コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

サラサキサゴ亜科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サラサキサゴ亜科
生息年代: Carnian–現世
[1]
Umbonium moniliferum 01
イボキサゴ。臍がふさがれる種。
分類
: 動物Animalia
: 軟体動物Mollusca
: 腹足綱 Gastropoda
: 原始腹足目 Archaeogastropoda
上科 : ニシキウズガイ上科 Trochoidea
: ニシキウズガイ科 Trochidae
亜科 : サラサキサゴ亜科[2] Umboniinae[3]
学名
Umboniinae H. Adams & A. Adams, 1854

キサゴ亜科 Umboniinae[注釈 1]は、ニシキウズガイ科 Trochidaeに属し、サラサキサゴ属 Umboniumなど古腹足類巻貝の属を含む亜科である[2][3]

形態

[編集]

貝殻は、日本産のキサゴ類など低平で殻高に比べて殻幅が大きい属があるほか、オーストラリア産のチグサガイモドキのように殻高が殻幅の2倍以上あって縦長の貝殻をもつ種も含まれる。キサゴ類は貝殻底面の臍孔が滑層でふさがれるが、臍が開いた貝殻をもつ属の方が多い。またキサゴモドキ属のように、臍が部分的にふさがれる属もある。軟体は頭部にある一対の長い触角のほか、腹足の左右に多数の上足突起をもつ[6]。また鰓や鰓下腺も左右に一対あり、腹足類の進化のなかで原始的な形態をもつ[7][8]。キサゴ類は海水を取り込むための頸葉(neck lobe)が発達している[9]歯舌は扇舌型だが、貝殻の外観が似たヒカリシタダミ科とは歯舌の形態が異なる[4][5]。蓋は同心円状の渦巻きで角質。

生態

[編集]

潮間帯下の砂底の浅海に生息する種が多く、海水をろ過して食餌する。他の古腹足類と同様に、雌雄の別はあるが交尾はせず、放卵・放精する。幼生の浮遊期間は長くない。

分布

[編集]

主にインド-西太平洋に生息する。各種の生息域は比較的限られている[10]

系統発生

[編集]

サラサキサゴ亜科に近縁の種族の分岐図の一部の一例を下に示す。白亜紀に他の亜科から分化したと推定されている[11]。分布域のうちインド-西太平洋に分布するものはIWPと略記した。

ニシキウズガイ科

イシダタミ亜科 Monodontinae IWP, 西アフリカなど

ニシキウズガイ亜科 Trochinae IWP, 地中海、北米東岸など

サラサキサゴ亜科 Umboniinae IWPなど

チグサガイ亜科 Cantharidinae IWPなど

ヒメアワビ亜科 Stomatellinae IWP

Trochidae

Solariellidae ヒカリシタダミ科 Minolia含む、世界中の海。

Turbinidae リュウテンサザエ科 世界中の比較的温暖な海


下位分類

[編集]

主な属および種と産地の例を以下に記した[3]。例示した各属の貝の和名は主に奥谷 & 竹之内 (2004, p. 52-53)によった。

貝殻の外観 各属と種の一例・分布の例
Umboniinae サラサキサゴ亜科
Umbonium

Umbonium vestiarium (Linnaeus, 1758)
サラサキサゴ
図は紅海産、殻幅2cm[12]
潮間帯下の砂底に生息。

写真はweb参照[13] Antisolarium egenum (A. Gould, 1849)
ニュージーランド産、殻幅6mm.
Bankivia fasciata (Menke, 1830)
チグサガイモドキ[14]
オーストラリア西岸・南岸の海藻上に多産。殻高2cm.
図は”Bankivia varians”。
写真はweb参照[15] Camitia rotellina (A. Gould, 1849)
ハナキサゴ[16]
ニューギニア島から九州、殻幅10mm.
Conotalopia Iredale, 1929

図はConotalopia henniana, オーストラリア
日本産はアワジチグサ。潮間帯の岩礁や海藻上に生息し、臍が開く。
殻幅5mm以下[2]

Ethalia[17] インド-西太平洋
図はEthalia guamensis, ベトナム産。
キサゴモドキ。殻幅2cm. 臍索によって臍孔は狭められる[4][18]
Ethaliella オーストラリア北部から日本
図は Ethminolia nektonica (Okutani, 1961)
ハナゴショグルマ。殻口はやや下向きで臍が開く。
図は奥谷 (1961)参照。 Ethminolia
Ethminolia nektonica (Okutani, 1961)オヨギシタダミ[注釈 2]
殻幅8mm以下。活発に動き、泳ぐ[6]
Isanda
図はIsanda coronata (Deshayes, 1830)
オーストラリア北西部、殻幅4mm.
図はweb参照[19] Lirularia
アコヤシタダミ Lirularia iridescens
北米西岸、日本韓国、潮下帯の藻類上。
Monilea belcheri (R. A. Philippi, 1850)
ヘソワゴマ。マーシャル諸島からフィリピン日本。殻幅1.5cm.
図はweb参照[20] Monilea smithi (Dunker, 1882)
ノボリガイ。日本、潮下帯の砂底。殻幅約2cm以下。
Parminolia apicina(A. Gould, 1861)
マーシャル諸島からオーストラリア北東沖。
Pseudominolia D. G. Hervert, 1992
写真はヘソワゴマモドキ Pseudominolia tramieri
フィリピンから小笠原諸島、殻径9mm以下。
Rossiteria Jousseaume, 1887
図はRossiteria nucleolus, オーストラリアなど。
Sericominolia Kuroda & Habe, 1954
図はSericominolia stearnsii キヌシタダミ
オーストラリアから日本[21][22]
図はweb参照[23] Talopena vernicosa ハブタエシタダミ
=Monilea vernicosa
軸唇の滑層が臍孔を少し狭める。
Vanitrochus
図はVanitrochus geertsi
フィリピン、殻幅2-3mm.
Zethalia zelandica
ニュージーランド、臍が閉じる。
中新世以後。
図はweb参照[24] Protorotella depressaMakiyama, 1925
瑞浪層群など、中新世以後。
図はweb参照[25] Suchium suchience[注釈 3] Yokoyama, 1923
=Umbonium (Suchium) suchience
スウチキサゴ。掛川層群など、鮮新世以後。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ サラサキサゴ亜科はキサゴ亜科と呼ばれることもある[4][5]
  2. ^ 原記載のSolariella nektonicaは、歯舌の観察結果より、当時のコシダカシタダミ亜科Solariellinaeからキサゴ亜科のEthminolia属へ修正された[5]
  3. ^ ”Suchi”は化石産地の静岡県周智郡に由来する。

出典

[編集]
  1. ^ Umboniinae”. mindat.org. 2024年2月4日閲覧。
  2. ^ a b c 竹之内 2004, p. 52.
  3. ^ a b c Umboniinae”. WoRMS, David Herbert. 2024年2月4日閲覧。
  4. ^ a b c 大山 1955.
  5. ^ a b c 土田 & 北尾 1987.
  6. ^ a b 奥谷 1961.
  7. ^ 奥谷・竹之内 2004, p. 12.
  8. ^ 貝類学 2010, p. 183,184.
  9. ^ 貝類学 2010, p. 184-186,229.
  10. ^ Umbonium vestiarium”. gbif. 2024年2月5日閲覧。
  11. ^ Williams, Karube & Ozawa 2008, p. 498.
  12. ^ Umboniinae”. iNaturalistUK. 2024年2月4日閲覧。
  13. ^ Antisolarium-egenum”. marinespecies.org. 2024年2月5日閲覧。
  14. ^ アボット 1985, p. 45.
  15. ^ ハナキサゴ”. 美貝. 2024年2月6日閲覧。
  16. ^ 竹之内 2004, p. 53.
  17. ^ Herbert 1992.
  18. ^ 竹之内 2004, p. 52-53.
  19. ^ アコヤシタダミ”. 美貝. 2024年2月4日閲覧。
  20. ^ ノボリガイ”. 美貝. 2024年2月6日閲覧。
  21. ^ キヌシタダミ”. ura-taicho. 2024年2月4日閲覧。
  22. ^ Trochid”. underwaterkwj. 2024年2月4日閲覧。
  23. ^ ハブタエシタダミ”. 美貝. 2024年2月4日閲覧。
  24. ^ 瑞浪層群の巻貝 プロトロテラ デプレッサの化石”. Ameblo_kulif. 2024年2月5日閲覧。
  25. ^ 大日層 スウチキサゴの化石”. Ameblo_kulif. 2024年2月5日閲覧。

参考文献

[編集]
  • R.T.アボット、S.P.ダンス『世界海産貝類大図鑑』波部忠重、奥谷喬司 監修・訳、平凡社、1985年3月。ISBN 4582518117NCID BN00814197NDLJP:12602136 
  • David Herbert (1992). “Revision of the Umboniinae in southern Africa and Mozambique (Mollusca: Prosobranchia: Trochidae)”. Annals of the Natal Museum (Natal Museum) 33 (2): 379-459. 
  • Suzanne T. Williams (2008). “Molecular systematics of Vetigastropoda: Trochidae, Turbinidae and Trochoidea redefined”. Zoologica Scripta 37: 483-506. doi:10.1111/j.1463-6409.2008.00341.x. 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]