シカマイア
シカマイア | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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S. ozakiiの化石、国立科学博物館蔵
S. akasakaensisの模式図
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保全状況評価 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
絶滅(化石) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
古生代ペルム紀前期–中期 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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タイプ種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
S. akasakaensis | |||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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シカマイア(Shikamaia)は古生代ペルム紀に生息していた大型の二枚貝の属[1][2]。全長約1メートルに達し、光合成細菌もしくは化学合成細菌からエネルギーを得ていたと推測される[3]。
歴史
[編集]「日本の古生物学発祥の地」「化石研究のメッカ」とも言われる[4]岐阜県の金生山で初めて発見された[5]。名前は古生物学者の鹿間時夫博士にちなむ[6]。その形態と化石の保存状態から、記載当時の分類は不明であったが[2][7]、後に大型の二枚貝とされ、アラトコンカ科という絶滅した科に含まれるようになった[1]。
生息年代と生息域
[編集]日本ではペルム紀前期クングーリアンからペルム紀中期キャピタニアンの範囲で生息しており[3]、日本のほかはマレーシアからも化石が知られる。もしAlatoconcha属が本属に含まれるならば生息域はアフガニスタンにまで広がる[8]。アラトコンカ科自体の生息年代はペルム紀前期アーティンスキアンからペルム紀中期キャピタニアンの範囲にあり、クロアチア、チュニジア、オマーン、イラン、タイ、フィリピン、中国南部やアラスカまで、世界的に浅い海に分布していた[9][7]。
形態
[編集]著しく圧縮された笹の葉状の殻の形態が特徴的で[3]、S. akasakaensisの場合全長は1メートルに達し[1]、全長1.6メートル近くと推測された場合もある[10]。これは全長3メートルと推測される白亜紀のPlatyceramusや幅2メートルほどになった厚歯二枚貝類のTitanosarcolitesに劣るものの、依然として古生代では最大級の二枚貝である[11]。殻の腹側にはレンズ状の隙間があり、ここから軟体部を出し入れすることが可能であったとみられている[3]。
分類
[編集]Shikamaia属はウグイスガイ目アラトコンカ科に含まれる[1]。同科には他にAlatoconcha、Dereconcha、Saikraconcha属を含み、そのうちAlatoconcha属はShikamaia属の亜属とする説もある。また、Tanchintongia属についてはShikamaia属の亜属もしくはシノニムとされる[1][2]。
古生態学
[編集]シカマイアが生息したとされる水深が有光層の範囲にあることから、形態が類似するリュウキュウアオイ(Corculum cardissa)と同じように体内に光合成細菌を共生させ、エネルギーを得ていたと推測されていたが[1][7]、殻は不透明であり、光を通すことはできなかったとされる。化石が知られる石灰岩が黒色石灰岩であることから、生息域は硫化水素に富んでいたと考えられ、殻の隙間から硫化水素を取り込み、硫黄酸化細菌からエネルギーを得ていたのではないかという説が出されている[1][3]。S. akasakaensisが知られる金生山の赤坂石灰岩からは、他にも大型のEuconospira属の未命名種、殻長18cmにも及ぶBellerophon jonesianus、殻幅25cmに達するNipponomaria yokoyamai、殻長40cmに達するAkasakiella yabeiのような複数の大型の腹足類、殻幅24cmに達する二枚貝Alula elegantissima、殻の直径25cmに達するオウムガイに近縁の頭足類Coelogasteroceras giganteum、殻長30cmに達する史上最大種Prodentalium onoiを含む複数のツノガイ、茎の直径8cmに達する巨大なウミユリなど動物相が知られ、特に底生動物が大型化していることが特徴的である。このことから金生山のあった地域の古環境は富栄養であり、シカマイアが光合成や化学合成に頼らずとも大きなサイズを維持できたという可能性も否定できない[1][12]。
また、S. akasakaensisにおいてはいくつかの成長段階が知られており、成長に従って殻の後部および軟体部の収納域が伸長していった[1]。
絶滅
[編集]シカマイア含むアラトコンカ科は、ペルム紀中期キャピタニアンの絶滅イベントによって絶滅したと推測されている。Kamura eventと呼ばれる事変により、一時的に海水温が低下し、共生していた微生物が死滅したことにより絶滅したとされるが[9][3]、Kamura eventの発生自体を疑問視し、むしろ海水温の急激な変動や、海洋酸性化および低酸素化が絶滅の原因だったのではないかという説も出されている[7]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h i Asato, Kaito; Kase, Tomoki; Ono, Teruo; Sashida, Katsuo; Agematsu, Sachiko (2017-10). “Morphology, Systematics and Paleoecology of Shikamaia, Aberrant Permian Bivalves (Alatoconchidae: Ambonychioidea) from Japan”. Paleontological Research 21 (4): 358–379. doi:10.2517/2017PR002. ISSN 1342-8144 .
- ^ a b c Yancey, Thomas E.; Boyd, Donald W. (1983). “Revision of the Alatoconchidae: a remarkable family of Permian bivalves”. Palaeontology 26: 497–520. ISSN 0031-0239 .
- ^ a b c d e f 開士, 安里、Kaito, Asato「Evolution of Shikamaia, Giant Permian Bivalves (Alatoconchidae: Ambonychioidea) from Japan」。
- ^ 化石館だより 1月号 No.21 日本古生物学発祥の地 金生山 (PDF, 389.1 KB) - 金生山化石館
- ^ “金生山化石館 前期企画展「謎の巨大化石シカマイア」 | 大垣市”. web.archive.org. 2016年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月25日閲覧。
- ^ “シカマイア”. 国立科学博物館. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月25日閲覧。
- ^ a b c d Chen, Fayao; Xue, Wuqiang; Yan, Jiaxin; Meng, Qi (2021-12). “The implications of the giant bivalve family Alatoconchidae for the end‐Guadalupian (Middle Permian) extinction event” (英語). Geological Journal 56 (12): 6073–6087. doi:10.1002/gj.4151. ISSN 0072-1050 .
- ^ “Fossilworks: Shikamaia”. www.fossilworks.org. 2022年10月25日閲覧。
- ^ a b Isozaki, Yukio; Aljinović, Dunja (2009-12-20). “End-Guadalupian extinction of the Permian gigantic bivalve Alatoconchidae: End of gigantism in tropical seas by cooling” (英語). Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 284 (1): 11–21. doi:10.1016/j.palaeo.2009.08.022. ISSN 0031-0182 .
- ^ 化石館だより 5月号 No.25 金生山の大きな貝化石 (PDF, 355.8 KB) - 金生山化石館
- ^ Vermeij, Geerat J. (2016-01-15). “Gigantism and Its Implications for the History of Life”. PLoS ONE 11 (1): e0146092. doi:10.1371/journal.pone.0146092. ISSN 1932-6203. PMC 4714876. PMID 26771527 .
- ^ Asato, Kaito; Kase, Tomoki (2021-07). “Gigantic scaphopods (Mollusca) from the Permian Akasaka Limestone, central Japan” (英語). Journal of Paleontology 95 (4): 748–762. doi:10.1017/jpa.2021.3. ISSN 0022-3360 .
外部リンク
[編集]- シカマイアの復元模型 - 岐阜県博物館
- 金生山化石館 - 公益財団法人大垣市文化事業団