イングランドの行政区画
イングランドの行政区画(イングランドのぎょうせいくかく)は、地方行政目的で四階層に分割されている。同一レベルの行政体であっても、行政体のタイプによって根拠法が異なる階層もある。
リージョンレベル
[編集]イングランドは、行政区分の最上位階層では9リージョンに分割されており、各リージョンは一つ以上のカウンティレベルの行政体を含んでいる。リージョンは1994年に創設され、1999年の欧州議会選挙以降はイングランドの欧州議会選挙区ともなっていた。全てのリージョンは同格だが、ロンドンだけは公選の市長ならびに大ロンドン庁という形で実質的な地方分権が行われたリージョンである。リージョンの規模は面積においても人口においても様々である。
設立 | 数 | 構成 |
---|---|---|
1994 | 9 | イースト、イースト・ミッドランズ、ロンドン、ノース・イースト、ノース・ウェスト、サウス・イースト、サウス・ウェスト、ウェスト・ミッドランズ、ヨークシャー・アンド・ザ・ハンバー |
カウンティレベル
[編集]イングランドは1997年の地方長官法 (Lieutenancies Act 1997) により、伝統的にカウンティでの王室代理人である地方長官 (Lord Lieutenant) の任官地に分割されている。実際にそう定義されているわけではないが、この区分は典礼カウンティ (ceremonial county) として知られている。このカウンティはイングランドでの住所としてしばしば用いられる。しかし、ほとんどは大きすぎたり、大規模な市街地を含むといった理由から行政区画としては使われてはいない。しかし、たとえば議会選挙区の境界決定の際には参照されるといった使われかたもある。
地方行政区画としては、イングランドは4種類のカウンティレベルの地方行政区画に分割されている。
都市カウンティ
[編集]ロンドン以外で外側に広い市街地を地域に擁のする6都市カウンティがあり、それぞれが大都市バラに分割されている。これら都市カウンティは1974年に創設されたが、そのカウンティカウンシルは1986年に廃止された。
設立 | 数 | 構成 |
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1974 | 6 | グレーター・マンチェスター、マージーサイド、サウス・ヨークシャー、タインアンドウィア、ウェスト・ミッドランズ、ウェスト・ヨークシャー |
シャイアカウンティ
[編集]シャイアカウンティ (shire county) も1974年に創設された。法律上は非都市カウンティ (non-metropolitan county) と呼ばれる。非都市ディストリクト (non-metropolitan district) に分割され国土の広い面積をカバーするが、主として郊外に位置する。
単一自治体
[編集]単一自治体は、1990年代に創設されたカウンティとディストリクトの機能を併せ持つ一層行政体で、ディストリクトを一つだけ有するカウンティか、またはバークシャーの様にカウンティ議会を持たないディストリクトである。ただしワイト島は例外で、ディストリクトを持たないカウンティである。
グレーターロンドン
[編集]グレーターロンドンは1965年に創設され、都市カウンティの一つとして扱われることもあるが、定義上はそうではない。シティ・オブ・ロンドンとロンドン・バラ(London borough、特別区とも訳される)に分かれている。
ディストリクトレベル
[編集]イングランドのディストリクトは行政上の地位としてバラ (borough)、都市 (シティ)、ロイヤル・バラ (royal borough) のいずれかの地位を持ち得る。
都市ディストリクト
[編集]都市カウンティは、通常バラと呼ばれる都市ディストリクトに区分されていた。カウンティカウンシルが廃止された際にその権限の多くは都市ディストリクトに移行し、その結果他の単一自治体と似たような機能を持つことになった。
非都市ディストリクト
[編集]シャイアカウンティは非都市ディストリクトに区分されている。カウンティカウンシルとは権限を分担しているが、その区分は都市カウンティ創設時とは異なっている。
パリッシュレベル
[編集]シヴィルパリッシュ(行政教区)はイングランド行政の最もローカルな単位である。グレーターロンドンを創設した法の元では、パリッシュをグレーターロンドンの内部に設置することは許されない。それ以外のイングランド全域にパリッシュがあるわけではないが、パリッシュの数と全パリッシュがカバーする総面積は増大している。
例外
[編集]以下はイングランドの一般的な地方行政機構に対する例外であり、法律では上記の地方行政機構とは別に特定の地方行政機構に機能を持たせる場合として列挙されている。
ロンドン・バラ
[編集]グレーター・ロンドンでは32のロンドン・バラ・カウンシルが単一自治体と似た地位を占めているが、上位の戦略的層としてグレーター・ロンドン・オーソリティーがあり、交通、警察、消防、経済支援といった点ではカウンティの有する機能を監督している。
シティ・オブ・ロンドン
[編集]シティ・オブ・ロンドンは、周囲にあるロンドン・バラが有する一般的機能に加え、地域外の場所(ハムステッド・ヒースやキルバーン (Kilburn) にあるクイーンズパーク保養地など)を有することや、ヒースロー空港での獣医サービス、アスベスト廃棄といったサービスなど、シティ・オブ・ロンドンならではの特徴で他の地域行政体と比べると際立っている。
法曹学院
[編集]法曹学院のインナー・テンプルおよびミドル・テンプルは小さな自由区 (リバティ) であり、シティ・オブ・ロンドン内にあって独自の行政体として機能している。
シリー諸島
[編集]シリー諸島は独特な地域行政体として、イングランドの他地域に見られる単一自治体に類似したシリー諸島カウンシルを有している。
参考文献
[編集]- ウィリアム・ハンプトン著 / 君村昌監訳『地方自治と都市政治』敬文堂、1996年(原書1991年) p.382 ISBN 4767000165
- 下條美智彦著『イギリスの行政』早稲田大学出版部、1995年 p.246 ISBN 4657959360
- 高寄昇三著『現代イギリスの地方自治』勁草書房、1996年 p.204 ISBN 4326301058
- 山田光矢著『パリッシュ―イングランドの地域自治組織(準自治体)の歴史と実態』北樹出版、2004年 p.172 ISBN 4893849425
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 英国の地方自治(財団法人自治体国際化協会 2003/1/31)
- 英国の地方政府改革の系譜(財団法人自治体国際化協会 2006/1/31)
- イギリスにおける地方自治関係法令のあらましについて(財団法人自治体国際化協会 2007/3/30)
- イギリスの地方自治法体系に関する予備調査(財団法人自治体国際化協会 2006/3/31)
- Council review may mean end of counties (The Guardian, 29 December 2005)