、かえってコーヒーが流行する結果をもたらし、18世紀半ばにはプロイセン人のほとんどが日常的にコーヒーを飲んだ[1]

七年戦争(1756年 – 1763年)によりプロイセンの国庫がほとんど空になると、国王フリードリヒ2世(在位:1740年 – 1786年)はコーヒーの奢侈税を価格の150%に上げた。その結果、コーヒーの価格が大幅に上昇し、紡ぎ女が1日働いてようやく1杯飲める程度になった[1][4][5]。フリードリヒ2世は徴税の理由について、 コーヒーより体にいいビールを飲むべきだと主張したほか、ビールの消費が国内の醸造所を支えることになり、一方でコーヒーの消費により富がプロイセンから離れると説明した[6][7]。フリードリヒ2世は最初コーヒーを禁止して、国民に国内で生産されるチコリーに移行させようとしたが[7]、このような禁令が無益であると判断し、1781年にコーヒー焙煎の専売制を実施した[7]。すなわち、フリードリヒ2世は勅令を出し、国有の焙煎工場でのみコーヒー焙煎が許可されるとした[1][5]。ただし、禁令には例外があり、貴族、指揮官を務める兵士、聖職者、実業家などに適用されなかった[1]

庶民の一部は小麦とうもろこし、チコリー、ドライイチジクから作られたコーヒーの代替品に移行したが[7]、多くはコーヒー豆密輸を選んだ。これは焙煎前のコーヒー豆を密輸しても露見することがほとんどないためである[1]。中には普段の仕事を辞めて密輸に専念する労働者までおり[1]、フリードリヒ2世はコーヒーの焙煎、消費を捜査するために、七年戦争の傷病兵400名をコーヒー嗅ぎとして雇用することにした[7]。違法コーヒーを所有していることが露見した国民には多額の罰金が課された。コーヒー嗅ぎは軍服を着て、所持品検査や家宅捜索を行なった[1]。コーヒー嗅ぎは国民から嫌われたが、給料が高いうえ、密輸者を捕まえるとさらに奨励金が与えられた(罰金の4分の1がコーヒー嗅ぎに支払われた)[1][8]。コーヒー嗅ぎへの怒りは19世紀初まで続いたという[9]

フリードリヒ2世の死後、専売制が1787年に廃止され、コーヒー嗅ぎも解雇された[5]

ヘッセン=カッセル

[編集]

コーヒー嗅ぎはプロイセンの職業として知られることがほとんどであるが、同時代の文献によれば、ヘッセン=カッセル方伯フリードリヒ2世は1766年にヘッセン=カッセル方伯領内でコーヒーを禁止した[6]。住民が禁令を無視してコーヒーを飲んだため、フリードリヒ2世は1774年に規制を強化し、官僚を各地に派遣して、コーヒーが焙煎され、出されるところをおさえるべく家宅捜索をした[6]

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f g h i Vieser, Michaela; Schautz, Irmela (30 August 2009). "Der Kaffeeriecher". Der Tagesspiegel. 2015年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年3月31日閲覧
  2. ^ Vieser, Michaela; Schautz, Irmela (2010). Von Kaffeeriechern, Abtrittanbietern und Fischbeinreißern Berufe aus vergangenen Zeiten (ドイツ語). C. Bertelsmann. ISBN 978-3-641-04083-3. OCLC 984942817
  3. ^ Sahm, Reiner (2018). "Von kaffeesteuer bis kriegssteuer" [コーヒー税から戦争税へ]. Von der Aufruhrsteuer bis zum Zehnten (ドイツ語). Wiesbaden: Springer Fachmedien. pp. 47–60. ISBN 978-3-658-19007-1
  4. ^ Scherrer, Pascal (25 January 2017). "6 Berufe, die den Wandel der Zeit nicht überlebt haben". Watson (ドイツ語). 2021年3月31日閲覧
  5. ^ a b c von Wedemeyer, Juliane (1 May 2020). "Vergessene Professionen: Diese Jobs gibt es nicht mehr". Süddeutsche Zeitung (ドイツ語). 2021年3月31日閲覧
  6. ^ a b c Kröner, Adolf, ed. (1892). "Die Kaffeeriecher" . Die Gartenlaube (ドイツ語). 8: 259–260. ウィキソースより。
  7. ^ a b c d e Luttinger, Nina; Dicum, Gregory (1 May 2012). The Coffee Book: Anatomy of an Industry from Crop to the Last Drop (英語). New Press, The. pp. 43–44. ISBN 978-1-59558-724-4
  8. ^ Weinberg, Bennett Alan; Bealer, Bonnie K. (23 November 2004). The World of Caffeine: The Science and Culture of the World's Most Popular Drug (英語). Routledge. pp. 133–137. ISBN 978-1-135-95817-6
  9. ^ Eberty, Felix (1870). Geschichte des Preussischen Staats: 1763–1806 (ドイツ語). E. Trewendt. pp. 35–36.