シーカ (刀剣)
シーカ(ラテン語: Sica)は、トラキア人[1]、イリュリア人が使用したことで知られる[2]、古代ローマの短刀[1]。
語源
[編集]古代ギリシャ・ローマ事典(Dictionnaire des Antiquités Grecques et Romaines)では語源をインド・ヨーロッパ祖語のSek-(分割、切断等を意味する接頭辞)と推定しているが[1]、オランダの言語学者ミヒル・デ・ファンはSekが接頭辞として扱われることはないとしている[3]。また、アルバニア祖語のtsikā(ナイフを意味するアルバニア語thikëの語源)、イリュリア語経由でインド・ヨーロッパ祖語のḱey-(鋭利にする)の可能性も指摘されている[4][5]。
形状
[編集]形状から3つの形式に分類可能である。
第一の形式は特徴がはっきりしており、短く鋭い切っ先に続く刀身の中央部直前で屈曲、僅かに反りの入った刀身が短い中子に続いている。通常中子は三角形であり、刀身にほど近い位置に目釘による固定用の穴が開けられている。刀身には刀身彫りが施され、樋は深く彫られている。一般的に共通してみられる特徴は、大きさと形状である[6]。
第二の形式は、形態的には大きく変わるものではなく、第一のそれほど特徴がはっきりしていないが、より刀身が長く、樋もまたそれに沿っており、ほとんどの場合中子は短い三角形状である[6]。
第三の形式は、数多く製造されたもので、多数集めて特徴づけたところ、長い刀身、大抵は簡素な作りで、装飾は円または線もしくはその双方であり、樋を備え、さらに円筒状の鍔と、柄と同サイズの中子を有している。これらの特徴は、全てを備えているものも、一つないし複数の特徴を備えているものもある。標準化された形跡があり、長さ30から40cm、幅約3cmとなっている。時系列的には、紀元前2世紀から紀元前1世紀にかけてのものである[6]。
古代ローマ
[編集]古代ローマでは、暗殺者を指す語としてシカリウス(Sicarius)が存在した[1]。また、第三次奴隷戦争で縮小されるまで、トラキア風の剣闘士トライクスも存在していた[1]。
短い曲刀は、地中海沿岸の多くの民族で用いられたが、ローマ人はイリュリア人の暗殺者(Sicarius)が用いる武器と見なしていた。(John Wilkes)[7]
出典
[編集]- ^ a b c d e Dictionnaire des Antiquités grecques et romaines. 4. pp. 1300-1301
- ^ John Wilkes (1996). 'The Illyrians (The Peoples of Europe). ジョン・ワイリー・アンド・サンズ. p. 238. ISBN 9780631198079 "Their principal offensive weapon was the single edged curved-sword, similar to the Greek machaira, a form of weapon that can be traced back to Bronze age times..."
- ^ Michiel de Vaan (2008-06-25). Etymological Dictionary of Latin and the other Italic Languages. ライデン及びボストン: Brill. pp. 561-562. ISBN 9789004167971
- ^ Orel, Vladimir (1998). Albanian etymological dictionary. Brill. pp. 477-478. ISBN 9004110240
- ^ Havers, Wilhelm (1984). Die Sprache. A. Sexl.. p. 84
- ^ a b c Borangic C. - Sica. Tipologie Si Functional It Ate, NEMVS, IV, 7-8, 2009
- ^ John Wilkes (1996). 'The Illyrians (The Peoples of Europe). ジョン・ワイリー・アンド・サンズ. pp. 238-239. ISBN 9780631198079 "Although a short curved sword was used by several peoples around the Mediterranean the Romans regarded the sica as a distinct Illyrian weapon used by the stealthy 'assassin' (sicarius)..."